反戦のための武装組織

「中学卒業後、全寮制の旧制水戸高校に入りましたら、寮には左翼思想を持つ人が多く、次第にそうした思想に感化されていきました。
東大に入学後は青年共産同盟に入り、学費の値上げ反対や寮の改善を求めてデモや集会に参加していました。
その頃には朝鮮戦争が始まり、国内では血のメーデー事件や立川基地反対闘争がおきていて、私は特に朝鮮戦争に刺激を受け、反戦のため実力行使ができる陰の武装組織の結成を考えるようになり資金や武器の調達をしていました」

中村泰元受刑者に射殺された武蔵野署の山川治男巡査
中村泰元受刑者に射殺された武蔵野署の山川治男巡査

「そうした中で武蔵野署の若い警察官を射殺する事件をおこしてしまったのです。
服役中に私はキューバ革命軍や、チェ・ゲバラには感化されました。「ゲバラ日記」は服役中に読み原文でも読みたくなってスペイン語を勉強したほどです。
私はゲバラの生き様にとても感動しました。革命に成功しても、その地位をなげうって独裁政権に虐げられている人民を解放するために戦い続けたからです」

北朝鮮による日本人拉致解決目指し武装化

「そのうち私は北朝鮮による邦人誘拐について注目しました。誘拐された日本人の解放に取り組みたいと思うようになり、武装組織の結成が必要だと思うようになったのです。
出所後、武装組織結成のための武器の調達をアメリカで行うことにしました。武器の種類が豊富だったからです。また銃器弾薬の調達のかたわら、渡航するたびにロサンゼルス郊外の射撃場で訓練に励んでいました。時には指導者に習ってやっていました」

北朝鮮による日本人拉致事件の解決を目指していたという
北朝鮮による日本人拉致事件の解決を目指していたという

「渡航に使うパスポートは実在する「小林照夫」という人物になりすましたり、「天野守男」という架空の人物をかたって正規に申請して交付されたパスポートを使いました。
また渡航先のロサンゼルスでカリフォルニア州発行の「Teruo KOBAYASHI」名義の運転免許証を正規に受験して取得しました。この運転免許証を身分証明書として使って現地の銃砲店で銃器を購入し、銃器購入の費用として先物取引で得た現金や父親の遺産など3000~4000万円をつぎ込みました。」

中村は、左翼思想への傾斜から北朝鮮拉致問題に注目し、日本人救出のために武装化が必要だったと訴えている。荒唐無稽としか言いようがない主張であった。

【秘録】警察庁長官銃撃事件52に続く

【執筆:フジテレビ解説委員 上法玄】

1995年3月一連のオウム事件の渦中で起きた警察庁長官銃撃事件は、実行犯が分からないまま2010年に時効を迎えた。
警視庁はその際異例の記者会見を行い「犯行はオウム真理教の信者による組織的なテロリズムである」との所見を示し、これに対しオウムの後継団体は名誉毀損で訴訟を起こした。
東京地裁は警視庁の発表について「無罪推定の原則に反し、我が国の刑事司法制度の信頼を根底から揺るがす」として原告勝訴の判決を下した。
最終的に2014年最高裁で東京都から団体への100万円の支払いを命じる判決が確定している。

上法玄
上法玄

フジテレビ解説委員。
ワシントン特派員、警視庁キャップを歴任。警視庁、警察庁など警察を通算14年担当。その他、宮内庁、厚生労働省、政治部デスク、防衛省を担当し、皇室、新型インフルエンザ感染拡大や医療問題、東日本大震災、安全保障問題を取材。 2011年から2015年までワシントン特派員。米大統領選、議会、国務省、国防総省を取材。