修学旅行の夜といえば…“枕投げ”、という人も多いのでは?福井の温泉旅館では、全国から170人の学生が参加して枕投げの選手権大会が開かれた。先生の目を盗む必要もなく、正々堂々とした熱い戦いが繰り広げられた。
“生き残る”には飛んで来る枕を避けるのみ
3月5日、あわら温泉の旅館の大広間に集まっていたのは、浴衣にゼッケン姿の若者たち。北陸3県を中心に大学や短大、専門学校から学生170人以上が参加した「学生まくら投げ選手権」。

まくら投げは10年ほど前に静岡県で誕生し、全国大会も行われているスポーツ競技でもある。1チーム8人で、2分間に枕をより多くの選手に当てたチームの勝ち。各チーム1人いる大将に枕を当てたチームはその時点で勝ちが決まる。枕をキャッチしたり、枕で枕を叩き落としたりする行為は禁止。勝ち残るには飛んで来る枕をひたすら避けるのみだ。

必殺技は「先生が来たぞコール」
試合は選手たちが掛け布団をかけて畳に寝ている状態からスタートする。開始のホイッスルの合図とともに勢いよく起き上がり、一斉に枕を投げ始めた。スナップを効かせ回転しながら乱れ飛ぶ枕を避けながら、相手チームの選手を狙い撃ち。

1チーム1人、“リベロ”もいて、掛け布団で仲間を守りつつ飛び交う枕を集める重要な役目も担う。戦略とチームワークが試される。

メガホンをもった学生が「先生が来たぞー!」と叫んだ。これが発令されると、相手チームは10秒間動いてはならず、その間に相手陣地から枕を回収して一気に反撃が可能になる。試合中に1回だけ使える一発逆転の“必殺技”だ。

若年層の取り込みに期待
あわら温泉開湯140周年事業の一環として2024年に初めて開かれた「学生まくら投げ選手権」。200人を超す学生が参加する人気ぶりだったことから、2025年は北陸新幹線県内開業1周年を記念して開かれた。

芦原温泉旅館協同組合の奥村紘生委員長は「大学生にあわら温泉で、温泉でも枕投げでも熱くなって“いい場所だ”と思ってもらい、家族や友人、大切な人と一緒に再び訪れてもらいたいという思い」で開催したと話す。

大阪から参加した学生は「あわらの人は温かくて、いいまちだと思った」「人が温かいからこそ、戦いもこんなに盛り上がった」「こんなにいい場所を用意してもらって、来て良かった。終わった後の温泉が楽しみ」などと話していた。

優勝チームには、若狭牛と優勝トロフィーに見立てた風呂桶が贈られ、選手権のためにあわら温泉の旅館を利用する人には、宿泊割引の特典もある。全国の学生による熱き戦い「まくら投げ」。温泉地が若い層を取り込んでいく一つの戦略になるかもしれない。