1日10時間以上も「書」に向き合うという“スーパー小学生”が福岡にいる。群を抜くという模写力。その才能に迫った。
書道全国大会で2年連続日本一
福岡市に住む小学6年生の中村美月さん(11)。一見、どこにでもいる普通の小学生だが、書道では「天才少女」として一目置かれる存在だ。

美月さんが、学校帰りに立ち寄った稽古のために借りているアパート。部屋にはトロフィーや盾がズラリ。これまで120回以上の表彰を受けているというだけあって、飾りきれず、箱に入れたままのものも多い。美月さんは子どもから大人まで約1万5000人が参加する「全日本書初め大展覧会」で、2年連続日本一に輝いたスーパー小学生なのだ。

2024年は、60年の歴史で史上最年少となる小学4年生で最高賞の「内閣総理大臣賞」を受賞。翌年も再び最高賞を受賞するという快挙を成し遂げた。小学4年時は「席書の部」(会場で一斉制作)で、小学5年時は「公募の部」(自信作を出品)で、それぞれ1位に選ばれた。異なる両部門での最高賞獲得は、大会始まって以来、初の快挙だという。

「ガサガサした線と整った綺麗な線の使い分け、書き分けが、上手くできたのかな」と美月さんは自らの作品の出来を分析している。
挫折を機に“火が付いた”天才少女
美月さんが初めて筆を握ったのは、なんと生後3カ月。地域で書道教室を開く母親の影響で、幼い頃から書に触れる機会が多く、3歳から本格的に稽古を受けるようになった。

「娘にもぜひ、書道をやってほしいという気持ちでいたんですけど…、日本一は、とにかくびっくり。十分過ぎる評価を頂いています」と母親のさつきさんも娘の予想外の成果に驚きを隠せないようだ。

「天才少女」とまで呼ばれる美月さんの気持ちに火が付いたのは、2年前の夏。小学4年生で初めて賞に入らなかったことがきっかけだったという。その悔しさをバネに学校終わりに3時間、週末や長期休暇は、1日10時間以上、ただひたすらに、書と向き合う日々を送っている。

「線の太さや全体のバランスは、ミリ単位で調整。1つの作品に、500枚以上かけることもある」と美月さんは話す。
お手本を「模写する力」が突出
目覚ましい成長の裏にあるのは、人並外れた集中力とたゆまぬ努力。そして、書を極める上で欠かせない能力。「お手本に忠実に書ける力と書こうとする力」だ。母親のさつきさんによると、美月さんは幼い頃から「模写力」が飛び抜けていたという。

美月さんの大きな才能である模写力を見せてもらうため或る文字を書いてもらった。北九州のソウルフード「資さんうどん」のシンボルマーク「資」の字だ。マークをよく見ると、線は、うどんの麺のようにうねり、字の角も丸みを帯びている。

「いつも書いている書体とは違うので上手く書けるかどうか…」と話す美月さんだったが、いざ筆を動かし始めると…「すごい、そっくり!」と取材した記者も驚く完成度だ。

まーるい筆の入りや、うどん麺を思わせる、しなやかな線まで…見事に再現されている。
将来の夢は「母と一緒に書道教室」
美月さんの将来の夢を聞くと「お母さんと一緒の書道教室の先生になりたい」と即答。そんな娘に母親のさつきさんは「継続すること、突き詰めること、これから生きていく上で必要な力になると思う。楽しく続けてくれたら嬉しい」と目を細める。

「見た人が感動できるような最高の1枚ができるまで、書いて書いて頑張りたい」。福岡のスーパー小学生は、自身が納得できる最高の1枚を追い求め、これからも書の道を邁進する。
(テレビ西日本)