トロっと濃厚!「熟成カンパチ」
鹿児島・鹿屋の特産品の一つにカンパチがある。コリコリとした食感が特色のカンパチだが、大手百貨店の通販サイトなどで、トロっとした食感に濃厚な味わいの「熟成カンパチ」が人気を博している。地元・鹿屋の料理人が約6年もの年月をかけて開発した逸品だ。
こだわりのフライドポテトにびっくり
噂のカンパチを生み出したのは鹿屋市の料理人、蜂谷拓広さん。まずは、蜂谷さんに料理を作ってもらった。
最初に見せてくれたのは沖縄の郷土菓子、サーターアンダギーのような丸い“物体”。実はこれ揚げる前のフライドポテトだという。2日くらいかけて仕込むそうで、デンプン量をはかるところから始まり全部で約6工程と、一般的なフライドポテトとはずいぶん印象が異なる。

見た目にもびっくりしたが食べてさらにびっくり!外はサクサク、中はトロトロ、食べたことのないフライドポテトだった。
「ちょっと違うアプローチで料理したいなと。食感を変えたりとか、そういったことをどうやったらできるかなと考えたり、温度帯を研究したり。そういったタイプ」と、蜂谷さんは話す。

きっかけは漁師の一言から
研究者のような料理人蜂谷さんが約6年という歳月をかけて作りあげたのが今回紹介する「熟成カンパチ」だ。
きっかけは、漁師の「熟成した刺身が一番うんめど(おいしいぞ)」という言葉だった。魚の「熟成」とは、新鮮な魚をすぐ食べるのではなく、冷蔵庫でしばらく寝かせることだ。古くからある方法だが、温度は何度で、湿度は何%で、熟成期間はどれくらいが一番おいしいのか?蜂谷さんの探究心に火が付いた。

蜂谷さんは湿度と温度帯を1℃、1、2%ずつずらし、自分でテイスティングしながら記録をとり続けた。約2年もの試行錯誤を経てついに、ある温度と湿度で6日間寝かせるのが一番おいしいことを突き止めた。もちろん温度と湿度のデータは“企業秘密”だ。

そして、おいしさのメカニズムを探る中で、魚の身をあえて空気に触れさせることが必要だということも発見した。
空気に触れさせ、うまみを引き出すこの製法に、ワインのデキャンタージュにヒントを得て「デキャンタージュ・メソッド」と名付けた蜂谷さん。おいしさを科学的に立証するため、鹿児島大学の水産学部に成分分析を依頼すると、うまみ成分であるグルタミン酸は倍近くになっていることがわかった。

そこから、鹿児島大学も開発に加わり、改良を加えることさらに数年。蜂谷さんはカンパチの他に、ブリやマダイも熟成させ「鹿児島で生まれた熟成の刺身」シリーズを完成させた。


冷凍の真空パックで、流水で解凍すればすぐ食べられる手軽さとおいしさで、大手百貨店のネットでも販売中だ。
また、地元・鹿屋で蜂谷さんの作った熟成カンパチを食べるなら、2月23日にリニューアルオープンした「この路 鹿屋の海と釜炊きご飯の店」もオススメだ。
熟成カンパチと一緒に炊きたてのかまどご飯をほおばったお客さんは「甘くてめっちゃおいしいです。コリコリかな?と思ったが結構柔らかくて、食べやすい」「普段食べているカンパチとはちょっと違う感じがする。うまみがギュッと詰まっている感じ」と、他のカンパチと明らかに違う“うまみ”について話す。

熟成カンパチ単品は1100円、熟成カンパチ極み定食は釜炊きご飯とあら汁、おかずなどが付いて1700円だ。
蜂谷さんの熟成カンパチはその技術が認められ、優れた「ふるさとの味」を表彰するコンクールで農林水産大臣賞を受賞した。

「何度もやめようとは思った」と振り返る蜂谷さん。賞に輝いても「『今からかな』というところではある」と話す。「物価高とかいろんなことがあって、なかなか一気にというわけにはいっていないが、少しずつ確実に進んでいる状態なので、これからも続けていきたい」と、さらに研究を続ける予定だ。
鹿児島から誕生した熟成の味。今後さらに、どんな熟成をみせてくれるか、楽しみだ。
(鹿児島テレビ)