1997年野村監督のもと日本一となったスローガンで日本一奪還へ

2年連続5位に終わっているヤクルトは、2025年のスローガン「捲土重来2025」を掲げて開幕を迎える。球団初となるファンの公募、そして2000件を超えた応募全てに高津臣吾監督も目を通し、スローガンを決定した。

もともと「捲土重来」というスローガンは、1996年の4位から巻き返して日本一に輝いた翌年、野村克也監督が掲げたものだった。野村イズムを引き継ぐ高津臣吾監督が、3年ぶり覇権奪還へ向けてファンの想いも乗せた「捲土重来2025」を胸に今シーズンの戦いに挑む。

逆境をバネに進化するサウスポー

高津監督も投手力が課題と公言しているように2024年の先発投手の成績は良いとは言えない。

ヤクルト投手陣2024年の成績
ヤクルト投手陣2024年の成績
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2025年もこの5人を中心に戦うことが想定される中、オフシーズンに特に目立ったのは、プロ5年目の山野太一(25)だ。
東北福祉大から2021年にドラフト2位で入団。同年4月のDeNA戦でプロ初先発を任されるも、2回途中7失点でマウンドを降りた。その後は左肩痛に悩まされ、2022年終了後に育成契約。リハビリを乗り越え、2023年7月に再び支配下登録され、直後の8月巨人戦で涙のプロ初勝利をあげた苦労人である。

山野は、沖縄キャンプ中の楽天との練習試合で、本塁打王や打点王などのタイトルを数々と取ってきた浅村栄斗(34)を打ち取った。この打席に、山野の進化が詰まっているように感じた。1球ごとに投球の間を変え、クイックでタイミングを外し、インコースへの強いストレート、そして最後は外角低めの100キロのカーブで緩急を生かし、浅村を手玉にとった。

石川雅規(45)、小川泰弘(34)らベテランが駆使する打者との駆け引きを参考にしたという山野は「クイックを使うことで打者も嫌だと思うし、浅村さんは普通に投げるだけでは打ち取れない。いろんな手段を使おうと考えた」と自分の投球を解説した。

多彩な変化球で打者を打ち取るのが山野のスタイルだが、ボールの緩急だけでなく、投げるまでの間やクイックなど、すべての動きに緩急をつけてレベルアップした山野がここに見られた。

さらに、スライダーやチェンジアップの強化に取り組み、監督・コーチだけでなく、山野自身も手応えを感じており「自分にとって濃い時間が過ごせている」と語っている。

プロ5年目の左腕・山野太一
プロ5年目の左腕・山野太一

4月1日からの広島との3連戦、ホーム開幕投手は球界最年長の石川雅規(45)が指名された。この3連戦では小川泰弘(34)、そして、山野も登板し、開幕ローテーション入りすることが予想される。山野には2025年のヤクルトの投手力向上のカギを握る大事な戦力として期待したい。

メジャー挑戦を発表した日本を代表するスラッガー・村上宗隆

2024年12月の契約更改で「日本でやる最後のシーズンになる。優勝して、しっかりした成績を残すことだけを考えている」と語った村上宗隆(25)。2021年と2022年にセ・リーグのMVP、2022年は打率.318、56本塁打、134打点で三冠王。村上の56本塁打は、1964年にレジェンド・王貞治氏がマークした55本塁打の記録を破り、日本人選手による日本プロ野球のシーズン最多本塁打記録を塗り替えた。

村上は、右肘のクリーニング手術の影響で二軍宮崎でのキャンプスタートとなったが、途中から沖縄の一軍キャンプに合流した。沖縄入りした翌日は一軍の休養日だったが、休日返上で汗を流した。ファンにもケガの影響はないとアピールするかのように力強いボールを投げ、バッティングでも快音を鳴らした。

今シーズンを最後にMLB挑戦を表明している村上宗隆
今シーズンを最後にMLB挑戦を表明している村上宗隆

翌日の一軍合流後は、誰よりも声を出し副キャプテンとしてチームを引っ張り、フリー打撃では場外弾を放つなど、チームも練習見学に訪れたファンも盛り上げ、順調な調整と最後の一年への想いが伝わった。

新加入の茂木栄五郎(31)の影響もあり、サードではなく、外野手用のグローブを身につけ外野の練習をするなど、チームのために新たなポジションにもチャレンジしている。

村上は、2025年の目標を聞かれると、個人の成績ではなく、「チームが日本一になるために頑張りたい」とヤクルトへのチーム愛を前面に出している。

残念ながら開幕直前の上半身のコンディション不良で、今季はシーズン途中からの出場となってしまうが、最後の一年にかける想いとオフシーズンの過ごし方を見ていると、2年連続5位の悔しさをバネに2024年以上の活躍で、チームをもう一度日本一へ導いてくれるのではないかと期待せずにはいられない。

(文:野村泰貴)

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