石破政権が発足して1月8日で100日となった。10月の総理就任当初こそ、支持率は53.3%、不支持35.8%と支持が先行したものの、1月の調査では「支持する」43.5%、「支持しない」48.7%と3カ月連続で、不支持が上回りご祝儀支持率は早くも霧消した政権運営が続いている。

内閣支持率
内閣支持率
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【内閣支持率】
2025年1月  支持する43.5% 支持しない48.7%
2024年12月 支持する45.9% 支持しない47.7%
2024年11月 支持する43.8% 支持しない49.8%
2024年10月 支持する53.3% 支持しない35.8%

「自民支持層」は75%が石破政権「支持」

発足100日にして支持率が停滞を招く要因は何なのか、支持政党別に見ると足下の自民支持層からは手堅く固めているものの、国民民主党支持層からの不支持の高さが足を引っ張っている現状が見える。

支持政党別の政権支持率では、自民支持層からは「支持」75.4%、「支持しない」19.6%となった。岸田政権の最終月となった2024年9月をみると、自民支持層からの「支持」は5割を切り、自民支持層からも首相・総裁への支持を失っていた状況だった。当時と比べるといまの石破政権は自民層からの「支持」は固めている状況といえる。また、与党公明党支持層からの政権支持率も「支持」56.6%、「不支持」33.3%となり「支持」が大きく上回る回答となっていて、石破政権は与党支持層からは安定した支持を得ている状況だ。

一方の野党支持層を見ると、立憲支持層では「支持」43.3%、「不支持」50.3%と、不支持が上回る。ただし、政権交代を伺う筆頭である野党第1党の支持層から石破政権への「不支持」は特別高いとは言えない。「維新支持層」に至っては、「支持」60.2%、「不支持」39.8%と“与党支持層”ともいえる高い支持を得ている。

にもかかわらず、全体で石破政権が3カ月連続で「不支持」が「支持」を上回る要因が、「国民民主支持層」からの“不人気”だ。「支持」8.8%、「不支持」90.1%と圧倒的に「不支持」が高い。さらに、2024年10月の衆院選で国民民主は議席4倍増と躍進したとおり、有権者に占める国民民主の支持割合が増えていることから、全体で石破政権が沈む理由は国民民主支持層からの圧倒的な「不支持」が最大の要因となっているといえる。

自民と国民民主の関係をめぐっては、「103万円の壁」引き上げをめぐり、国民民主党が求める「178万円前の引き上げ」について与党からの返答は「123万円」止まりで、両党間の協議が暗礁に乗り上げている現状がある。

【内閣支持率 政党別】
自民層   支持75.4% 不支持19.8%
公明層   支持56.6% 不支持33.3%
立憲層   支持43.3% 不支持50.3%
維新層   支持60.2% 不支持39.8%
国民民主層 支持8.8%   不支持90.1%

「103万円の壁」自民案より“さらに引き上げ“65%

前述の「103万円の壁」引き上げは、自民党と国民民主党で綱引きが継続する形となっている。衆議院で少数与党に陥る自民・公明は、予算成立のために、一部野党からの賛成の取り付けを必要としているが、与党内からは、国民民主からの協力が「最も現実的だ」との認識が強い。世論調査で「103万円の壁」の引き上げ幅について聞いたところ、自民・公明案より、国民民主案に近い意見が強い結果となった。

国民民主の求める「178万円まで」を望む声は32.0%、「140~150万円程度」との意見は32.5%で、自民・公明が提示した「123万円」でよいという意見は18.5%にとどまった。

103万円の壁の引き上げ幅
103万円の壁の引き上げ幅

【「年収103万円の壁」引き上げ幅】
178万円まで(国民案) 32.0%
140~150万円      32.5%
123万円まで(自民案) 18.5%
103万円のまま     10.1%

「引き上げ幅」をめぐって支持政党別に見ると、自民支持層と国民支持層での意見に溝が大きい。自民支持層では「178万円まで」は17.2%、「140~150万円程度」が40.4%、「123万円まで」が26.1%、「103万円のまま」は9.5%となった。自民支持層内ですら、自民案の「123万円」にとどまらず、より大きな引き上げ幅が望ましい意見が6割近くに上っている。

一方、国民民主支持層では、「178万円まで」71.6%、「140~150万円程度」が19.1%、「123万円まで」6.4%、「103万円のまま」1.4%となった。自民案にとどまらず、更に引き上げる意見は9割、そのなかでも圧倒的に国民民主が主張する「178万円」を望む声が根強い結果となった。

政権与党として来年度予算案採決での協力を得られるかどうかを左右するイシューとなっている問題について、現状では自民党が譲歩するという姿勢はまだ見えていない。自民党は「123万円」までの引き上げは、直近30年ほどの生活必需品の物価上昇率に準じて打ち出した引き上げ幅で、さらに所得税が非課税となる幅を引き上げる「理屈がない」という立場だ。また、減税枠の拡大は大きな税収減と表裏一体で、健全な財政運営に支障を来すという立場だ。こうした自民党の主張に有権者からの理解が得られるのか、「手取りを増やす」という国民民主党の立場が今後も支持を得るのか、石破政権の運営にも関わる問題となっている。

