北海道・小樽市のおたる水族館で2月4日と3月17日に、無料貸し出しのベビーカー2台が行方不明となった。誰でも使える仕組みが悪用された形で、施設側は返却を求めつつ、サービスの見直しも検討する方針だ。一方、スーパーでは買い物かごがたびたび持ち去られ、店側が対策に苦慮している問題もある。

水族館で無料貸し出しベビーカー行方不明に

イルカの展示やペンギンの散歩など、国内だけでなく海外の観光客にも人気の北海道・小樽市にある「おたる水族館」が23日、公式Xでこう訴えた。

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おたる水族館(公式Xへの投稿):
当館にて無料でお貸し出しているベビーカーが、2/4(日)と3/17(月)に2台が相次いで行方不明になりました。

無料貸し出しのベビーカーが相次いで持ち去られたというのだ。これについてSNSには「これはさすがに酷すぎる」「“借りパク”は善意を踏みにじる行為だ」と批判があがった。

「家族連れでも気軽に楽しんでほしい」と無料で貸し出しているベビーカーは、入口の正面に置かれていて、誰でも利用でき、職員に声を掛ける必要もない。寄贈された物もあるが、水族館が購入している物もあり、高いもので1台7万円以上するという。

子ども連れの人はこの問題についてどう思うのか街で聞いてみると、「(ベビーカーの)持ち運びは大変なので、貸してくれると荷物減るからありがたいサービスなのに。好意を踏みにじるようで、良くない」「返さない人の気持ちが分からない。モラルがないと思う」「今後どうなるか分からないが、貸し出ししてくれなくなる」といった意見が聞かれた。子どもからは「泥棒じゃん、もうそれ」という声もあがった。

水族館の職員も心を痛めていた。

おたる水族館担当者:
みなさんに利用してもらうために用意しているので、持って帰った人がいるなら残念。持っている方がいるなら、返してほしいと思います。

おたる水族館では改めて返却を呼び掛けるとともに、今後も持ち去りが続くようであればサービスの見直しも検討するという。

スーパーでは「買い物かご」の持ち去り被害

こうした問題は他にもある。

無料貸し出しで身近なものの一つ、スーパーの「買い物かご」だが、埼玉・吉川市にある「スーパーマルサン吉川店」の齋藤店長によると、買い物かごも持ち去られるケースがあるという。

スーパーマルサン吉川店 齋藤元宏店長:
3カ月とか半年に100個くらいの単位で無くなる。確かに、一般家庭で1つ2つかごがあると便利、洗濯物入れたり。罪悪感なくやっている人がいるんじゃないか。

持ち去られたことで、日曜日や特売日にかごが足りなくなることもあるという。一つ300円程度だがその都度買い足さなければならず、手間とコストもかさむという。

スーパーマルサン吉川店 齋藤元宏店長:
(清算後の)かごには「持ち出し禁止」と目立つように黄色いかごに赤い文字で(表示)。かごには手でぶら下げる取っ手がついているが、その取っ手があると持ちやすいから(清算後のかごの)取っ手は全部外している。

それでも、持って行かれる問題は解決していないという。

このような店と客の信頼関係で成り立っている善意のサービスを今後も続けるためには、どのような仕組みを作ればいいのか、企業の危機管理に詳しい大川さんに聞いた。

株式会社エイレックス危機管理コンサルタント 大川哲拓氏:
こうした問題があると、性善説に基づく企業サービスが萎縮することが懸念される。勿論「盗んだ人が悪い」前提ではあるが、企業側も犯罪を未然に防ぐ対策を取る必要がある。ハード面だと、盗難防止対策であらかじめお金を投入するデポジットの仕組み。マナー面では、モラルの啓発を粘り強く行う必要がある。

善意の行為が無くならないためにも、「これぐらいならいい」という感覚は持たないようにしなくてはいけない。
(「イット!」3月25日放送より)

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