渋谷区が進めている笹塚から代々木までの2.6キロの緑道の再整備をめぐり事業費が高額すぎるなどとして近隣住民から計画の見直しを求める声があがっている。
ベンチ一台あたり約400万円も
再整備が進められているのは、笹塚から代々木までにいたる「玉川上水旧水路緑道」で都市公園として近隣の住民に親しまれてきた場所だ。

区は、舗装や設備が老朽化したとして、南国風の植栽を活用し、石材やレンガなどを粉砕して固めた「テラゾ」と呼ばれるデザイン性の高い舗装材を使った歩道に再整備してイベントなども開催できる広場も設置するなどとしている。
事業費は約113億円
近隣住民が指摘するのが、テラゾ舗装にかかる費用とベンチ1台あたりのコストだ。

渋谷区が2025年3月に区議会に行った説明によると、テラゾ舗装は1平米あたり14万1000円。一般的に緑道で使われる舗装材は平米あたり4400円で、実に32倍のコストとなる。
ベンチは76基置く予定で、テラゾベンチ50台で1億8500万円、木製ベンチ26台で1億1000万円の予算が計上されているという。

テラゾベンチ1台あたり約370万円、木製ベンチ1台あたり約420万円という計算となる。
計画の見直しを求めるため、住民で結成された「渋谷区玉川上水緑道利用者の会」は、「玉川上水旧水路緑道を守る会」と連携して署名を集め、2月3027人分の署名を長谷部区長に届けた。
代表の高尾典子さんは「自然をよくするという計画であれば賛同しますが、イベントが中心になっていることに、とても不安を感じます。」と話す。
また事業費が高すぎる点についても、緑道全体のデザインと統一するために特注されたベンチが1台あたり約400万円の予算がついている点や、テラゾ舗装材にかかる高額な費用についても指摘、より自然を生かした形での補修にとどめることで、事業費を大幅に圧縮するよう求めている。

「渋谷区玉川上水緑道利用者の会」高尾典子さんは「テラゾ舗装材は、コストが高いだけでなく、重機で吊り上げないと補修できないなどメンテナンスもお金がかかる。廃材を使った環境にやさしい材料だといわれても、四国から取り寄せている時点でロジックが破綻している。また定例会では廃材でのリサイクル部分は7%であると長谷部区長は答弁しました」と話す。
渋谷区は、ベンチ1台あたり400万円以上となっている点について、「ベンチの個々の価格が決定しているものではありません。緑道再整備に使用するベンチは、将来にわたり地域の人々が愛着や誇りをもって親しんでいただけるよう、園路、広場、遊び場、植栽、農園なども含め、緑道全体を統一的な機能や意匠となるようデザインしており、緑道利用者それぞれの利用形態を考慮し、設置場所に応じた最適な形状や大きさとなるよう、個別に製作する予定です。そのため、資材メーカーが販売している汎用品ではないことから、一般的な価格として単純比較は難しいですが、それぞれ適正な価格設定に努めてまいります。また、ベンチの素材は、舗装材と同じテラゾや木製とする予定です」とホームページ上で回答している。
また、テラゾ舗装材を選んだ理由については、「緑道再整備後の園路(主動線)で使用するテラゾ舗装は、車いすやベビーカーが通行しやすい平坦性を有し、管理車両の耐荷 重を想定した鉄筋コンクリート製となっているため、強度と耐久性に問題はありません。さらに、可能な限り国内のコンクリートやレンガ、陶器などの解体素材や廃棄材をテラゾ舗装の表面の骨材として用いることで、循環型社会の実現に配慮しています。地域の大変貴重な公共空間で、ランドマークとなるデザインを採用することや、持続可能な開発や環境に配慮することは、このエリアの価値向上、そしてシティプライドの醸成に寄与すると考えています」としている。
渋谷区の2025年度予算は、21日に渋谷区本会議で可決された。
工事は、2024年8月から段階的に始まっているが、住民たちの反対する声も徐々に強まっている。渋谷区は、情報発信拠点を設置するなどして引き続き住民に対して理解を求めていく方針だ。