3月28日に開幕を迎えるプロ野球。昨季リーグ優勝を達成するもCSでDeNAに敗れた巨人はオフに新たな戦力を補強。
日米通算197勝の田中将大や、扇の要として期待される甲斐拓也、セーブ王のライデル・マルティネスといった大型補強が注目される中、リーグトップ防御率2.49を誇る巨人投手陣の中で先発ローテーションの1枠を勝ち取ったのは“戦力外”から獲得した新戦力だった。
「ものすごい球投げてる選手がいましたよ」
2月に「すぽると!」の取材で巨人の宮崎キャンプに来ていた解説者・内川聖一さんがブルペンを見て絶賛したのが、このオフDeNAから巨人に移籍、現在開幕3戦目(30日・ヤクルト戦)の先発を予定している石川達也(26)だった。
石川は横浜高校から法政大学を経て2020年ドラフト育成1位でDeNAに入団。2022年に支配下登録されると、主に左の中継ぎとしてチームに貢献。2023年には28試合に登板し防御率1.97をマーク。翌年2024年には初の開幕一軍スタートで15試合登板・防御率1.93を記録するも、5月下旬に登録抹消され、それ以降一軍に上がることはなかった。
オフには球団から育成再契約を打診されたが、石川はこれを断り、自由契約を選ぶと、その後、巨人が獲得を発表した。
石川達也:
これまでにないくらい充実しています。チームの雰囲気もいい。
春季キャンプが始まって1週間ほど経った頃、石川は笑顔でこう話していた。内川さんが絶賛するほど2月からすでに“キレキレ”の球を投げ込んでいた左腕は、慣れない新天地で黙々と練習に励むと、その後実戦でも着実に結果を残すことになる。

2月9日、初の実戦形式でライブBPに登場すると、打者8人との対戦で5奪三振。外角への強いストレートに、打者のタイミングを崩す武器のチェンジアップで圧倒し、首脳陣に猛アピールすると、18日、移籍後初の対外試合である古巣・DeNA戦では度会・井上を連続三振に切って取るなど2イニングを完璧に抑えた。
石川達也:
出したことを後悔させてやろうかなという気持ちでマウンドに上がりました。去年のこの時期に比べると仕上がり具合が全然違いますし、自分でも驚いているくらい状態がいい。
古巣への闘争心むき出しで熱い思いを語ると同時に、今シーズンの進化を予感させるコメント。その言葉通りその後も無失点ピッチングを継続し、首脳陣への猛アピールが続く。

すると3月17日、MLB開幕シリーズのプレシーズンゲームでのカブス戦で登板が回ってきた。
6回にマウンドに上がると、鈴木誠也をチェンジアップで空振り三振に仕留めるなど、3イニングを投げ被安打0、4奪三振。メジャーリーガー相手にも結果を残すと、試合後、阿部監督が石川の開幕ローテ入りを明言。自らの手でその役目を手繰り寄せてみせた。
そして、石川の投球は対戦したカブスの選手たちにもインパクトを残した。
鈴木誠也:
石川投手のチェンジアップがすごかった。
ピート・クローアームストロング:
6回から投げた左腕。とても印象的だった。あのピッチングには圧倒されたよ。
そう、鈴木が語ったこのチェンジアップこそが石川の武器である。
開幕前最後の登板であり、移籍後初先発となった3月23日のロッテ戦では、このチェンジアップで3人の打者から三振を奪った。中でも、左打者を苦手とする石川だが、この日左打者のポランコ相手にチェンジアップで三振を取っており、自身も「左に対してチェンジアップが効いたのがすごく収穫」と手ごたえを感じている。
石川のチェンジアップの特徴について、「すぽると!」解説者の岩隈久志さんはこう語った。
岩隈久志:
縦に使えていて、ストレートとチェンジアップが同じところから出てきている。バッターは「ストレートが来た」と思って振っているが、最後は完全に視界から消えている。
阿部監督もこのチェンジアップを評価しており、「素晴らしい武器を持っているので、ローテーションに入れています」と語るなど、この“魔球”あっての開幕3戦目抜擢であることを示した。
プロ入り後4年間で通算46登板も先発経験は1試合のみだった石川は、自身最多の92球を投げたロッテ戦後、こう意気込んだ。
石川達也:
投げたことない球数だったので疲労はきていますけど、開幕1週間前にこういう経験をできたのが大きい。チームで何十人もピッチャーがいる中で、6人の1人に選んでいただいた。責任感を持ってリリーバーに渡せればいいなと思います。
“戦力外”から開幕3戦目を自らの手でつかんだ石川。魔球チェンジアップを武器に新天地での戦いがいよいよ始まる。
(文:入江早雪)
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