井上の新証言 事件前日Xの訴え「敵の仇は敵に」
「事件の3日前、3月27日の午前中、早川からXへの連絡方法を聞かれポケベル番号を教えましたが、その時に早川は『敵の仇は敵にやらせる』と言っていました。
それから事件前日29日の夜、午後9時台に早川から連絡があり、『Xと連絡がつかないから私に電話するように言って欲しい』と依頼されたのでXに電話すると、Xが私に興奮した様子で、『あのティローパ(※早川のホーリーネーム)って男は何者ですか?『俺に従えばいいんだ』とか言われました。下見に引きずり回されて、知らない人からも指示されました。早川から『警察官しかできないことがある』とも言われました。出来ることと出来ないことがあります、やりたくありませんと興奮した様子で訴えてきたので、なだめて落ち着かせた後、無理をすることはないけれど、とりあえず電話をしてあげて下さいと言いました」

「Xは在家信者なので無理なことはさせられないと思い、再度早川に電話をして深夜に(※編集部注 29日夜から30日未明)早川と会いました。その際に『Xは大丈夫なんですか?』と聞くと、早川は『大丈夫や。気にするな』と言っていました」

「この会合の途中で端本が合流してきました。その場に来た端本は私を見るや否や、急に何かに納得した様な顔をして『そういうことなんですか』とつぶやきました。
すると早川は端本に『彼(井上)は関係ないから』と言って、暗に端本にそれ以上余計なことを私の前で言わないよう止めていました。2人のこのやりとりは、この後実行しようとしている何かを私に悟られないようにしたいという雰囲気がありありと出ていました」
井上による新たな供述は直ちに裏付けが取られた。
すると29日の午後9時台に井上からXへのポケベルでの架電、その後同じく午後9時台に井上から早川への架電があったことが井上の供述通り確認されたのである。

そればかりではなかった。この後、30日の午前0時には六本木の喫茶店で早川、井上、林泰男(教団信者・元死刑囚)、それに端本が会っていたことが確認されたほか、30日午前1時台に早川から井上への架電も確認され、井上の新供述は時系列として正しいことが裏付けられた。
時効までひと月を切った3月3日、筆者は公安部幹部の部屋を訪れた。幹部は珍しく嬉々としていた。