国の天然記念物に指定されている「オカヤドカリ」を、中国籍の男3人が無許可で所持した疑いで逮捕される事件が発生した。オカヤドカリは南西諸島などで生息が確認されていて、採取や持ち運びには国の許可が必要だが、なぜ天然記念物が狙われたのか。その背景と影響を探る。

天然記念物を無許可で所持した疑い

2025年5月7日、国の天然記念物・オカヤドカリを無許可で持ち運んだとして、鹿児島県・奄美大島のホテルに宿泊していた中国籍の男3人が文化財保護法違反の疑いで逮捕された。押収されたオカヤドカリは奄美警察署で公開された。プラスチック製のケースにびっしり詰め込まれたおびただしい数のオカヤドカリは、カリカリという音を立てて動き回っていた。

プラスチック製のケースにびっしり詰め込まれた、おびただしい数のオカヤドカリ
プラスチック製のケースにびっしり詰め込まれた、おびただしい数のオカヤドカリ
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「スーツケースから音」「部屋にヤドカリ」ホテル支配人が環境省に通報

警察によると、逮捕されたリャオ・ジービン容疑者(24)ら中国籍の男3人は、数千匹、約160キロのオカヤドカリを、スーツケース6つに入れて無許可で所持していたという。

3人が宿泊していた奄美市のホテルから「宿泊している中国人3人のスーツケースからゴソゴソと音がする」と環境省に通報があり事件が発覚した。男のうち1人は「奄美大島の海岸で採った」などと話しているという。

ホテルの田畑敬一郎支配人が鹿児島テレビの取材に応じた。

田畑支配人は「重そうにここ(ロビー)まで持ってきて『預かってください』ということで」と、力を込めてスーツケースを引きずるジェスチャーを交えて語った。「すごく重たくて、よく聞いたらカリカリ音がするので『何か生き物がいるな』」と感じたという。

環境省に通報した田畑支配人
環境省に通報した田畑支配人

3人は6日朝にチェックアウト。「夕方のフェリーで鹿児島市に向かう」と話し、荷物をホテルに預けたままにしていた。

3人はオオヤドカリが入ったスーツケースをホテルに預けたままだった
3人はオオヤドカリが入ったスーツケースをホテルに預けたままだった

すると、中国人が泊まった後に部屋に入った客から連絡が。

「(部屋に)『ヤドカリがいる』」

田畑支配人の疑惑は確信に変わった。「客の荷物を開けるわけにはいかないし、だからといって、島の貴重な生き物だったら大変なことになると思って、環境省に連絡し相談した」と振り返った。

ペットショップ関係者は希少価値の高さを指摘

鹿児島市のペットショップ「ペッツワールドアクア」の西弘孝さんは、逮捕された3人が所持していたオカヤドカリの大きさについて「普通出回っているものは手のひらにも収まるほど小さいのが多いので、あのサイズはびっくりした」と驚きを隠さない。

西さんは「あのサイズはびっくりした」と驚きを隠さない
西さんは「あのサイズはびっくりした」と驚きを隠さない

西さんによると、通常黒っぽい色が多いが、今回押収されたオカヤドカリはきれいな紫色で、希少価値が高いという。「もしかしたら1匹あたり4000円、5000円とかになる」と西さんは推測する。

奄美の海岸で簡単に見つかる天然記念物 

事件を受けて奄美市の海岸を取材すると、近くの林の中ですぐにオカヤドカリを確認することができた。じっとしているものや、茂みの奥に逃げていくオカヤドカリを、この周辺で10匹以上見ることができた。

奄美市の海岸を取材すると、オオヤドカリは近くの林の中ですぐに見つかった
奄美市の海岸を取材すると、オオヤドカリは近くの林の中ですぐに見つかった

「ペッツワールドアクア」の西さんは、オカヤドカリは2~3年前から中国で人気との情報があり、「観賞用で見て楽しむ人が多い」と説明する。その上で西さんは「ただ単にいると思って採ったのではなく、ポイントを知っていて、それで奄美の方に行って選別して採ったイメージがある」と分析する。

生態系への影響と今後の対応 

押収されたオカヤドカリは、生態系を壊す可能性があることから自然に戻すことは難しいという。現在は奄美市内の保護施設に一時保管されており、今後は水族館や研究施設などに譲る可能性がある。

この事件は、奄美大島の貴重な生態系を脅かす実態を浮き彫りにした。地域の自然を守るためには、地元住民の協力と観光客への啓発が不可欠だ。

事件については警察が動機などを調べているが、一方で、希少生物の国際的な取引の問題が背景にないのか注目される。地域の自然保護と国際的な生物保護の両面から、今後の展開を見つめたい。

(鹿児島テレビ)

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