南西方向からの鳥瞰イメージ 提供:仙台市
南西方向からの鳥瞰イメージ 提供:仙台市
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仙台市が進める「音楽ホール」と「震災メモリアル拠点」の複合施設整備計画に、疑問の声が上がっている。
2031年度の開館を目指し、3月中にも基本設計案がまとまる見込みだが、膨れ上がる建設費や事業の妥当性を巡り、市民からは「一度立ち止まるべきだ」という厳しい声が相次いでいる。
35年前の構想始動から凍結を経て、震災復興を機に再び動き出した巨大プロジェクト。その影に潜む、3つの大きな懸念とは。

646億円の巨額投資と不透明な「需要」

1Fフロア(交流イベントロビー) 提供:仙台市
1Fフロア(交流イベントロビー) 提供:仙台市

最大の懸念は、右肩上がりに膨らむ事業費だ。建築資材の高騰などを背景に、建築費は当初計画から大幅に増え、昨年11月時点で582億円に。さらに、総事業費は約646億円に達し、今後増える可能性も否定できない。

郡市長は「ファンドをつくってご協力いただけないかとか、ふるさと納税なども活用できないかなど、いろいろな知恵を絞りながらやってまいりたい」と理解を求めるが、市民の視線は冷ややかだ。

仙台市内で開かれた意見交換会
仙台市内で開かれた意見交換会

意見交換会では、参加者から「どれだけ大きなもの、どれだけいいものを作っても、需要がなければただの持ち腐れになってしまう」「今の社会情勢、財政状況を鑑みるのならば、一度立ち止まってもいいのではないか」との批判が噴出した。

市は2020年に「十分な需要がある」とする調査結果を確認したとしているが、その具体的なデータは公表されていない。

宮城大学 上森貞行准教授
宮城大学 上森貞行准教授

宮城大学の上森貞行准教授は、「施設が供給過多になってしまうのか、それともいい形で運営されていくのか」は、既存の施設需要をどう精査するかにかかっていると指摘する。

「災害文化」という耳慣れない概念

2Fフロア(災害文化エリア) 提供:仙台市
2Fフロア(災害文化エリア) 提供:仙台市

もう一つの柱である「震災メモリアル拠点」についても、議論は紛糾している。
市は基本設計中間案において「文化芸術と災害文化が融合する、世界に類のない施設」を掲げているが、意見交換会では、「災害文化という言葉がどこからきたのが、そこが見えていない」との指摘の声もあがった。

仙台市側は、仙台放送の取材に対し、この「災害文化」という言葉の定義を文書で回答した。

仙台市では、災害は発生するものと認識した上で、災害が起きても、それを乗り越える術を持った社会文化を『災害文化』と呼ぶことにした

しかし、音楽ホールという「文化芸術」と、震災の教訓を伝える「災害文化」がどう融合するのか。4年前に突如浮上したこの複合化のプロセスに対し、市民からは「煮詰まっていない」との指摘が絶えない。

県と市「二重行政」の壁

宮城県と仙台市、いずれも同規模の音楽ホールを仙台市内に建設する計画 提供:宮城県・仙台市
宮城県と仙台市、いずれも同規模の音楽ホールを仙台市内に建設する計画 提供:宮城県・仙台市

さらに深刻なのが、宮城県が宮城野区の仙台医療センター跡地に建設を進める複合施設との「重複」だ。県が昨年着工した施設も、市と同じく2000席規模の音楽ホールを備える。

同じ市内に、同じ規模、同じ用途のホールが二つ並び立つ。
上森准教授は「蓋を開けてみたら実は同じターゲットを狙っていて、誘致も半々になってしまうような場合だと、完全に競合という形になる」と警鐘を鳴らす。

市と県はそれぞれ「棲み分け」を強調するが、その説明は専門的で分かりにくい。

仙台市: “生の音”に対して優れた音響性能を重視していく。客席が取り囲んで聴衆が一体感を感じられるというサラウンド型となるのが特徴
宮城県: “立体音響”や“3Dサラウンド”とも呼ばれ、スピーカーによる残響の制御が可能な“イマ―シブオーディオ”を導入する

双方ともに「機能を補完し合う」とは言うものの、市民から見れば明確な差異は見えてこないのが実状だ。

「選ばれた人」ではなく「一般の市民」へ説明を

音楽ホール・メモリアル拠点を考える市民会議 高橋直子代表
音楽ホール・メモリアル拠点を考える市民会議 高橋直子代表

意見交換会を主催した「音楽ホール・メモリアル拠点を考える市民会議」の高橋直子代表は、期待があるからこそ、今の不透明な状況に危機感を抱く。

音楽ホール・メモリアル拠点を考える市民会議 高橋直子代表
メモリアル拠点とどう複合するのかというのが、その複合の仕方というのがまだちゃんと煮詰まってないところがある。市民説明会など、市が選んだ人にするのではなくて、一般の人たちに向けてもっと丁寧にするべきじゃないか。

こうした中、仙台市は2月下旬に行われた市議会の予算特別委員会で、新年度にも市長自らが出席して市民向けの説明会を開く考えを明らかにした。
基本設計案が完成した後のタイミングとなりそうだが、市民誰もが納得できる説明が求められる。

仙台放送
仙台放送

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