「すっごく寂しいですね。本当に」。高知市の中心部で長年親しまれてきたイオン高知旭町店が、2025年3月31日をもって一時休業となった。最終日には多くの人々が訪れ、別れを惜しんだ。
「たくさんのはじめてとワクワク」500枚超のメッセージに込められた思い出
イオン高知旭町店は、1978年に「ニチイ高知ショッピングセンター」として開業した。

その後、1991年に「高知サティ」、2011年に現在の名称へと変更し、46年にわたって地域の人々に愛されてきた。

建物の老朽化による一時休業が2024年10月に発表されると、店の歴史を振り返る特設コーナーが設置された。そこには500枚以上のメッセージが寄せられ、多くの人々の思い出が綴られた。

あるメッセージには「はじめての友達と遠出でサティへ。はじめての待ち合わせでイオンへ。はじめて子供たちとデートした夫とここへ。たくさんのはじめてとワクワクをありがとう」と書かれていた。

この店が単なる買い物の場所ではなく、人々の人生の節目を彩る大切な場所であったことを物語っている。
「ありがとう」を笑顔に込めて…店長が見守る最後の1時間
イオン高知旭町店の最後の店長を務めた安並こゆきさんは高知出身。高校時代の思い出の場所で2年間店長を務めた。

「一番名残深いのはサティの時代ですね。サティの近くの高校に通っていましたので、学校帰りに同級生と一緒にソフトクリームを食べたり、ゲームセンターで遊んだりしたのが、今でもきのうのように思い出されます」と思い出を語った。

最終日、安並店長は「名残惜しいところではありますけど、最後の最後、お客さまに笑顔で帰っていただけるよう、その一心で残りの1時間を過ごしてまいりたい」と決意を語った。
ベテラン従業員からは「最後の贈り物」 営業終了を200人以上の人が見守る
3月31日、店内は最後の買い物を楽しもうと訪れた多くの人々でにぎわった。

夕方からは生鮮品などに割引シールが貼られ、食料品コーナーは大勢の人でごった返した。

閉店の時間が近づくと、出口には従業員らによる「花道」が設けられた。20年以上働いたベテラン従業員が、店を後にする買い物客1人ひとりにカーネーションとガーベラを手渡した。

営業終了後、店の前には名残を惜しむ200人以上の人だかりができた。

安並店長に花束が贈呈され、「皆さまのおかげで、われわれ従業員、この日までやり遂げることができました。本当にありがとうございました」と感謝の言葉を述べた。
高齢者の「買い物の場所がない」切実な声も…解体後は再出発へ
最後まで多くの人に親しまれた場所に幕が下ろされ、地域の人々は様々な思いを語った。

「私たちの心の支えとして、生活の拠点として、本当に長い間お世話になりました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです」と語る人もいれば、「青春」の場所だったと振り返る若者もいた。

親子3世代で写真撮影をしていた家族は、「幼稚園からずっと来てたので、孫もできて娘と3世代で来られるようになって楽しかった。また新しく、ぜひぜひオープンしていただきたい」と、再開への期待を語った。

一方で「ご年配の方がやっぱり『ずっとここがあってほしい』と。近くに買い物するところないからね。そう言ってます、みんな」という声もあり、地域の高齢者にとっての重要性も浮き彫りになった。

イオン高知旭町店は一度解体され、時期や規模は未定だが、同じ場所でイオンとして新たに生まれ変わる予定だ。
(高知さんさんテレビ)