妻に精神的DVを繰り返してきた夫がある日家に帰ると、そこに妻と娘の姿はなかった…。言葉の暴力によって相手を追い詰める精神的DVを描いた漫画「99%離婚 モラハラ夫は変わるのか」。原作者で元加害者だった男性が加害心理と、変わろうとする加害者のために必要な支援について語った。
「99%離婚」原作者が語る 精神的DVの実態
『おれは仕事も家庭もうまくいっている』。エリート会社員の翔がある日帰宅すると家の中は真っ暗だった。この時すでに「99%離婚」という状況になっていたことに彼は全く気づいていなかった。 (あらすじより)

雑誌掲載後、大きな反響を呼び、3年前にコミック化された「99%離婚 モラハラ夫は変わるのか」。被害者の苦しみだけでなく、加害者がなぜ加害に至ったのかや、育ってきた環境で加害者自身が受けてきた被害や苦悩も描かれている。原作者・中川瑛さんも精神的DVの元加害者だ。

「99%離婚」原作者 中川瑛さん:妻が望んでもいないのに「あなたはこういう人生を生きた方がいい」「こういうことができるからビジネスにして生きていった方がいい」と勝手にノルマを設定した。ノルマが月末来るたびに「何でやってないの?自分はこんなに応援してあげているのに」と、感謝もせずノルマを果たさず、毎月責める。そういう時に「誰のためにやっているんだ、なんでケンカしちゃうんだろう」と調べていったときに、それがモラハラ・DVだとわかった。

愛する妻のために、幸せになるためにと信じてやってきたことこそが「悪意なきDV」だった。中川さんは、そもそもなぜ加害者は言葉の暴力などで相手を追いつめるのか、心理的理由を次のように分析する。
ハラスメントをしている状況がそんなに悪いことだと思っていない。むしろ普通、当たり前、中川瑛さん:夫婦関係とはそういうものぐらいの感覚。何らかの理想を持っていて、人に押し付ける時にDVが起こる。自分の方が正しい、相手がおかしい、被害者意識が強い、どうせお金もそんなに稼げないだろう出ていけないだろうと思っていたら、本格的に出て行かれたら「これはまずい」と初めて思う。
加害者更生の取り組み
「自覚なき、悪意なきDV」が妻の心を傷つけていることに気づいた中川さん。夫婦関係の再構築のために様々な文献を調べる中で、自分と同じような加害者が「変われる場所」を作りたいと、4年前に加害者更生のための団体「GADHA(ガドハ)」を立ち上げた。

GADHAは、学び変わりたいと願う加害者たちがオンラインコミュニティなどで対話する場で、暴力を理論的に学ぶプログラムなども受けることができる。GADHAは登録制で、全国で1300人以上が参加している。(2025年4月現在)

中川さんは、加害者が学び変わるためには環境要因も大きいと指摘する。
中川瑛さん:変わろうと思ったときに知識にアクセスできるか、訓練できる場にアクセスできるか環境要因も大きく影響する。当事者同士が集まって同じ目線で話し合ったり、愚痴をこぼしあったりできる場所が必要。

加害者更生は、被害者の安全を確保する意味でも重要だとされている。

GADHAの中川さんは「モラハラを自覚した加害者は変わることができる」とした上で、その学びがその後の人生の幸せにつながるとも話す。
中川さんは、離婚・別居の危機に直面した加害者が「相手を責める」のではなく、「自分の問題に気づき、変わろうと思える」ような社会の実現に向けて活動を続けていきたいとしている。今後WEB広告の早期啓発、自治体や専門機関のリーフレット配布を目的にクラウドファンディングを実施する(5月15日午前11時~受付開始)。
さらに、DV・ハラスメントの再発防止に向けたシンポジウムを開催を予定している(リアル会場とZOOMでのハイブリット開催)。被害者支援だけでは根本的な解決にはならないという認識のもと、内閣府男女共同参画会議の元専門委員の中村正氏やハラスメント科学の第一人者である津野香奈美氏などの専門家を迎え、加害行為の背後にある社会構造や、加害者の「変容」を支える社会会資源の在り方を多角的に議論する予定だ。(事前申し込み必要)
(テレビ長崎)