石川テレビが国際協力機構・JICAとタッグを組み、被災地で奮闘する外国人の姿を追った「共創プロジェクト」企画。今回取材したのは水害が多いベトナムの村で農業を営む女性。
2024年9月の台風で甚大な被害を受けたが、何度も苦境を乗り越え復興に努めている。
能登の現状とも重なるベトナムの被災地。女性の思いを取材した。
ベトナムで暮らす日本人女性

ベトナムの首都、ハノイから車で2時間。
ハイズオン省のはずれにある小さな村で暮らす山崎愛莉さん。
日本語教師をしていた山崎さんは、神戸で夫のファム・ヴァン・ニャンさんと出会った。
2人は結婚後も日本で暮らしていたが、新型コロナのまん延を機に、ニャンさんの実家に移住した。

実家がある村はライチの一大産地。
自身もライチ農家となった山崎さんは、村の環境に戸惑う日々が続いたと話す。
山崎愛莉さん:
スーパーもないし、水道もこないだ通ったばかりと言われてえ、大丈夫?って。
(夫は)こんな所出身だったんだとびっくりですよね
夫・ニャンさん:
なかなか自分の出身地を言えなかった。「何もない村」と言われて...。

川の中州に位置する村は昔から水害が多発。
農業以外の仕事はほとんどないため、住民は貧しい生活を強いられていた。
山崎愛莉さん:
私もこの村のためにできることあるかなと思って「地域貢献の事業」を始めました。
ベトナムで始めた地域貢献事業

山崎さん夫妻は3年前、「ララライチ」という会社を設立。
自宅の作業場に村の人を招いて、日本企業から受けた仕事を提供している。
山崎愛莉さん:
卒業式やセレモニーで胸につけるリボンをここで作ってまた日本に送り返しています。
今では35人の住民が作ってくれています。
住民:
このリボンきれいでしょ。農村でも収入を得てより安定した生活が送れるよう、2人が仕事を与えてくれたんです。日本人に感謝しています。
さらに、山崎さんはライチ狩り体験を盛り込んだ、村の観光ツアーも企画。
村を応援する日本人のファンも、次第に増えたという。
山崎愛莉さん:
(日本人向けのガイド)とにかく貧しいので村の人を少しでも。ちょっとでも救いたくて...。
村を襲った台風

去年9月、台風「ヤギ」がベトナムを直撃した。
半年近くたった今も、台風の爪痕は残ったまま。
幼稚園や村役場は台風の影響で屋根がめくれてしまったが、
修復に手が回らず、資金も足りないため、そのままの状態になっていた。
村の生活を支えるライチの畑の状況は、さらに深刻だった。
山崎愛莉さん:
もともとライチの木は緑ですけど、茶色くなったのが全部枯れちゃったライチですね。
生き残ったライチの木は、わずか4割。
新たに苗を植えても、再び実をつけるまで3~4年かかるそうだ。

能登と重なる「あきらめない姿」
先の見えない壊滅的な被害にも関わらず、住民たちは、次の一手を打っていた。
それが「バナナの苗」だった。

夫・ニャンさん:
バナナだと1年たてばすぐ実がなってお金になるので。この村はもともとみんなお金持ってないからあきらめるという言葉はない。
山崎さん夫妻は友人の協力を得てクラウドファンディングに挑戦。
250万円を超える資金、そしてたくさんの励ましの声が日本から寄せられた。
集まった資金でライチの苗を購入し、地域の農家に配っている。
地元の農家:
苗を買うお金がなかったのですが、こうしてもらえるのはとてもうれしいです。

山崎さんは「ライチの花がこうやって実をつけようとしているのを見るとうれしい」と話す。
何度困難に見舞われてもあきらめず一歩を踏み出す。
地域のため奮闘するその姿に国境はない。
山崎さんは最後に能登に住む人にメッセージをくれた。

山崎愛莉さん:
私ももう一度、一から頑張るので、ぜひ一緒にこの逆境を乗り越えましょう。
(石川テレビ)