【「年収103万円の壁」引き上げ幅 支持政党別】
●自民支持層
178万円まで(国民案)  32.0%
140~150万円       32.5%
123万円まで(自民案)  18.5%
103万円のまま      10.1%

●国民民主支持層
178万円まで(国民案)  71.6%
140~150万円      19.1%
123万円まで(自民案)  6.4%
103万円のまま      1.4%

石破政権の掲げる「楽しい日本」評価二分

石破首相は、2025年の国会に政権として何を掲げるのか。1月6日に恒例の首相の伊勢神宮参拝を終えた後の年頭会見で石破首相は「楽しい日本」「令和の日本列島大改造」などを打ち出した。

1月24日の施政方針演説で「楽しい日本」について説明した石破首相
1月24日の施政方針演説で「楽しい日本」について説明した石破首相

「楽しい日本」とは何か?石破首相は、1月24日の施政方針演説で「全ての人が安心と安全を感じ、自分の夢に挑戦し、きょうより明日は良くなる、と実感できる。多様な価値観を持つ一人一人が、互いに尊重し合い、自己実現を図る、活力有る国」と説明した。

こうした石破政権の方針について世論調査で評価を聞いたところ「評価する」45.6%、「評価しない」47.0%と答えが2分した。

石破首相「楽しい日本」について
石破首相「楽しい日本」について

【石破首相「楽しい日本」について】
評価する  45.6%
評価しない 47.0%

「石破政権」夏の選挙までは6割超

こうした現状の石破政権について有権者は、いつまで続くのが良いと思っているのか。世論調査では、今後想定される政治的節目のなかから、通例年度末に行われる「春頃の来年度予算の成立」、「6月に終了する予定の通常国会終了」、「夏に予定される参議院選挙」、「その先以降も継続する」という4つの時期に区切り石破政権の先行きについて質問した。

石破政権がいつまで続くのがよいかという質問に対し、「春頃の来年度予算が成立した後」との答えは20.7%、「6月予定の通常国会終了まで」は13.1%と比較的少数の答えとなった、一方で、その先の「夏の参議院選挙まで」31.4%、「な追考も石破政権が継続」が29.7%とほぼ3割で同程度の回答となった。

前述の通り、石破政権は自民支持層からの地盤は維持している中、少なくとも夏の参議院選挙かそれ以降という意見が6割を超えた結果となり、政権の今後に“急変”を求める意見は現状では、少数にとどまるといえる。

【石破政権はいつまで継続が良いか】
春頃の来年度予算成立後まで 20.7%
6月予定の通常国会終了まで  13.1%
夏に予定される参院選まで  31.4%
夏以降も政権継続      29.7%

これを主要与野党の支持層別に見ると、自民支持層、立憲支持層ともに夏の参院選、またはそれ以降も石破政権が継続という意見が7割を超えた。維新支持層では夏以降はやや減るものの6割後半となった。一方で、与党でも公明支持層からは夏以降も継続を望む声は5割にとどまった。さらに国民民主支持層では、「春頃の予算成立後まで」46.1%と最も多くなった。「103万円の壁」の対応次第で、国民民主党が与党との協調路線となる可能性がある一方で、参院選が近づくにつれ、自民党内から石破政権“継続“の雰囲気が急変することも考えられる。特に通常国会後半から終盤に向けて、石破首相は綱渡りの政権運営が予想される。

【石破政権はいつまで継続が良いか 支持政党別】
●自民支持層
春頃の予算成立まで    8.5%
6月予定の国会終了まで  10.0%
夏の参院選まで       31.4%
夏以降も継続        44.5%

●公明支持層
春頃の予算成立まで    18.7%
6月予定の国会終了まで   19.3%
夏の参院選まで      22.9%
夏以降も継続       27.5%

○立憲支持層
春頃の予算成立まで    6.4%
6月予定の国会終了まで   14.6%
夏の参院選まで      44.3%
夏以降も継続       32.5%

○維新支持層
春頃の予算成立まで     15.2%
6月予定の国会終了まで  18.3%
夏の参院選まで       38.1%
夏以降も継続        28.4%

○国民民主支持層
春頃の予算成立まで    46.1%
6月予定の国会終了まで   17.3%
夏の参院選まで      25.7%
夏以降も継続       7.0%

(フジテレビ政治部 西垣壮一郎)

西垣壮一郎
西垣壮一郎

フジテレビ報道局 政治部デスク 世論調査担当
2000年から政治部担当で報道記者・報道番組プロデューサーを歴任。
政治部官邸キャップ、自民党キャップ、野党キャップなどを担当。
ワシントン支局特派員(ブッシュ政権~オバマ政権)「BSフジLIVEプライムニュース」総合演出、「日曜報道 THE PRIME」プロデューサーなどを経て現職。
趣味は釣り。