石川県金沢市内に3月、週に2日だけ開く八百屋さんがオープン。店主の挑戦について取材した。

週2日だけオープンする八百屋さん

金沢市の繁華街、片町2丁目。ここに週2日だけオープンする店がある。「よかったらどうぞいらっしゃいませ」店頭に並ぶのはナスやトマト、無農薬で栽培された茎ブロッコリーや葉ニンニク。店主の大野千遥さんが3月から始めた。

大野千遥さん
大野千遥さん
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「助かりますよ、スーパーまでいかなくても」訪れる客の楽しみは商品を選ぶことだけではなく、店での会話だ。「これからピクニック行くんです」「そうなんや。それはすばらしい。イチゴだけ先に」「子育てしていると子どもとしかしゃべっていない日がたまにあるので、そういう時に八百屋さんの店主としゃべれるとリフレッシュにもなりますし、すごくいいです」

既存の流通とは全く別のところで

大野さんの店があるのは、野菜の卸売りをしている松原屋商店の一画だ。20年ほど前までは、店頭販売をしていたそうだが、人手不足などで今は空きスペースとなっていた。そこで、大野さんがこの場所で八百屋を開きたいと申し出たのだ。

大野さんの本業は、農家。自分の好きな食の仕事に携わりたいと2023年からニンニクの栽培を始めた。「初めから売り先なく始めてもなかなか危険だし、いっぱいしても全部失敗するとあれなので2024年はこれの半分くらいからスタートして」畑の広さはおよそ10アール。この広さであれば、1人で管理できる。

「ニンニクの下のここが大きくなるんですけど、そのタイミングまでにとってあげないときれいな形にならなかったりニンニクとして玉の部分が太らなかったりするので、この作業をしています」草むしりや病気の蔓延を防ぐための間引き作業など、収獲までに手間がかかる。

1週間後に食べられなくなる

農業を始めて2年。大野さんはある課題に気付いた。「作る作るってずっとやっていて売るっていうことに時間を割くのは難しいんだろうなって。結局作ってもこれって1週間後に食べられなくなるじゃないですか。コップとかお皿とか作ったら、商品ができましたそこから営業にいくっていうのができると思うんですけど、野菜ってそれができないので大変ですよね」

大規模農家であれば、生産した野菜や果物の引取先はだいたい決まっている。しかし小規模農家の場合、生産が安定していないため、販路が限られるのだ。以前、マーケティング関連の仕事をしていた大野さん。その経験を生かし、小規模農家の野菜を扱おうと今回、八百屋さんを始めることにしたのだ。

「スーパーに行ったらだれが作ったと言ってもたぶん分からないけど、この店はそこにバトンタッチされてきた何かが伝わるんだろうなと思っていて。あなたの作った野菜のゾーンどこって聞かれてここの中から買うねとチョイスして買ってくれるていうのが、たぶん私のやっていることの価値の一つだと思うので。こうやって伝わってくれる人をお客さんとして集まる場所にできたら」

生産者と消費者をつなぐ

この日大野さんの元を訪れたのは、かほく市でキクラゲやヒラタケを生産するきのこ農家だ。「今シーズン栽培していたヒラタケになります。スーパーで売っているようなヒラタケじゃなくて発酵菌床という特殊な菌床で作ったヒラタケで、山の土の状態を菌床の中で再現しているので天然に近い味と香り」

きのこ農家は「飲食店が多いので飲食店のところにおろせたらもっと和食やら洋食、イタリアンやフランス料理そういうところにも使っていただきたいというのが一つ私らとしてもメリットがある」と話した。大野さんは「既存の流通とは全く別のところでちょっとずつ自分たちのものが売れていく先を見つけるための場所にもなれるんじゃないかなと思って。それを今挑戦中」と話す。肩書は農家兼八百屋さん。生産者と消費者を繋ぐ新たな仕組みをこの店から生み出そうとしている。

(石川テレビ)

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