鹿児島市の活火山・桜島で山体膨張が続き、噴火や爆発が繰り返し発生している。専門家は「大規模噴火の可能性は今のところ見られない」と話すが、活動は収まる気配を見せていない。

「爆発音とともに噴煙が2500m上空に達した」

鹿児島地方気象台などによると桜島では5月12日ごろから島内の傾斜計などで、山体膨張を示す近く変動が観測された。そして15日からは噴火や爆発(おもに空気振動を伴う噴火)を繰り返している。15日午後9時38分の爆発では、室内でも「ボン」という爆発音が感じられた。鹿児島テレビのカメラは、火口から噴き上がったやや多量の噴煙が上空2500mにまで達する様子を生々しくとらえていた。

15日午後9時38分の爆発
15日午後9時38分の爆発
この記事の画像(10枚)

噴火にともない、当初は大隅半島方面に火山灰が降った(降灰)が、風向きの変化につれ、鹿児島市方面でもみられるようになった。16日午前には鹿児島市北部・吉野町方面で降灰が顕著となった。道路や歩道に積もった灰が巻き上げられ、横断歩道や交通標識が見えづらくなった。

降灰により視界不良に
降灰により視界不良に

鹿児島市はこの状況を受けて、吉野方面を中心にロードスイーパー4台などを出動させ、清掃作業に当たった。

空の便に影響、利用客からは不満の声も

桜島の噴火は空の交通にも影響を及ぼした。15日には鹿児島空港で降灰などの影響により20便余りが欠航や目的地変更を余儀なくされた。

空の交通にも影響
空の交通にも影響

16日朝。鹿児島空港では滑走路に積もった灰を巻き上げながら飛行機が離陸する様子がみられた。航空各社のカウンターには搭乗便の振り替えなどを求める利用客の行列ができ、16日も出発便を中心に8便が欠航となった。

「山に登る予定だったが、あちらの天気も悪いので思い切って行かないことにしました。残念です」と予定を変更せざるを得なかった利用客の声が聞かれた。

また別の利用客からは「9時ごろに東京に着く予定だったが昼の2時過ぎになったので予定変更している。桜島は鹿児島のシンボルなので好きだが、きょうだけはやめてほしかった」と不満の声も上がった。

専門家「大規模噴火の可能性は今のところ見られず」

今回の噴火について16日、桜島の調査、観測をしている京都大学防災研究所の中道治久教授に話を聞いた。「2日前ぐらいから急に山体が膨張し始めた。15日の午前11時頃から翌16日午前3時頃まで連続的に噴火して山体膨張を解消するかと思っていたが、その途中で新たなマグマが入ってきた」と説明する。

中道教授「2日前ぐらいから急に山体が膨張し始めた」
中道教授「2日前ぐらいから急に山体が膨張し始めた」

現在は「山体が膨張しつつ爆発や連続的に灰が出たりを繰り返している状態」だという。

一方で大規模噴火の可能性については「今のところ見られていない」と話す。「(1914年の)大正噴火の時は、数日前から鹿児島市内でも揺れを感じる地震が続いたが、今回はそういうことは全く観測されていない。いわゆる大規模噴火、島外に避難しなければならないことは考えにくい」と冷静な見方を示した。

大規模噴火の可能性は今のところ見られないという
大規模噴火の可能性は今のところ見られないという

中道教授は市民に対して「基本は普段通りの生活で構わない。風向きによっては住んでいるところに灰が到達する可能性がある。情報を注視することが重要」と冷静な対応を呼びかけている。

桜島は噴火警戒レベル3(入山規制)が継続中。一連の噴火を受け気象台では、弾道を描いて飛散する大きな噴石などに警戒を呼びかけている。また九州南部の梅雨入りが5月16日に発表された中、今後の降灰状況しだいでは降雨時の土石流発生の可能性にも注意を呼びかけている。

鹿児島のシンボルである桜島。過剰な警戒にはおよばないが、最新の情報に注意しながら、日常生活を送る日が続く。

(鹿児島テレビ)

この記事に載せきれなかった画像を一覧でご覧いただけます。 ギャラリーページはこちら(10枚)
鹿児島テレビ
鹿児島テレビ

鹿児島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。