福岡・糸島市の風光明媚なエリアで始まった或るプロジェクト。エジプトにあるピラミッドが建設されようとしているのだ。その実体は何なのか?

観光地にピラミッドが出現!?

三角形の2つの岩が海上に並ぶ夫婦岩。縁結びのシンボル、そして美しい夕景スポットとして有名な糸島市の景勝地、桜井二見ケ浦だ。この日も多くの観光客などで賑わいを見せていた。

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そのすぐ近くでは、真剣な表情の人たちが何やら話し込んでいる。景勝地には見向きもせず、彼らの視線の先にあるのは工事現場だ。

「高さが15メートル、緑がたくさん。明るい場所です。来年の8月に完成予定のピラミッドの土台になります」と何やら不思議な会話。見学者が熱望するピラミッドの正体とは一体、何なのか?

「金額は22万円ですけど、生前のうちにご購入頂いた場合は生前管理料が、月3万3千円です」と説明する関係者。実は、2026年の夏に完成予定のピラミッド型の墓の見学会だったのだ。

なぜピラミッドなのか? 二見ヶ浦公園聖地の荒木秀彦所長は「夫婦岩が近いので、夫婦岩にちなんだこのピラミッドの形のお墓に行きついた」と説明する。

近くにある縁結びのシンボル夫婦岩の形にちなみ「夫婦ピラミッド」と名づけたというのだ。

前代未聞の“夫婦ピラミッド”墓

高さ約15メートル。約2万人分の納骨が可能だ。最上階には、墓参りに訪れた家族の展望スペースも設けられるという。海沿いの絶景で墓参りとなれば、そこへ足を運ぶきっかけにもなる。

このピラミッド構想の背景には、増え続ける「無縁墓」の問題がある。墓を引き継ぐ親族などがいなくなり、放置される無縁墓。

総務省による2023年の調査では、全国の約6割にも及ぶ自治体が、無縁墓を抱えていると回答したという。少子高齢化や核家族化などが理由で各地での対応が課題となっているという。

こうした無縁墓を減らそうと現在、各地で整備が進んでいる。それが、家族がいなくても墓地管理者が永続的に供養できる「永久墓」だ。糸島市に出現するピラミッド墓もそのっひとつで、見学に訪れた人は「管理料などが一括になっていて、子どもたちに負担をかけなくて済むのがありがたい」と話す。

子どもたちに負担をかけなくて済むのが、評価のポイントだという。

福岡にはユニークな古墳型の永久墓も

自分の墓を持たない供養のかたち。福岡県内にあるユニークな永久墓と言えば、新宮町に3年前に完成した全長53メートルの「前方後円墳」型の墓がある。

販売開始直後から話題となり申し込みが殺到した。新宮霊園の本田宏之さんによると2基目となる古墳型の合同墓地も考えている状況だという。

その新宮霊園の担当者もピラミッド墓に興味津々のようすで、この日はライバル霊園の事務所を訪ね意見交換をしていた。

「二見ヶ浦にしかないものになるというところに着目させて頂いた。はじめはモニュメントみたいにしようかと思いましたが、合葬にすれば“古墳”に対抗できるかと」。二見ヶ浦霊園の荒木所長は、視察に訪れた新宮霊園の担当者に対し、こう語った。やはりライバル霊園の動向が気になるようだ。

観光地で始動した「ピラミッド墓プロジェクト」。人生の最期をどう迎えるのか。その問いを考えるきっかけにもなりそうだ。

(テレビ西日本)

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