2025年5月、鹿児島の活火山・桜島で山体膨張が観測され一時噴火が活発化した。6月になり噴火の回数は減ったが、桜島はどのような状態なのだろうか。気象台の担当者を取材した。

観光客を穏やかに迎えていた桜島

桜島で山体膨張を示す地殻変動が観測されてから約1カ月たった6月19日、有村溶岩展望所をたずねた。山頂付近は雲がかかって噴煙は見えず、穏やかな様子だった。

桜島(6月19日)
桜島(6月19日)
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観光地としての桜島には今も多くの人が訪れている。有村溶岩展望所をたずねた。ここから撮影された桜島は大河ドラマ「西郷どん」のポスターやオープニング映像などに使われ全国的におなじみだ。札幌からの観光客は「噴煙がリアルに見えるのかなと思っていたが、見えないのでちょっと残念」とやや期待外れの様子。一方、宮崎からの観光客は「毎回来るたびに景色が違う。それが一つの魅力」と桜島の変化する姿を楽しんでいた。

月100回超の噴火は約5年ぶり

5月15日、桜島の南岳山頂で約半月ぶりに噴火が発生し、その後、断続的に噴火が続いた。噴煙は火口から最大3500mまで上昇し、大隅地方を中心に火山灰が降り、飛行機の欠航など市民生活への影響も出た。

連続噴火が発生した当時の映像(5月15日)
連続噴火が発生した当時の映像(5月15日)

5月だけで桜島は146回の噴火を観測。ひと月で100回を超える噴火は約5年ぶりという活発な活動だった。

データで見る山体膨張と噴火の関係

鹿児島地方気象台・林幹太火山防災官は「今は(山体膨張を示すデータ)はほとんど横ばい。(山が)膨らんだり縮んだりという状況ではない。現在、噴火はそれほど活発ではない」と説明する。その上で「噴出物が外に余り出ておらず地下にも多量のマグマは入っていないので結果的にほとんど横ばい」と補足した。

2025年3月以降の山体膨張の動きを示す傾斜計、伸縮計のデータを見ると、4月に入り縮む傾向にあった桜島の山体は、5月12日の夜に急激に膨張に転じた。その後、一気に噴火活動が活発化した。

林火山防災官は「桜島の地下に新たなマグマが供給されたその結果、山体が膨らんできた。マグマが入ってきたので噴火活動が活発化した。それが一番考えられる要因」と分析する。

現在は落ち着くも今後の活動は予断を許さず

6月の爆発回数は19日までに2回と少なく、山体膨張は3カ月前のレベルに戻り、現在はほぼ横ばいの状態だという。

しかし油断はできない。林火山防災官は「今回のような山体の急激な膨張が確認されれば、また噴火活動が活発化する可能性はある。山体の急激な膨張は一番注視しておく必要がある」と警戒を呼びかける。

鹿児島地方気象台・林幹太火山防災官
鹿児島地方気象台・林幹太火山防災官

大正噴火級の可能性は?

さらに忘れてはならないのは、現在、桜島がある姶良カルデラの地下には、20世紀以降最大規模の噴火となった「桜島の大正噴火」と同じ量のマグマが蓄積していると考えられていることだ。

林火山防災官「すぐに大正噴火クラスの大噴火が差し迫っている状況はみられない」
林火山防災官「すぐに大正噴火クラスの大噴火が差し迫っている状況はみられない」

この点について林火山防災官は「大正噴火クラスの大噴火の前は、島内で大地震が連発したり、今回とは桁違いの山体の隆起があった。今はそういう状況ではないので、すぐに大正噴火クラスの大噴火が差し迫っている状況はみられない」と語った。

鹿児島のシンボル、桜島。その穏やかなたたずまいの下で起こるさまざまな変化を専門家は日夜観測している。現時点で過度の心配は必要なさそうだが、日々、活火山とともに暮らしているという意識は、忘れないようにしたいものだ。

(前の記事を読む:活発な活動続く桜島 安全確保し上空から取材 【鹿児島発】

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鹿児島テレビ
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