コメの価格が高騰する中、江藤農水相は14日、21万tの備蓄米を放出すると発表した。流通の円滑化を目的とした放出は初めてで、農業関係者などからは期待の声が上がっている。コメの生産地・新潟でその反応を取材した。
生産コスト上昇「農家も消費者も難しい時代」
新潟県阿賀野市笹神地区で14日に行われていたのは、種もみの消毒作業。2025年産米の田植えに向け準備が進められている。

この施設で今年、消毒作業を行う予定の45tの種もみからは約7500tのコメが収穫されるということだが、この種もみの値段も上がっているという。
JA新潟かがやきの須田勇治さんは「農家さんにとっても難しいし、消費者側の目線に立つとコメの値段も高くなっているので、難しい時代に入っている」と話す。
肥料などの値段も高騰していて、種もみ5kgあたり300円ほど高くなっている。
流通円滑化へ…備蓄米放出を決定
コメの生産をめぐる状況が厳しさを増し、今後も生産コストの上昇が見込まれる中、江藤農水相は「流通が滞っているスタックしている、この状況をなんとしても改善したい」として、去年から続くコメの価格高騰に対し、21万tの備蓄米を放出すると発表した。

現在の価格高騰は一部の業者がコメの在庫を抱え、流通が滞っていることが要因の一つとされていて、今回の備蓄米の放出で流通の円滑化を図ることが狙いだ。
江藤農水相は「流通がやっぱりどこかでスタックして特定の人が利益を享受するのはよくない。このままの状態を放置すれば、これからも先も主食であるコメがマネーゲーム・投機の対象になってしまうかもしれない」と現状に危機感を示した。
生産者・消費者が納得できる価格水準へ…
新潟市中央区で開かれていた農業関係者の会合でも政府による備蓄米の放出決定による影響について議論。

県農林水産部の担当者は「2024年度の主食用等生産量に売り渡し相当分が加わるという市場の動きになると考えられるが、1年以内に買い戻されるという説明なので、2026年6月末のコメの在庫量には影響しないと想定している」と説明。
備蓄米の放出などは県の主食用米の生産目標に影響を与えるものではないとして、2025年産の生産目標は当初の予定通り56万2400tとすることを確認した。

コメの価格高騰が消費者のコメ離れにつながる恐れがある一方で、農家の所得向上も大きな課題となっているため、関係者は今回の備蓄米の放出で消費者と生産者が共に納得できる価格水準に落ち着くことを期待している。
新潟県農業会議の石山章会長は「一部の方がスポット買いしながら、無いコメをお互い奪い合って価格水準を上げているんじゃないかと思う。そういうことがないように備蓄米21万tで解消されることを期待している」と話した。
(NST新潟総合テレビ)