皮膚に赤い発疹などが現れる慢性の皮膚疾患「乾癬(かんせん)」。外見上の精神的負担からうつ病を発症する人も多いという。しかし近年は、個々の症状に合わせた“オーダーメイド治療”も可能になり、医師が受診を呼び掛けている。
免疫の異常で発症
皮膚に赤く盛り上がった発疹が生じる慢性の皮膚疾患「乾癬」。患者は日本に50~60万人いると言われている。
皮膚科医の福井大学病院・尾山徳孝医師は症状について「9割近くの人は最初に皮疹が生じる。赤みがあってその上に垢のようなフケのようなかさついたものが付着し、6~7割の人はかゆみを感じる」と説明する。
乾癬の原因ははっきりと分かっていないが、遺伝的要因と環境的要因によって免疫の異常が起こり、発症につながると考えられている。

異常な速さで角質が積み重なる
皮膚は角質層、表皮、真皮の3層構造となっていていて「通常は表皮の一番下の層だけが増殖して上に向かって垢となってはがれていく。そのサイクルが約1カ月くらいで、これをターンオーバーという。乾癬の人はこのターンオーバーが2週間くらいに短くなっている」と尾山医師。
乾癬の人は異常な速さで皮膚がつくられるため、皮膚の表面に角質が積み重なり表皮が厚くなる。
皮疹は全身のどの部位にも現れるが、衣服などの刺激を受けやすいひじやひざ、腰、尻、皮脂の多い頭皮などに出やすい特徴がある。一部の患者は関節炎を合併することもあるという。

乾癬の人のうつ病発症率は高い
さらに症状の特徴から、精神的な負担を感じる人も少なくないと尾山医師は話す。「頭皮に皮疹がある人はフケみたいなものが衣類に付くことを気にしたり、顔面にある人はもちろん、見えない場所であっても入浴の際に気になって温泉に行けない、といった悩みを抱えている人が多い。統計を取ると、乾癬の人のうつ病の発症率は高い」
ただ近年は治療のバリエーションが増え、患者一人一人に合わせた治療法を選択できるようになったといい「塗り薬やかゆみ止めの薬は基本で、どの乾癬患者にも出す。それを超える薬を併用することで相乗効果を得られる」とする。さらに「完治は難しい病気だが、コントロールができる治療のバリエーションが増えた」と話す。

“オーダーメイド”のような治療が可能に
尾山医師は「乾癬は人目に付かないよう隠しがちな病気のうちの一つだが、昔と違い治療方針は日進月歩で良くなり、治療をオーダーメイドでマネージメントできる時代になった。まだ医療機関を受診せず困っている人や、家族にそういう人がいる人は、まずは皮膚科専門医を受診して話を聞くだけでも心が休まるのではないか」と呼び掛ける。

「乾癬」は音の響きから「感染」すると思われることがあるが、感染はしない。周囲の人も病気について理解することが大切だ。
