国民民主党の勢いはどこまで続くのか。「対決より解決」という党の姿勢に変化はあったのか。「BSフジLIVE プライムニュース」では玉木雄一郎代表を迎え、国民民主党の現状と今後の動きについて聞いた。
“所得制限なしで非課税枠150万円”なら賛成する
長野美郷キャスター:
国民民主党は「対決より解決」というスローガンを掲げて与党との協議に臨んできた。しかし103万円の壁の引き上げをめぐり溝が埋まらず、結局予算案には賛成せず。「解決より対決」の姿勢に変わったのか。

玉木雄一郎 国民民主党代表:
「対決より解決」は変わっていない。だが大きな解決策に至る過程では、解決のための対決も必要。衆院通過時点における予算案は我々が満足できるレベルに到達しなかったということで反対したが、これで終わる話ではない。引き続き178万円を目指していくことは変わらない。私達は議席も少なくまだまだ力不足。交渉も下手だというご批判もいただいている。反省し、率直にお詫びしなければいけない。ただ諦めずに目標に向かって頑張っていきたい。
反町理キャスター:
今回の自公案での予算が1.2兆円。「同じ1.2兆円があれば、非課税枠140万円ぐらいまでなら所得制限なしでできるはずだった、その案なら国民民主として拒否するのは難しかった」という話を玉木さんはされている。その話について、この番組で自民の小野寺五典政調会長に聞いたところ「そういう考えがあるならもっと早く耳打ちしてくれたら自公で整えたのに」との答えだった。

玉木雄一郎 国民民主党代表:
増税とか歳出カットといった新たな財源確保措置をせずにどれぐらいの財源を出せるか、という具体的な数字をいつまでも出していただけなかった。これは全ての情報を持っている政府与党にしかわからない。だからこちらも、それに見合う対案が出せなかった。今回、せっかく高額療養費制度の件を見直すためにもう一度予算案を衆議院に戻すのだから、所得制限なしで非課税枠を150万円にする修正をかけてほしい。賛成しますから。
玉木氏「物価高騰を甘く見ないほうがいい」
長野美郷キャスター:
3月7日夕方に石破総理は高額療養費制度の見直しに関してがん患者団体と面会し、記者団のインタビューに応じた。見直しの実施を見合わせる決定。玉木さんはどう見るか。
玉木雄一郎 国民民主党代表:
方向性自体は評価したいが、ならばなぜ衆議院の段階でやらないのか。それに現役世代の社会保険料負担の軽減をどうしていくかを含めた対案がない。単なる凍結・先送りでは意味がない。医療費全体をどのようにコントロールしていくのかが併せて示されておらず、申し訳ないが極めて無責任だと思う。怒りがわき、Xでの発信はちょっと過激な言葉になってしまったが。

反町理キャスター:
この先送りで歳出が余計に発生する。予算案を再修正して衆議院に戻すことになる?
玉木雄一郎 国民民主党代表:
戻さなければいけない。「回付」という手続きで、今度は賛成・反対ではなく修正部分に対して同意・不同意の採決を取る。今回、不同意にはならないと思うが。ただ、新たに必要となる105億円がどういう内容になるのか、週明けにも説明してもらわなければいけない。それに、自民・公明・維新の衆議院の先生方は一度OKしているのに、同じ政党の参議院の人がダメだと騒いで戻ってきたものの修正部分を認めるのか。特に予算に関しては憲法上衆議院の優越が認められているのに。選挙が近いから、ということで果たしてよいのかと問いかけたい。矜持の問題。
反町理キャスター:
国民民主はこの修正には「同意」する可能性がある。
玉木雄一郎 国民民主党代表:
そう。せっかく高額療養費制度というきっかけがあり、もう一度予算をきちんと審議する機会ができた。この際できるだけ広範な民意・政党の合意を得られるような丁寧な手続きを取った方がいいと思う。

