サクサクとした衣の食感と素材を生かした美味しさ。目の前で揚げられた天ぷらが次々に提供される。名物の「いかの塩辛」と良心的な価格設定で人気の「天麩羅処ひらお」。福岡の人気店が挑む新たな戦略とは。
創業40年を超える天麩羅処ひらお。現在は、福岡市を中心に全7店舗を展開している。その味を求めて国内外から1日4000人以上が店の暖簾をくぐる。

初潜入「天麩羅処ひらお」新工場
広く愛される理由の1つが味へのこだわりだ。どこで食べても同じ味を提供できるようにと福岡市の貝塚店に隣接する約100平方メートルの工場で、7店舗分の食材の下準備や名物のいかの塩辛の製造を行っている。

コロナ禍も乗り越え、長く愛され続けている天麩羅処ひらおだが、最大の課題は、工場の生産能力が限界に達し、これ以上、店舗数を増やせないこと。そこで新工場建設に踏み切った。
福岡都市圏に位置する須恵町に建設された新工場と新店舗。新工場の面積は、現在の工場の8倍以上にあたる830平方メートル。今後、天麩羅処ひらおは、どう変わっていくのか?創業以来、一般社員にも見せたことがないという工場内部。「カメラ撮影は今回が最初で最後」と言われる中、取材班は足を踏み入れた。

まず、目を引くのが、中央に並ぶ3列のシンク。全てイカ専用のシンクだ。この場所で名物「いかの塩辛」のイカを手作業で捌いているという。その周りには、野菜カット室など、天ぷら食材の下準備をする部屋が設置されている。

新設備で「いかの塩辛」旨味増す
工場内で一際、存在感を放つのが、新工場設立に伴い導入された3台の機械。「ヒラオフーズ」主任の青柳汐海さんが“秘密兵器”と語る『冷凍イカを解凍する機械』だ。蒸気を使い、急速低温解凍ができる。「今までは、自然解凍で最後に流水する時に、旨味が逃げたり、解凍にムラができてしまっていたが、この機械を使うと蒸気で一気に均等に圧をかけて解凍できるので、イカの旨味が一層、出てくるような仕上がりになる」と青柳さんは自信をみせる。

今後、ひらお名物の「いかの塩辛」が、更に美味しく生産できるというのだ。味付けは、「コツがあるが、企業秘密」。「“秘密の部屋”で調味して、専用の冷蔵庫で冷凍する」と頑なだった。調味する部屋の場所や工程は、もちろん非公開だ。

「ふるさと納税」にも新たに対応
新工場には、「新たな部屋」が設置されていた。ふるさと納税の『いかの塩辛』の冷凍庫だ。これまで福岡市やふるさと納税サイトなどから、「いかの塩辛」の出品依頼を受けていたが、現在の工場では、生産能力が追い付かず、出品を断ってきた経緯がある。しかし今回、新工場の建設で生産能力が大幅アップしたことに加え、大量に冷凍保存できるようになったことから、新工場がある須恵町のふるさと納税に出品することを決めたという。

これには、須恵町の平松秀一町長も「福岡市で人気のひらおが、その拠点を須恵町に作っていただき、『これで町が変わるよね』と今でもウキウキしています」と喜びを隠せない。既に須恵町では、2024年11月から、ふるさと納税で3種類の「いかの塩辛」の食べ比べセットなどの先行予約を開始している。発送は2月下旬からの予定だが、反響が大きく、「もう400万円以上の申し込みがあっている状況です」と平松町長の期待も大きく膨らむ。

須恵町では、ふるさと納税の税収が伸び悩んでいて、「いかの塩辛」が大きな起爆剤になることを関係者は望んでいる。「今年は天麩羅処ひらおをメインにしながら、相乗効果でいろいろな人から申し出がでるようにしていきたい。本当に、ありがたいです」と平松町長は、改めて感謝の言葉を口にした。

自治体にも大きな恩恵をもたらすと期待されている天麩羅処ひらお。工場新設後の1店舗目となる「須恵店」は、2025年3月15日にオープンを予定している。
(テレビ西日本)