青森・八戸市内にある「みちのく記念病院」。

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2023年3月に病院内で起きた事件を隠蔽しようとしたとして逮捕されたのは、兄で元院長の石山隆容疑者(61)と弟の医師の石山哲容疑者(60)です。

当時、弟の哲容疑者が主治医だった、認知症の男性患者(当時73)が拘束されていた状態で寝ていたところ、血を流しているのが見つかり、その後、死亡が確認されました。

“ウソの死因”書くよう指示か

犯人は、同じ病室に入院していた男(当時57)。歯ブラシで頭を数回突き刺すなどして男性を殺害しました。

ところが、男性の遺族に渡された死亡診断書には、なぜか「肺炎」の2文字がありました。

その後、病院関係者から警察に通報があり、殺人事件と判明。
後日、司法解剖の結果、本当の死因は「頭部や顔面の損傷」であることが分かりました。

警察によると事件当時、石山容疑者ら2人は夜間のため病院には不在で、報告を受けてウソの死因を書くよう指示したとみられることが分かりました。
さらに、死亡診断書に名前があった80代の男性医師は事件当時、認知症の疑いでこの病院に入院していたことも判明。

そして警察が事件までの2年間のうち、今回の事件の死亡診断書を書いた同じ男性医師名義の診断書を200人分以上押収したところ、7割を超える死因が「肺炎」となっていたことが新たに分かりました。
この医師の名前を悪用して繰り返しウソの診断書を作らせていた可能性…。
また、石山容疑者らは事件後、男性患者を刺して殺害した男を病院の閉鎖病棟に「医療保護入院」させ、事件発覚を逃れようとした可能性も浮上しています。

石山容疑者兄弟が実権握る病院の実態

「めざまし8」は、この病院に知人が入院していた人や元病院職員に話を聞きました。

認知症や依存症の患者、県外も含めて転院患者などを受け入れ、地域医療の“最後のとりで”とも呼ばれている一方で…。
知人が15年ほど前にみちのく記念病院に入院したという人は、当時、病院の状況を聞き、あ然としたといいます。

NPO法人やすらぎ福祉会 山日誠一理事長:
とにかく看護師たちがすごい留守だっていうか、呼んでも来ないとか、そういうのはかなりあったみたいで。
(トイレに行くため)ブザー鳴らしても来ないし、垂れ流しっていうかベッドの上とか車椅子に乗ったまま、我慢できなくて。

まともな医療を受けられない状態もあったといいます。さらに、こんな証言も…。

元病院職員:
例えば6人部屋だと、8人は少なくても入っているな。ベット8つ。4人部屋だと6つぐらい入るのかな。びっちり入れて。
様々な監査くる。書類みたいなものをわーっと必死に隠すんだ。ベットも抜いて別なところ入れたり。
医者は何人いたのかな。医者は3人ぐらい頼んでいたのかな。その部屋を、病室をその人たちの個人個人の部屋にしてたんだよ。
亡くなる人はとにかく多かった。こんなに多いと思わなかったな。肺炎なのか、亡くなるのは分からんけど、暇なく亡くなる人いましたよ。

容疑者である兄弟の父が開設したこの病院。引き継いだ後、実権は2人が握り続けていたといいます。

知人が入院していた近隣住民:
ベンツに乗って、奥さんも。奥さんは別のに乗って。だって弟の方も御殿を建ててたでしょ。

――病院では2人(石山容疑者兄弟)が絶対?
元病院職員:

そうそう、絶対。もう絶対。
物を買うとか、人に許可をもらうのに、兄・隆さん(容疑者)の許可貰わなきゃなんない。
あそこは右って言えば右向かないといけない。ちょっとでも逆らえば「辞めたければ、辞めてもいいよ」って言うから。

事件を隠そうとした疑いで逮捕された2人。捜査関係者によると、今回の容疑について2人は否認しているということです。

“ウソの診断書”常態化していた可能性

「めざまし8」のスタジオでは、元埼玉県警捜査一課警部補の佐々木成三氏、医療安全に詳しい弘前大学の大徳和之教授に解説していただきました。

弘前大学 大徳和之教授
弘前大学 大徳和之教授

MC 谷原章介:
今回の死亡診断書は記入が少なく、死因「肺炎」の一言と発病から死亡までの期間「1日間」と書かれていますが、こういう書き方は一般的なものなのでしょうか?

弘前大学 大徳和之教授:
何も知らない方がこれだけ見ると肺炎で死亡したんだなと分かるんですけれども、今回の事件は、外傷に異常がある方。ということは、警察に届け出なければいけないということが医師法で決まっていまして、その時は「死亡診断書」ではなくて「死体検案書」を提出しなければいけないということが一つ。
また、「死亡診断書」を書くには、医師が自ら診断しなければいけないということが決まっています。認知症の先生が実際にこれを見て書いたかというとすごく疑問が残るということです。
これまで、別の原因でお亡くなりになった方もいたと思うんですけど、それでも今回の診断書と同じようなケースが、まかり通ってきたというバックグラウンドがあるんじゃないかと思っています。

元埼玉県警捜査一課警部補 佐々木成三氏
元埼玉県警捜査一課警部補 佐々木成三氏

元埼玉県警捜査一課警部補 佐々木成三氏:
「死亡診断書」と「死体検案書」の違いというのは、異常の有無が、医師が判断した場合警察に届けて警察が検視を行うんですね。検視もしくは事件の疑いがある場合は司法解剖。そこでどういった死因なのかを特定しなければいけないのですが、「死亡診断書」が正規に通ると警察が認知できないんです。今回、内部からの連絡がなければ、これがずっと「死亡診断書」のまま火葬されてしまって警察としても捜査が難しくなっていたという状況が、大徳先生がおっしゃったようにまかり通っていた可能性があるなと思います。
(「めざまし8」2月21日放送より)