バレーボールのトップリーグ、MUFG SVリーグ初のオールスターゲームが開催され、「北陸復興」をテーマにアイデア創出を目指す、“共創プログラム”が同時に実施された。
地域でのスポーツビジネス拡大の鍵とは、何なのだろうか。
“企業×学生の共創”で地域活性化
地域を元気にするスポーツの力に迫った。

スター選手が集結し、夢の共演を果たしたバレーボールのトップリーグ、MUFG SVリーグ初のオールスターゲーム。
この一大イベントの開催をきっかけに、結ばれた地域の若者と企業の力。
スポーツを通じた、人づくりや街づくり。地域の未来につながる、“新たな価値”とは。
“北陸復興”で地元の学生考案スイーツも
試合の約3時間前。メインアリーナに隣接するサブアリーナ。

能登半島地震の復興支援活動の一環として出場選手らによる募金活動が行われ、多くのファンが行列を作る中、負けず劣らず賑わっていたのは、地元・石川県の発酵食メーカー「ヤマト醤油味噌」による試食ブースだ。

振る舞っていたのは、味噌を使った栄養補助菓子「たべるみそしる」と、味噌とチョコレートの相性の良さを活かした「味噌ちょこぽん」と名付けられた試作品。
試食した人:
美味しいです。
試食した人:
最高!
実はこの試作品、考案したのは地元出身の大学生で、石川県立大学の西山桃子さんと端野大夢さんだ。

今回のオールスターでは、北陸を中心とした企業と学生がタッグを組み、「北陸復興」をテーマにアイデア創出を目指す、“共創プログラム”を実施。

2024年11月には石川・金沢市で、全国から集まった約130のアイデアから選ばれた12の学生チームによる、ピッチイベント「NEO AWARD HOKURIKU~繋げ未来へのトス~」が開催された。
ヤマト醤油味噌×石川県立大学の学生のピッチテーマは「発酵食品の新たな可能性」だ。
石川県立大学・西山桃子さん:
スポーツ選手が、休憩時間に手軽に栄養補給できる、味噌を用いた栄養補給食です。
石川の文化に親しむ「着物の布」使う小物も
再生科学研究所×金沢美術工芸大学の学生のピッチテーマは、「着物の布を使った小物づくり」。

金沢美術工芸大学・杉本 紬さん:
実際に作ったものがこちらになります。

結果、8つのアイデアが採用され、出展することに。
着物の布を使った小物づくりのワークショップで、伝統美を体験しながら、石川の文化に親しんでもらおう、という再生科学研究所×金沢美術工芸大学のブースでは――。

体験したファン:
これは(髙橋)藍くんのです。楽しかった。教えてくれてありがとう。
金沢美術工芸大学・筒井徹心さん:
来てくださって本当ありがとうございます。頑張ります。
体験したファン:
思い出にします。どうもありがとう、頑張ってね。
金沢美術工芸大学・筒井徹心さん:
頑張ります。

金沢美術工芸大学・筒井徹心さん:
(来場したファンに)好きになってもらおうという企画だったのに、それをやっている自分が、もっと好きにさせられるみたいな感覚。
「スポーツの応援で人づくり・街づくりに効果」
スポーツをハブとした、学生と地域の企業や団体を結びつけるSVリーグの新たな取り組み。

仕掛けたのは、現役東大生にして、スポーツを通じた地域活性化プラットフォームを展開するスタートアップ「スポーツネーション」の三木智弘代表だ。
スポーツネーション・三木智弘代表:
(企業と学生が)スポーツの応援という世代関係なくつながれるもので一致団結することで、お互いの違った価値観を理解しあいながら、新しいものを作っていくことが、地域に新しい価値を生み出すのではないかと。

そして、地域の若者が地元の企業からビジネスを学び、起業家精神を発揮して、ふるさとに賑わいを生み出すことを期待したいという。
スポーツネーション・三木智弘代表:
スポーツの応援で、地域の若い人も企業も集まることにより、人づくり・街づくりといった効果があると考えています。
地域に思いを持った若者が次から次へと出て、今の時代、すごく東京一極集中とか、担い手不足というものがある中で、そうした問題にも解決につながるんじゃないかと考えています。
観光誘致・魅力ある雇用がビジネス拡大のカギ
「Live News α」では、働き方に関する研究・調査を行っている、オルタナティブワークラボ所長の石倉秀明さんに話を聞いた。
堤礼実キャスター:
スポーツビジネスに詳しい石倉さんは、今回の取り組みをどうご覧になりますか。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
スポーツ庁は、この3年でスポーツビジネスの規模を3倍の15兆円にしようと計画しています。国としてもかなり力を入れて、盛り上がりを作ろうとしている分野の一つでもあります。
その理由として、スポーツというのは地域に根ざしていて、そこに産業が生まれる効果があるからです。
堤キャスター:
地域でスポーツビジネスを広げていくためのポイントはどこになるのでしょうか。
オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
地域住民がメインの顧客となりますが、それだと商圏も小さくて、大きなビジネスに育ちにくいです。
また、商圏が小さければスポーツチームも儲からず、チームを補強することも難しいというサイクルになってしまうんです。そう考えるとスポーツチームがやるべきなのは、いかに商圏を広げるかということになります。
堤キャスター:
具体的には、どうすればいいのでしょうか。
オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
今回の取り組みのように、普段はチームと関連がない地元の商品やサービスを広めることはもちろんですが、本質的には、どれだけ他のエリアから人がきて、お金を落とす仕組みを作れるか、そしてその地域に魅力的な仕事が生まれるかの2点に尽きると思います。
そういう意味では今回のように地元から案を募り、良いアイディアをスポーツチームを使うことで、地域外の人が集まる施策にするのは理にかなっていると思います。
若者流出を防ぐ仕事の創出が課題
堤キャスター:
スポーツをきっかけに、地域が活性化していくと良いですね。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
そうですね。そのためのポイントは、やはり魅力的な仕事を生み出すところまでいけるかどうかだと思います。
地方から人が出ていくタイミングで1番多いのは就職の時です。つまり地元には魅力的な仕事がなく、魅力的な仕事が多い都市部に移動しているということ。
スポーツビジネスの盛り上がりをきっかけに、地域として経済が潤い、賃金ややりがいの面でも魅力的な仕事が地元に生まれるのであれば、東京などに人が出ていかないケースが生まれてくるのではないかなと思います。
地元にお金が落ちることで終わってしまう場合が多いのですが、その先の魅力的な仕事を増やせるか、ぜひ、そこまでチャレンジしてほしいです。
堤キャスター:
美味しいものや、職人の手仕事に触れることは、地域の活性化にもつながります。そのきっかけが、みんなが一つになれるスポーツから生まれると、より効果的なように思います。
(「Live News α」2月11日放送分より)