長野美郷キャスター:
ガソリン暫定税率廃止をめぐっては、立憲と国民民主が来年度(2025年度)からの廃止を求める法案を共同で提出したが、衆院で否決。2026年度からの廃止を求める維新は与野党5党の協議体の設置を提案したが、立憲と国民民主が参加に難色を示し、自民・公明と3党で協議していく意向を表明した。玉木さんはXで維新・吉村代表に対し「来年度からガソリン減税を実施することが前提であれば(必ずしも4月からでなくても結構です)喜んで御党との協議に応じます」と投稿した。
玉木雄一郎 国民民主党代表:
立憲・国民と維新の政調会長が話したときに廃止法案を3党で出そうとなった。だが維新の青柳政調会長が党に持ち帰ったら、予算に賛成すると決めているのに歳入面で違うことはできないと言われた。そして「来年度から」はパフォーマンスだと言い始めた。地方税についての理屈も財務省の説明そのもの、役所の論理そのまま。誰のレクを聞いたのかなという感じがする。
反町理キャスター:
なるほど。
玉木雄一郎 国民民主党代表:
地方では車を使わなければ病院にもスーパーマーケットにも行けない。こうした生活の苦しさ、SOSに寄り添うことが本当の現実の政治だと私は思う。物価高騰をあまり甘く見ないほうがいい。トランプ政権の政策によりアメリカから世界中にインフレが輸出される可能性もある。効果的な政策を打たなければ国民生活は本当に困窮していく。例えばトリガー条項の凍結を解除することもできる。1兆円以上の財源があるから、暫定税率の満額である1リットルあたり25円10銭ではなくても下げることはできる。
“自分が総理大臣になったら”を常に意識
長野美郷キャスター:
国民民主党の勢いは本物か。2025年に入って行われた選挙では、北九州市議選の小倉北区選挙区で国民民主の新人が自民の候補を抑えトップ当選。横浜市南区の市議補選では国民民主の新人候補が立憲の新人候補に圧倒的な差をつけて勝利した。

反町理キャスター:
街頭に出て演説するときの雰囲気は、去年の総選挙と比べてどうか。
玉木雄一郎 国民民主党代表:
総選挙のときより多くの方が集まっているかもしれない。ただ我々に対する期待というより、それだけ物価高騰で苦しいというSOSの声の表れなのだと思う。議席を増やしたことに慢心せず、何が我々に求められているのかをしっかり受けとめてやっていかなければ、と捉えている。

長野美郷キャスター:
玉木さんは夏の参院選挙に向け「単独で予算を伴う法案提出権を得られる参議院での21議席(非改選を含む)を目指して臨んでいきたい」と述べた。準備の状況は。
玉木雄一郎 国民民主党代表:
まだまだ。2024年の衆院選の反省としてお詫び申し上げなければいけないのは、名簿の人数が足りずに3議席を他党に譲ることになってしまったこと。絶対にやってはいけない。しっかり候補者を立てて受け皿を作ることが公党としての責任。

反町理キャスター:
1人区、複数人区それぞれでの皮算用はどうか。
玉木雄一郎 国民民主党代表:
まだわからない。ただ、過去の参院選を見ると選挙期間が長い。期間中にもトレンドがすごく変わる。2010年の菅直人政権のときの参院選では、菅さんの消費税発言で毎日票が減っていくのが手に取るようにわかった。投票箱の蓋が閉まるまで油断せず、戦略を練って最後の最後までしっかり盛り上げていきたい。
反町理キャスター:
比例代表での獲得議席を少なめに8と見ても、非改選の議席含め21という数字が見えるのでは。
玉木雄一郎 国民民主党代表:
ちゃんと取れれば。ただ参院選はやはり難しい。衆議院と異なり全県で1区となるので、規模もお金もやはりそれなりにかかってしまう。また衆議院では、選挙区では無理でも比例復活があるからちょっと手を挙げてみようか、ということもあるが、参議院の1人区には比例復活がない。その意味で「ダメ元」で出る形にはならず、本当に人生をかけて取り組んでいくことになる。より重く難しい。

長野美郷キャスター:
玉木さんは川崎で行われたタウンミーティングで外交に積極的な理由を問われ、一つ目は「国政政党のトップとして外交は重要」そして二つ目として「総理大臣になるため」と発言。総理大臣を目指している?
玉木雄一郎 国民民主党代表:
私に限らず、国政政党の代表を務めている人はトップリーダーとなってこの国を率いていきたいという意思と能力を示していくことが政党への支持の大きな動機づけにもなる。政策においても内外への発信でも、自分が総理大臣になったらどうするかを常に意識して気をつけているつもり。
反町理キャスター:
総理を意識する上で、やはり外交が重要になると。
玉木雄一郎 国民民主党代表:
今大きく世界が変化している。日米同盟はあるが、日本はこの安全保障環境の中でアメリカの支援・協力なしに自分の国を自分で守れるのか。もう一度フラットに考えてみる必要が出てきている。特に北東アジアの安全保障環境は厳しい。民主主義かどうかは別として、アメリカ、中国、ロシアという世界の三つの大国がその力をもとに世界の実情を決めていくとき、それらとどういう関係を結び、どういう外交・安全保障を展開していくのか。そろそろ思考停止に陥らず真剣に考えていかなければいけない。
(「BSフジLIVEプライムニュース」3月7日放送)