元タレントの中居正広氏と女性とのトラブルに端を発した一連の問題をめぐり、フジテレビと親会社のフジ・メディア・ホールディングス(FMH)は31日午後、第三者委員会の調査報告書を公表した。
「性暴力認められ、重大な人権侵害が発生」
一連の問題について調査を行ってきた第三者委員会は31日、親会社のFMHとフジテレビの取締役会に調査報告書を提出した。そして、会社は31日午後、報告書を公表した。

第三者委員会の報告書は、中居氏と女性からのヒアリングなどをもとに性暴力があったと認定した。
トラブルのあった事案について、女性が、当該食事は業務の延長線上であるとの認識を持つことは、自然であるとした。
企業のコンプライアンスに詳しい中央大学法科大学院の野村修也教授と、公表された調査結果の内容を詳しく見ていく。
宮司愛海キャスター:
報告書(要約版)の中の「はじめに」と書かれているところですけれども、「本件はCX(フジテレビ)の社員である女性アナウンサー(女性A)が、同社の番組に出演している有名男性タレント(中居氏)から性暴力による重大な人権侵害の被害を受け、CXは女性Aから被害申告がなされたにもかかわらず適切な対応をとらず、漫然と中居氏の番組出演を継続させた事案である。女性Aは、業務復帰を希望していたが、断念して退職せざるを得なかった」と記してあります。

そして、その次、(2)の部分です。
「本事案に対する評価」ですけれども、「本事案には性暴力が認められ、重大な人権侵害が発生した」
「上記のとおり、本事案において中居氏が女性Aに対して性暴力を行い、PTSDを発症した。
(中略)中居氏の行為は、重大な真剣侵害行為に当たると解する」
「そして、本事案は、CXにとって、有力取引先による社員に対する人権侵害の強い疑いのある事案であり、同社における人権に関する重大な経営リスクとして認識すべき事案である」と、当該事案に関して表記されています。
青井実キャスター:
この本事案には性暴力が認められた、そして、重大な人権侵害が発生した、と書いてあるわけですね。
中央大学法科大学院・野村修也教授:
この認定は非常に重たい認定だとは思うんですよね。定義としてWHO(世界保健機構)の性暴力の定義というのを踏まえて、今回の事案のように「意図せざる行為」があった場合については、広く性暴力だと認定できるんだという立場から、今回の認定が行われているということだと思います。
「プライベートにおける関係なかった」
宮司キャスター:
続いて次のページです。9ページに「中居氏と女性Aの関係は業務上の人間関係であること」という項目です。

「中居氏と女性Aは、CXの番組共演で接点を持ち、番組共演者として業務上の関係性があったが、両者は交際しておらず、プライベートにおける関係はなかった」と書かれています。

続いて11ページなんですけれども、こちらは第3章としまして、港社長(当時)、大多氏ら幹部の対応について書かれています。まず、この「本事案への認識」というところですけれども、「本事案において女性Aが中居氏によって性暴力を受けた疑いがあること、CXにおいて重大な人権侵害の問題が発生した可能性があることを十分に認識することができた。しかし、女性Aが同意して中居氏所有のマンションに行ったこと、中居氏が異なる認識を持っていること等を重視して、本事案を『プライベートな男女間のトラブル』と即断しており、こうした3名の誤った認識・評価が、CXにおける本事案への対応を誤る大きな要因となった」と書かれています。

青井実キャスター:
このあたりの経緯について、改めて見ていきます。
この「業務の延長線上」というのがありますけれども、週刊誌が「社員がセッティングしている会の延長」と報じ、2023年の5月のバーベキューについてフジテレビ側は「社員が誘った」としています。23年6月の食事会は「社員は誘っていない」というのがフジテレビのこれまでの見解だったわけです。
「問題の食事会がこのバーベキューの延長線上あるとまでは評価するに至っていません」というのがこれまでの経緯でした。
宮司愛海キャスター:
その点に関して、報告書の内容を紹介させてください。
「業務の延長線上における性暴力」
10ページの「本事案へのCX社員の関与」というところです。
「中居氏が女性Aを本事案の会合に誘った行為に、B氏やCX社員が関与した事実は認められなかった」とありますが、「B氏」というのは編成幹部です。

