兵庫県赤穂市の市民病院で、手術のミスにより、両脚のまひなど後遺症が残った女性と家族が、執刀した松井宏樹医師(47)と市に賠償を求めた民事裁判で、神戸地裁姫路支部(池上尚子裁判長)は、執刀医と市に対し、合わせて約8800万円の賠償を命じた。

松井医師はこの医療ミスについて、業務上過失致傷の罪で在宅起訴されている。

女性の親族は、この手術ミスを題材に「脳外科医 竹田くん」という漫画をインターネット上で連載し、問題を訴えていた。

松井宏樹医師
松井宏樹医師
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■歩くことができていたが…手術受け両脚まひ

訴えなどによると、現在80歳の女性は、十分に歩くことができていた2020年、赤穂市民病院で松井宏樹医師から、腰の骨が変形することで神経が圧迫され、脚が動きにくくなる「脊柱管狭窄症」と診断され、腰の骨の一部をドリルで削る手術を受けた。

この手術を執刀した松井医師は、誤って腰の神経の一部を切断し、女性は両脚が麻痺したほか、強い痛みが続くなどした。

女性と家族は、「医師が手術の経験も技量もないのに執刀し、後遺症が残った」などとして、医師と赤穂市に対して、合わせて約1億4000万円の損害賠償を求めて裁判を起こしていた。

女性
女性

■女性は『この痛みを治してくれ。足を動くようにしてくれ。そうじゃなければ死ぬ』訴え 「ほかの被害者が救済される道が」と裁判を起こす

女性患者の家族:

(女性は)手術後に急に足が自由に動かなくなったりとか、普通手術って終わったら手術前よりも良くなってるようなものなのに、なんでこんなあの足が動かないんだとかそういうことに対して憤りとかも感じていた。

『死にたい』っていうふうな、『この痛みを治してくれ。足を動くようにしてくれ。そうじゃなければ死ぬ』っていうことを言っていました。

裁判によって医療事故の全容を明らかにすることで、ほかの医療事故被害者が救済されるような道があるのかもしれないと思って、民事裁判に踏み切りました。

赤穂市民病院
赤穂市民病院

■松井医師「上司にせかされ…よく削れるドリルに変えたのが最大の原因」主張も上司に「先生のせいではない」メッセージ送ったこと認める

松井医師はこれまでに裁判で、手術の技量がなかったわけではないと主張し、「助手の上司の医師が水をかけて視界が悪く、また手術をせかされ、よく削れるドリル=スチールバーで手術したことが最大の原因」と述べた。

松井医師(裁判での証言より):(助手の上司の医師から)水が大量にかけられて、吸引されない。かなり視界が悪かった。

松井医師(裁判での証言より):『何をちんたらやっとるねん。日が暮れる。スチールバーでやれ』と。『いいから替えろ』と押し切られました。

裁判での松井医師(法廷内イラスト 2024年9月)
裁判での松井医師(法廷内イラスト 2024年9月)

一方で、手術翌日にはその上司の医師に「先生のせいではない」とメッセージを送っていたと指摘され、これを認めていた。

<裁判での尋問のやり取り>
原告側代理人弁護士:『今回の件(女性の手術でのミスのこと)、先生のせいではありません』というメッセージはあなたが書いた?

松井医師:はい…。

(関西テレビ 2025年5月14日)

関西テレビ
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