備蓄米が福井県内で店頭に並び始めて約2週間。スーパーを取材すると、店はその売れ行きに驚きを隠せないでいた。同じ銘柄のコメがこれほど短期間に一気に売れることは、コシヒカリに次ぐ福井の新たなブランド米「いちほまれ」が登場した時以来だという。消費者が安いコメを求め備蓄米の需要が高まる一方で、農家は複雑な胸中を語った。

空っぽになった備蓄米「ハナエチゼン」の販売棚
空っぽになった備蓄米「ハナエチゼン」の販売棚
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特定の銘柄「こんなに売れることない」

4月23日、福井市にあるJAグループのスーパー「Aコープやしろ店」を取材すると、売り場には備蓄米が1袋もない状態だった。この店舗では4月10日に、備蓄米の県産ハナエチゼン5キロ100袋が入荷。価格は税込み3434円、1人2袋までという条件付きだったが5日後には完売。1週間後には150袋を入荷したが、再び5日後にはすべて売り切れた。
 
Aコープやしろ店・山上剛副店長:
「びっくりするくらい、1日20~30袋売れている。これほど売れるのは『いちほまれ』が出た時以来で、同じ銘柄がこれほど売れることはない」

Aコープやしろ店・山上剛副店長
Aコープやしろ店・山上剛副店長

福井県内にある5つのAコープ全店の備蓄米の仕入れの管理をしている山上さんによると、小浜店や三国店などでも同様に販売は好調で、5店舗合わせて1週間に500から600袋のペースで売れているという。
  
やしろ店では24日、備蓄米の県産ハナエチゼン5キロ150袋が新たに入荷される予定で、今後も同じペースで仕入れることにしている。 

JAグループのスーパー「Aコープやしろ店」
JAグループのスーパー「Aコープやしろ店」

新米の時期まで「安定供給できる」

備蓄米の需要が続く一方で、JA福井県は備蓄米の3回目の入札に参加しなかったことを明らかにした。政府が備蓄米の放出を決めた当初から、その方針には反対姿勢を示していたJA福井県。ただ、あくまで県内から出した備蓄米の“買い戻し”をする目的で、1回目と2回目の入札に参加。「その目的は果たせた」として3回目の入札は見送った。

JA福井県五連の宮田幸一会長は、備蓄米の放出について「上がり続けるコメの価格の抑制に一役買っている」とした。そのうえで、県内では2回目までに入札した備蓄米を含めて、2025年度産の新米が出回る時期まで「安定的に供給できる」との見通しを示した。

JA福井県五連の宮田幸一会長
JA福井県五連の宮田幸一会長

販売価格が上がっても農家の手取りは…

2025年産米の田植えはすでに始まっている。福井市内の33ヘクタールの水田でコメを生産する農事組合法人こうすいの吉田優一郎さんは、コメ不足を受けて作付けを増やしたい思いがあるものの、半年前には計画が決まっているため簡単には増やせないと歯がゆさを隠せない。

農事組合法人こうすいの吉田優一郎さん
農事組合法人こうすいの吉田優一郎さん

政府の備蓄米放出については「消費者もお困りなら安定させるのは行政の役割」と理解を示す一方、価格については「消費者に向けての価格と生産者が(卸業者に)引き渡す価格に差があるのは当然だが、そのバランスが大事。いたずらに消費者の価格だけが上がり生産者の引き渡し価格が変わらないのはおかしな話。その分(差額)はどこにいったんだ、という話」と疑問を口にする。
 
消費者が切望するコメの価格低下。その一方で、後継者不足や赤字経営に悩む農家は、複雑な思いを抱えている。

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福井テレビ
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