アメリカのトランプ大統領は輸入される自動車に25%の追加関税を命じ、4月3日に発動された。広島県の輸出額のうちアメリカは約23%を占め、種目別では自動車が7割に上り、影響は避けられない見通しだ。

42万台販売 アメリカ重視が裏目に…

アメリカのトランプ政権は、輸入車に対する関税を現在の2.5%に25%を上乗せする政策を4月3日に発動。アメリカを最も重要な市場と位置づけている自動車メーカー・マツダは「トランプ関税」で大きな影響を受けるとされている。

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2024年、アメリカにおける販売台数は約42万台と38年ぶりに過去最高を更新した。このうち約5割を日本から輸出、約3割をメキシコから輸出していて、アメリカ・アラバマ工場での現地生産は約2割。追加関税の影響は避けられない。こうした現状に従業員からも複雑な心境が聞かれた。

広島・府中町にあるマツダ本社の従業員たちは「当然心配です。輸出は北米が稼ぎ頭なので」「情勢を見守るだけ。どうなるかわからない」「経営陣に託すしかないですね。できることをやるだけなので」と話す。

追加関税が発動された3日、マツダは「まずは自社でコントロール可能な原価低減、固定費削減など経営のレジリエンシー(回復力)強化に全力で取り組んでまいります。その上で、将来の成長に備え、取引先・販売店・従業員を守ることを最優先に、そしてお客さまへの影響を最小限に抑え、最適な対策を講じていきます」とコメントを出した。

マツダの生産台数 2~3割減る?

自動車の生産設備をつくる関連メーカーでも、トランプ政権の追加関税の発動に不安の声が上がっている。

マツダの1次取引設備メーカー「前浜工業」
マツダの1次取引設備メーカー「前浜工業」

広島市安芸区に本社を置く前浜工業。取引先はマツダをはじめとする自動車メーカーが8割を占め、車体の溶接機械などの設計・製作を行っている。

前浜工業の前浜秀敏社長は「関税により北米への輸出が減ると最終的に設備投資が減少し、われわれの仕事も減るということが予測されます」と危機感を募らせた。自動車の電動化などに伴い、ここ数年、自動車メーカー以外の取引先を増やす努力もしてきたというが…

「取引先を増やして1社ずつの売り上げを分散していくようにこの2年くらいやっています。自動車以外との取引も進めてはいるのですけど、なかなか厳しいとこもありまして」と険しい表情を見せた。

部品メーカー各社からも不安の声が相次いでいる。エンジン関連部品メーカーの担当者は「マツダの生産台数が2~3割減るのではないかとの見通しがある。マツダから『生産台数が減少しても耐えうる財務体質をつくる努力をするように』と言われた。経費節減などを少しずつ積み重ねていくしかないのが現状」と胸の内を明かした。また、別の部品メーカーからは「どのくらいの期間、継続されるのかなど未知数で不安。正直なところ、現在、準備できる対策が見当たらない」という声も上がっている。

県が中小企業の相談窓口を設置

自動車産業は裾野が広いだけに、広島県の湯崎英彦知事も県内経済への影響を強調する。

「非常に大きな影響があると想定しています。マツダ本体、あるいはサプライヤーに大きな影響があるということで、その対応状況をみながら、国や関係の金融機関などとも連携しながら、どういったサポートができるのかっていうのを我々としても検討していきたい」

対応策として、県は経営革新課に8日、相談窓口を設置したと発表。アメリカの関税措置によって影響を受ける県内の中小企業などの資金繰りや経営に関する相談に応じる。今後は商工会議所や金融機関など関係各所に呼びかけて、情報連絡会議を早急に開催し、現状把握に努めるとしている。

(テレビ新広島)

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