転職経験者500人への調査で、約半数が「転職によって給与が上がった」と回答した。給与アップの理由としては「能力が評価された」が最多となった。
専門家は、クラウドツールなどの普及により、即戦力として活躍しやすくなった点も影響していると分析している。
給与を重視した転職で実力が評価され収入増へ
2人に1人の割合で、転職で「給料が上がった」と答えている。

転職をして、4月から新たな職場で頑張っている人も多いと思うが、転職後の給料についてどう考えているだろうか。コメダ珈琲を運営する「株式会社エミリス」が、転職経験がある人500人に聞いた。(調査時期:2024年10月27日〜11月4日)

転職の際に給料を重視したかという質問に対し、「とても重視した(23.2%)」「まあ重視した(35.8%)」が合わせて59.0%、「あまり重視していない(37.2%)」「全く重視していない(3.8%)」という結果となった。
給料は、転職を考える重要な動機のようだ。

そして、実際に転職して給料が上がった人は47.4%。必ずしも給料アップするわけではないようだが、下がった人(41.2%)よりは多くなっている。

転職時に給料が上がった理由では、「能力が評価された(28.3%)」がダントツで、2位以下に、「基本給が上がった(18.6%)」、「勤務時間が増えた(8.0%)」「給料目的で転職(8.0%)」「仕事内容を変えた(5.9%)」が続いている。
背景にスキル重視と働き方の変化
「Live News α」では、働き方に関する研究・調査を行っている、オルタナティブワークラボ所長の石倉秀明さんに話を聞いた。
堤礼実キャスター:
転職で給料が上がったという方が多いようですが、石倉さんは、どうご覧になりますか?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
大学院でキャリアや働き方に関する研究をしているのですが、これまで日本では転職すると給与が下がるというのが経済学では通説となっていました。
人的資本は大きくいうと、どの会社・業界でも通用する個人の資本と、その会社・業界だから通用する資本の2つがあります。転職すると後者の業界特有の資本が失われてしまうので、給与が下がると言われていたわけです。
それが今回の調査では、2人に1人の割合で転職後に給料が上がっています。つまり、働き方や転職そのものに変化が生まれてきたのかなと思います。
堤キャスター:
その変化は、どこから来ているのでしょうか?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
会社や業界特有の資本は失われたとしても、それ以上に、個人が身につけてきた資本、具体的にいうと、個人の能力やスキルが評価されるようになってきたということだと思います。
もう一つ、テクノロジーが進化したり、クラウドツールの定着も大きな要因ではないかと思います。私も2024年、業界がガラッと変わったわけですが、日々のコミュニケーションに使っているチャットツールや、データや資料を保存しておくクラウドツールは、前職までと全く同じものでした。
むしろ、IT企業であれば、多くの会社が同じようなツールを使って業務していることも珍しくありません。
このように会社や業界が変わっても、日々仕事をするツールなどが一緒になると、前職でしか通用しなかったものというのが減っていくということがあると思います。
共通ツールの活用で実力を発揮しやすい環境づくりを
堤キャスター:
転職後、すぐに人材が活躍できるためのポイントは?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
その会社独自のシステムやツールを使うのではなく、多くの会社が導入しているツールやシステムを使って業務をしていると、その企業に移ってきた転職者がすぐにその実力を発揮しやすいということがあります。
さらに言うと、そこで働く方は、外に出ても通用する資本や、能力・スキルの蓄積に集中できるわけです。こういった点まで考えて、DXやIT投資ができるのかというのも重要な視点と言えると思います。
堤キャスター:
転職は大きな決断だと思います。仕事と暮らしのバランスの中で、これまで足りなかった何かが得られるなど、いい方向に向かうと良いですね。
(「Live News α」4月15日放送分より)