岩手県内には2025年も多くの外国人観光客が訪れているが、こうした人たちに着物をリメークした洋服などを販売している女性がいる。
着物の美しさを世界に伝えようとしている思いを取材した。

4月25日、宮古港に大型クルーズ船・オランダ船籍の「ノールダム」が寄港した。
船から降りて観光を楽しむ乗客たちをもてなそうと、港では岩手県の文化や名産品をピーアールするイベントが行われていた。

イベントに出店するブースの準備をする盛岡市の渡邊久美子さんは、着物をリメークしたジャケットやパンツなどの販売・レンタルをする「盛岡工房」の代表だ。

7つ上の姉や母の影響で小さな頃から裁縫やミシンなどの手仕事に親しんで育った渡邊さんは、盛岡市の服飾専門学校を卒業しアパレル販売も経験している。

腰の病気を抱え仕事を休んでいたときに、楽に着られてファッション性の高い着物のリメークを思いついた。

その後、2019年に工房を設立し、これまでにフリマアプリなどで1000点以上を販売している。

この日も、留め袖や紋付などをリメークしたジャケットやシャツなどの商品を店頭に並べていた。
観光から戻ってきた乗客が、興味深そうに手に取る。

渡邊さんの商品はインターネットを中心に販売していたが、外国人観光客を相手に直接商品を販売しようと思ったのには理由があった。

盛岡工房代表 渡邊久美子さん
「去年の10月に豪華客船を見に来た。その時に黒留袖のコートとワンピースを着ていた。すれ違う人が「ビューティフル」と声を掛けてくれた。嬉しくなって『絶対に出たい』と思ったのがきっかけ」

渡邊さんは通訳を交え、慣れない英語と身振り手振りで対応していたが、外国人観光客はみんな笑顔で、それぞれどんな使い方をするか考えて楽しんでいる様子だった。

外国人観光客
「クジャクのデザインが良いですね。大きな催しに着ていくのにピッタリ。日本の職人技を見せることもできる。夕食会に着て行こうと思う」
「これは帯から作られたテーブルクロスで、93歳になる母にプレゼントするの。花柄がとても良く質も素晴らしい。母は喜んでくれると思う」

リメイクした着物を着た渡邊さんがもらった「ビューティフル」という言葉。
お土産として持ち帰った外国の人たちに、その時の自分の気持ちと同じ気持ちになってほしいと渡邊さんは言う。

盛岡工房代表 渡邊久美子さん
「母国に帰って着ていただいたとき「ビューティフル」と言ってもらい、お客さまが喜んでもらえたら」
「ふたたび命を吹き込む。(ふたたび命を吹き込まれたものが)お客さまの手元に届いたとき、やっと日の目をみる。そういうものが1枚でも増えれば良いと思う」

渡邊さんの手によって再び「いのち」が吹き込まれた「日本の文化」が海を渡り、喜びをつないでいく。

岩手めんこいテレビ
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