JR・東急線の蒲田駅と京急線の蒲田駅の約800メートルを結ぶ、地下線路の整備を進めるため、東急電鉄と第三セクター「羽田エアポートライン」が2025年1月、営業構想と整備構想の認定をそれぞれ国土交通省に申請した。

東京西側から羽田空港へのアクセスが大幅向上

この路線は、2つの蒲田駅を結ぶため、「蒲蒲線」(新空港線)と呼ばれていている。

大田区の資料より
大田区の資料より
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2つの駅は、800メートルほど離れており、徒歩で10分以上かかるため開通すれば、都心方面からの直通運転が可能となり、中目黒駅から京急蒲田駅付近が約36分から約23分と約13分の短縮、自由が丘駅からは、現在の約37分から約15分と、約22分短縮される。

東急沿線の住民を中心に、東京の西側からの羽田空港へのアクセスが大幅に向上する。

蒲蒲線は大田区の“悲願”

蒲蒲線の構想は40年以上前に、大田区の基本構想のなかで出されていたもので、この計画は、大田区の悲願だった。

蒲田駅前周辺の工事風景 2025年1月撮影
蒲田駅前周辺の工事風景 2025年1月撮影

整備構想では約1250億円とされている費用を誰が負担するのかを調整することに長く時間がかかったが最終的に自治体が負担する総事業費の3分の1について、東京都が3、大田区が7負担することで合意されたのをきっかけに計画が前に進んだ。

大田区の資料より
大田区の資料より

2030年代の開業を目指し、需要予測では1日に約5.7万人が利用し、大田区にもたらす経済波及効果では、10年間で約5700億円、1都2県だと、1兆円を超すと試算されている。

今回の整備は、京急蒲田までの区間を先行して行うもので第2期整備区間として、京急蒲田駅から京急空港線の大鳥居駅付近に接続する計画となっているが、東急線と京急線は線路の幅が異なっているため、車輪の位置を動かせる車両「フリーゲージトレイン」の導入などが検討されているものの、三線軌や対面乗換など他の案も含めて議論が続けられている。

蒲田駅周辺で新しい街づくりも

アクセスが向上される蒲田駅周辺の新しい街づくりも進められている。

蒲田駅前に整備される地下駐輪場のイメージ
蒲田駅前に整備される地下駐輪場のイメージ

現在JR蒲田駅東口で工事が進められているのは、巨大な地下自転車駐車場の整備だ。

また、歩行者の回遊性を高めるため、JR蒲田駅の西口と東口、駅前広場を結ぶ自由通路を線路の上を通るかたちで整備する計画や駅舎、駅ビルや駅前周辺の建て替えなどを段階的に進めていくことなどの検討が行われている。

蒲蒲線の整備を担当する大田区の職員は、「鉄道ができることで、街はかわる利便性が向上することで子育て世代が住みやすい街になればと願っている」「歴史、昭和の風情が残る蒲田駅周辺に、新しいデザインが加わって、新旧の良いところをもった魅力ある街づくりを区民の皆さんと計画していきたい」と話す。

ちなみに、大田区観光協会が発行する蒲田今昔マップには、今回地下に整備される蒲蒲線のルートと同じ場所に、かつて線路が敷設されていたと紹介されている。戦後GHQが羽田空港を空軍基地として活用していた時代に、大量の物資や人員を輸送させるための軍用列車を走らせるために、新たに線路を敷設させたという。
【取材・執筆=フジテレビ社会部 大塚隆広】

大塚隆広
大塚隆広

フジテレビ報道局社会部
1995年フジテレビ入社。カメラマン、社会部記者として都庁を2年、国土交通省を計8年間担当。ベルリン支局長、国際取材部デスクなどを歴任。
ドキュメントシリーズ『環境クライシス』を企画・プロデュースも継続。第1弾の2017年「環境クライシス〜沈みゆく大陸の環境難民〜」は同年のCOP23(ドイツ・ボン)で上映。2022年には「第64次 南極地域観測隊」に同行し南極大陸に132日間滞在し取材を行う。