合格率5%という狭き門をくぐり、2025年春からJRAの競馬学校に通う16歳の女性がいる。馬術から転身し競馬学校を目指すも、一度は不合格に。それでもあきらめなかったのは、初めて馬場で味わった感動と愛馬の支えがあったからだった。

愛馬「ぼん」と角祈凛さん(16)
愛馬「ぼん」と角祈凛さん(16)
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北陸初のJRA女性ジョッキー誕生へ

福井県坂井市の角祈凛(すみ・きりん)さん16歳。千葉県にあるJRA・日本中央競馬会の競馬学校「騎手課程」に、2度目の挑戦で合格をつかみ取った。2024年度は198人が受験し合格者はわずか9人、合格率は5%という狭き門だ。騎手としてのデビューが決まれば「北陸初のJRA女性ジョッキー誕生」となる。

福井市の乗馬クラブ「福井ホースパーク」で白馬の世話をする角さん。愛馬の「ぼん」とは苦楽を共にしてきた。「ウマの良さは頭がいいこと。遊んでくれるから好き」と話す。

乗馬から競馬へ―転機が訪れる

小学3年生で乗馬クラブに入る
小学3年生で乗馬クラブに入る

角さんは、乗馬が趣味の母親の影響で、5歳の頃からウマに乗るように。小学3年生で乗馬クラブに入り、本格的に乗馬を始めた。1人で電車を乗り継ぎ、2週間に1度は母親の知り合いが経営する滋賀県の乗馬クラブに通っていた。

本格的に乗馬を始めて2年が経った頃、転機が訪れた。友達に誘われて出場したポニー競馬の大会で、その魅力にとりつかれたのだ。「初めて馬場でウマを追って走ったのがすごく楽しくて、風がビュンビュンなって観客も多くてファンファーレもなって…」  

友人の誘いでポニー競馬の大会に出場
友人の誘いでポニー競馬の大会に出場

結果は最下位だったが、この1度きりの経験が、角さんにとっては忘れられないものとなった。「すごく悔しくて、1位でゴール出来たら絶対に最高だろうなと思った」という。

体力アップへトレーニングを強化

馬術競技では全国大会に3度出場
馬術競技では全国大会に3度出場

その後は、乗馬の技術を競う馬術競技で全国大会に3度出場するほどの実力者になったが、心の中には常に、競馬への思いがあった。中学3年生の時、「プロになって1位を目指したい」と騎手を夢見て競馬学校の受験を決意した。1度目は不合格だったが、その時「足りないのは体力面だと気付かされた」という。

2度目の挑戦で難関のJRA競馬学校に合格
2度目の挑戦で難関のJRA競馬学校に合格

夢を諦めきれず、練習の頻度を上げるため、滋賀県の乗馬クラブ近くで1人暮らしを始めた。半年間、朝から晩まで愛馬「ぼん」とのトレーニングに加え、暑い夏でも5キロのランニングを欠かさなかった。こうした努力が実り、2度目の挑戦で、合格率わずか5%の試験を突破したのだ。

愛馬「ぼん」に真っ先に合格を報告

競馬学校の合格を真っ先に伝えたのは「ぼん」
競馬学校の合格を真っ先に伝えたのは「ぼん」

「一番最初に合格を伝えたのはこの子(愛馬)。本当にうれしくて泣きついたし、家族も友達も騎手を目指していることを知っていたのですごく喜んでくれた」という。

角さんを子供の頃から指導している先生は「ウマの邪魔をしないような乗り方をするので、ウマはすごく走りやすいと思う。そこが強み」と評価している。

夢はトップジョッキー

2月7日の時点で、JRAに所属している騎手は137人いるが、そのうち女性はわずか5人。男性に比べて体力面に不安があるため、角さんはいまも日々のトレーニングを続けている。

「不安はいまのところなくて、楽しみで頑張るぞ、という気持ちが大きい」と目を輝かせる。「好きな競走馬は牝馬のリバティアイランド。好きな騎手は田口貫太騎手と川田将雅騎手。大きな目標はトップジョッキーになることで、牝馬三冠をとりたい」と目標も明確だ。騎手免許を取得すれば、北陸初のJRA女性ジョッキー誕生となり、早ければ3年後の2028年に3月にデビューとなる。

※角は真ん中の縦線が下に付き出る 

福井テレビ
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