毎年4月2日~8日までの1週間は、厚生労働省により「発達障害啓発週間」と定められており、自閉症をはじめとする発達障害について理解を深めるためにさまざまな啓蒙活動が行われているが、今回は、発達に遅れや障害がある子どもの成長を促すとされている「ホースセラピー」に注目する。

発達障害の主な種類とは 

最初に、発達障害とは脳機能の発達が関係する障害で、主に3つのタイプがある。

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自閉症スペクトラム障害(ASD):
言葉の発達の遅れ、コミュニケーション障害、対人関係・社会性の障害、パターン化した行動、こだわり。

注意欠陥・多動性障害(ADHD):
不注意、多動・多弁、衝動的な行動。

学習障害(LD):
「読む」「書く」「計算する」等の能力が全体的な知的発達に比べて極端に苦手。

の主に3つがある。(出典:厚生労働省、2019)

療育の一つとして注目「アニマルセラピー」

そんな発達障害の困りごとを改善する療育として近年注目されている「アニマルセラピー」。

動物と触れ合うことが癒しとなり症状の改善につながる「アニマルセラピー」
動物と触れ合うことが癒しとなり症状の改善につながる「アニマルセラピー」

「アニマルセラピー」では、人間ではなく動物と触れ合うことが癒しとなり、症状の改善につながるという。アニマルセラピーの動物には犬や猫、イルカなどが主流だが、馬も活躍している。

茨城県にあるホースセラピー施設「ヒポトピア」。この施設では11頭の馬が暮らしていて、馬の餌やりやブラッシングなどのふれあいを通して「癒し」や「安心感」を得ることで発達に遅れや障害がある子どもの心身機能の向上につながる。

「乗馬」は発達障害の子どもたちに必要な筋肉やバランス感覚を鍛える効果が期待される
「乗馬」は発達障害の子どもたちに必要な筋肉やバランス感覚を鍛える効果が期待される

特に「乗馬」では、発達障害の子どもたちに必要とされている筋肉やバランス感覚を鍛える効果が期待される。これはアニマルセラピーの中でも稀有な特徴で、犬や猫などにはないホースセラピー最大の魅力である。

「ノンバーバル」な関わりあい

ホースセラピーの魅力について、「ヒポトピア」代表理事の鈴木弓子さんに話しを聞いた。

「ホースセラピー」の魅力を語る鈴木弓子さん
「ホースセラピー」の魅力を語る鈴木弓子さん

鈴木弓子さん:
馬ってそっと人の近くにいてくれる優しい動物なんですね。(馬との関わりを通して)言葉を交わさなくても、察することができたり思いやったりする経験を積んでもらうことで、社会に出てからもそういうことができる人たちになるんじゃないかと思っています。

鈴木さんによると、人間同士のコミュニケーションでは、どうしても言葉に頼ってしまう部分があるが、馬と人とでは、非言語(ノンバーバル)の部分でコミュニケーションをとる練習になるという。

言葉ではなく、対象をよく見たり観察することで、主体を自分から相手に向けるという気持ちを育むことができるそうだ。

発達障害の子どもたちの中には言葉をうまく使うことができない子どももいるが、馬との関わりあいを通して「相手をよく見る」練習をすることで、言葉で伝えなくてはならない場面に直面した際、周りの空気感や相手をよく見ることができ、コミュニケーション(能力の向上)につながるという。

「楽しく癒され、想像力豊かな場所であってほしい」

最後に鈴木さんに、「ヒポトピア」の今後について聞いた。

鈴木弓子さん:
みんなの心の癒しや、楽しい場所であってほしい。もうそれが本当に一番です。想像力も沸いて、色々なことを自分で見つけたりとか話しだしたりとか、お子さんたちが何かを始まるきっかけの場所であってほしいというふうに思っています。

「ホースセラピー」は身体障害や不登校の子ども、さらに健常者にも効果が
「ホースセラピー」は身体障害や不登校の子ども、さらに健常者にも効果が

鈴木さんによると、「ホースセラピー」は発達障害の子どもだけでなく、身体障害や不登校の子ども、さらには健常者にも効果があるという。

「人馬一体」「馬が合う」という言葉があるように、古来から人間と呼吸を合わせ調和してきた馬だからこそ、癒されるものがあるのかもしれない。

【取材・執筆:フジテレビニュース制作部 中山瑞稀】