プラスチックごみから発生する「マイクロプラスチック」についてどの程度摂取すると人体に影響が出るのか、東京大学・酒井康行教授のチームが健康被害を引き起こす「量」の予測をするために研究を進めている。

東京大学・酒井康行教授
東京大学・酒井康行教授
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マイクロプラスチックとは、プラスチックごみが自然界で砕かれ分解されるなどして、5ミリ以下になったプラスチックの破片で、目に見えないほど小さくなったものは川や海の水中に流れ込んでいるほか、大気中にも浮遊しているとされている。

海中のマイクロプラスチックを取り込んだ魚を食べることや呼吸によって大気中のマイクロプラスチックを吸い込むことで脳や心臓など人体にも蓄積されることがわかっているが、健康にどのような影響が出るのか因果関係については正確にはわかっておらず現在も調査・研究が進められている。

こうした中、東京大学の酒井康行教授の研究チームは、マイクロプラスチックが動物の体内に侵入するメカニズムを解明し、体内にどのくらいのペースで蓄積されていくのかについての理論を構築した。

酒井教授によると、マイクロプラスチックは、食品や飲料により小腸から取り込まれるほか呼吸により肺胞から取り込まれるという。

そして、バクテリアなどの異物を細胞に取り込んで除去する免疫細胞「マクロファージ」が、体内に入ったマイクロプラスチックを異物と誤認して取り込み運搬することで、様々な臓器にマイクロプラスチックが蓄積されていくというメカニズムだ。

このメカニズムをもとにマイクロプラスチックはどのくらいの「速さ」でどのくらいの「量」が臓器に蓄積されていくのか、マウスの実験を用いて理論を作成し、その理論を人体に当てはめることで、人体に蓄積する「速度」や「量」の予測モデルを作ることに成功した。

さらに、ヒト(人)の培養細胞を用いて、この予測モデルで「マイクロプラスチックの蓄積量」と「培養細胞の炎症反応」との因果関係を導き出すことで、人体に蓄積すると健康被害を引き起こすマイクロプラスチックの『量』についても予測可能になる。

酒井教授のチームは、今後さらに理論の正確性を高めていくほか、マイクロプラスチックに含まれる添加物の影響・評価なども新たに研究を進める予定だ。

大塚隆広
大塚隆広

フジテレビ報道局社会部
1995年フジテレビ入社。カメラマン、社会部記者として都庁を2年、国土交通省を計8年間担当。ベルリン支局長、国際取材部デスクなどを歴任。
ドキュメントシリーズ『環境クライシス』を企画・プロデュースも継続。第1弾の2017年「環境クライシス〜沈みゆく大陸の環境難民〜」は同年のCOP23(ドイツ・ボン)で上映。2022年には「第64次 南極地域観測隊」に同行し南極大陸に132日間滞在し取材を行う。