少子高齢化が進むことで生じる様々な問題、いわゆる「2025年問題」は過疎地域の医療でも。この問題を解決する取り組みとなるか?福島県南会津町の伊南地域で、対面とオンラインを組み合わせた診療モデルが始まる。
奥会津の町に新たな診療施設
2025年1月23日、福島県福島市で行われた調印式では、都内のクリニックで院長を務める恩田泰光さんと南会津町の渡部町長が、南会津町伊南地域に2025年度から新しい診療施設を開設する合意書を交わした。

恩田泰光医師は「山間部などで受けられる医療が制限されてしまうことに、昔から課題感を持ってきた。何かしら“どこでもドア”ではないが、誰でもアクセスできる方法はないのかなと考えていた」と語る。
遠い医療機関…喫緊の課題に
「自分たちの診療はどうなるかという不安が、高齢者の方からすごい大きな声で寄せられていた」と話す南会津町の渡部正義町長。
人口1100人あまりが暮らす山あいの豪雪地帯、伊南地域。地区で唯一の診療所は、2024年3月に医師の健康上の都合で閉院となった。

地域の中心部から最も近い診療所が、交通機関を乗り継いで片道・約40分。県立南会津病院にはバスで片道1時間がかかるなど、医療機関へのアクセスは緊急の課題だった。
対面とオンライン ハイブリッド診療
新たに開設される「ハイブリッドファミリークリニック南会津町」は、閉院した診療所を活用する。月に2回、恩田医師が東京からクリニックに通って対面診療を行うことに加え、それ以外の日もスマートフォンなどを活用してオンライン診療を受けられるようにする予定だ。

この知らせに地域の人たちからは「よかった。うれしい。1年前までは自分で運転して行けたが、免許を返納したので今は息子夫婦に仕事を休んでもらって行くのでそれが大変だった」「長くやってもらえるような先生だと思うので、ずっといてもらいたい」という声が聞かれた。

65歳以上の割合が50%を超える伊南地域。新たな診療体制が、高齢化と過疎化が進む地域のモデルケースとなるのか注目だ。
医療の2025年問題
伊南地域に限らず、これからの医療体制を考え直す時期にきている。2025年は「第一次ベビーブーム」に生まれた、いわゆる「団塊の世代」が、全員75歳以上の後期高齢者になる。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2025年に後期高齢者は約2155万人となり、国民の5~6人に1人の割合になる見通しだ。

こうして少子高齢化が進むことで生じる様々な問題は「2025年問題」と言われ、例えば「社会保障費の負担が増す」ことや、医師などが自宅に訪問して診察を行う「在宅医療」や「高齢者の救急搬送」の需要が増えるといったこと。一方で、医療や介護の担い手は不足してしまうため、需要と供給が釣り合うような医療・介護体制を構築することが求められている。

今回の南会津町での取り組みは、これからの日本の医療のありかたを巡っても重要な意味を持つ。
(福島テレビ)