しかし、「バーベキューの会」については、「女性Aも、B氏らも、CXの業務として参加したと評価できる」と書かれています。
さらには「結論」として、「中居氏と女性Aとの関係性、両者の権力格差、CXにおけるタレントと社員との会食をめぐる業務実態などから、本事案は、CXの『業務の延長線上』における性暴力であったと認められる」と書かれていました。

中央大学法科大学院・野村教授:
女性と中居氏との間の関係が個人的な交際のもつれではないか、という認定が行われるのか、それとも、業務の一環として参加したことによって生じたトラブルなのか、ということによって、今回の事案は大きく認定が変わってくるわけですよね。
その中で一番のポイントとなるのは、この行為があった当日に関しては「誘った」という事実に「社員が関与したという事実はない」という、これまでの会社側の発表と同じ内容にはなっていますけれども、前段階でのバーベキューの会などでは、明らかに業務の一環としてそこに参加するような行為があったので、その延長線上で今回のことが起こったと認定せざるを得ないと。ここが非常に重要なポイントになってきますので、この点の第三者委員会の認識が、当初の会社側の初動とだいぶ違っているというところが、今回の掛け違いのポイントになっているんだと思います。
青井実キャスター:
それが業務の延長線で上であるという認識になったということですね。
非常に人権意識が乏しいと認定
宮司愛海キャスター:
そして「結論」の部分です。「少なくとも本事案を『プライベートの問題』と即断するのではなく、業務上の延長線上の行為である可能性を認識して本事案について必要な事実確認をしたうえで対応を検討し、意思決定を行うことが適切であった」と。
「女性Aに伝わり、『会社は守ってくれない』『会社から切り離された』として孤独感、孤立感を感じさせてたものであり、被害者ケア・救済の観点からも不十分な対応であった」と述べられています。
中央大学法科大学院・野村教授:
やはり会社側の初動に問題があったということは、強く指摘されているわけですね。
簡単に言えば、自分たちの判断ではもうプライベートな問題なんだというふうに即断してしまったところが、その後の対応を、本当に女性側に寄り添わない形になってしまったと。
ここは非常に人権意識が乏しいんだということに認定がつながっていくんだと思います。
青井実キャスター:
被害者ケア、救済の観点からも不十分な対応だったまさにその部分という、ことですね。
「重要な意思決定が同質性高い壮年男性のみで…驚き禁じえない」
宮司愛海キャスター:
その対応に関して13ページにあります。
「港社長ら3名は人権に関するリスクを重大な経営リスクとして認識し、有事における危機管理として対応すべきであったが、リスク認識・評価を誤り、会社の危機管理としての対処をしなかった」と指摘しています。

さらに「経営リスクの高い案件についての重要な意思決定が、編成ラインの3名のみ、編成の視点のみ、被害者と同じ女性が関与しない同質性の高い壮年男性のみで行われたことに驚きを禁じえない」と表現をしています。
青井キャスター:
このあたりの経緯について見ていきます。
2023年6月にトラブルが発生。フジテレビはこれまで「女性の意思を尊重し、極めて秘匿性の高い事案として、情報管理を行った」「幹部社員、役員など、社内では数名のみが知る状況で、社長への報告は2023年8月だった」としていました。
中央大学法科大学院・野村修也教授:
普通、会社ではコンプライアンス部署や内部統制の機能があると、このような事案が発生した場合、社長がこれを抱え込むのではなく、しっかりとしたシステムの中で管理していかなきゃいけないわけです。そのことができていなかった、と。
逆に言うと、会社の方でこの一部の人たちが問題処理できるというガバナンスになっていたこと自体を、厳しく指摘していることになるんだと思います。

宮司キャスター:
この(4)の小括では、幹部が中居氏サイドに立って行動したことについての指摘がなされています。CXの幹部が中居氏サイドに立ち、中居氏の利益のために動いたということが問題視されています。

青井実キャスター:
ここも含めて、経営の判断の体をなしていないということですが。
中央大学法科大学院・野村教授:
やはり自社の社員が非常に深刻な問題だと通報しているにもかかわらず、タレントさんの方に対しても配慮するような行為をとってしまっていたんですね。具体的には、例えば(中居氏に)弁護士を紹介するとか、そういう行為が指摘されているわけですけども、やはりタレントさんに対する寄り添いみたいなものが見え隠れすると、申し出ている方の女性社員としては大変なショックを受けることになりますので、この対応に対しても厳しく指摘されているということだと思います。
(「イット!」 3月31日放送より)