秋田の冬の食卓に欠かせない「ハタハタ」。その漁が存続の危機に直面している。記録的な不漁となった今シーズンの季節ハタハタ漁。「県魚が消える」と漁師たちは強い危機感を抱いている。
漁獲量激減…「死活問題」に
秋田県のまとめによると、今シーズンのハタハタの漁獲量は、沖合と沿岸合わせて約14トン。1995年の禁漁明け以降最少どころか、記録が残る1965年以降で最も少なくなる見通しだ。

2025年、年が明けて3週間ほどたった八峰町の八森漁港。今シーズンの季節ハタハタ漁は終了し、港には寂しげな空気が漂っていた。
八森漁港は、2024年11月25日に季節ハタハタ漁が解禁された。それから約1カ月後の12月19日にようやく“初漁”を迎えた。これは禁漁明けの1995年以降で最も遅い初漁だ。

八森漁港と近くの岩館漁港を合わせた今シーズンの季節ハタハタの水揚げは、約832kgで、前年の漁獲量約40トンのわずか2%ほどだった。

八森漁港を拠点とする漁師の山本太志さんは「あまりにも足りない。ハタハタ漁で生活をしている人もいるので死活問題」と危機感をにじませる。
さらに少なくなるのは間違いない
沿岸の季節ハタハタ漁に先駆けて解禁される沖合の底引き網で、既に異変を感じていたという山本さんは「これまでは1回の漁で1トンくらい網に入って、それを繰り返して1日4トン、5トン持ってくるという形でできたものが、今季は毎日数kgしか水揚げがない状況だった。正直、絶望的。沖の方で群れがいないということは、当然接岸するハタハタがいないということなので」と話す。

今シーズンはハタハタの動きがいつもとは違っていた。山本さんの長年の経験では、山形方面から北上してくる群れと北海道方面から南下する群れが八森沖で合流するということだが、「昨季は南から来る群れが全くなかった。北からある程度の群れが来たので40トンの漁はできた。今季は北海道の方の北からも南からも群れのハタハタが一切来ていないという状況」と振り返る。

さらに、山本さんは「1歳魚、2歳魚、3歳魚、大きいもので4歳魚といるが、1歳魚・2歳魚がほとんどいないのが実感」と話し、来シーズン以降も漁獲量が大きく落ち込む可能性があると懸念している。

ハタハタの寿命は5年ほどで、2歳で繁殖できるようになるとされている。今シーズンは、生まれてすぐの1歳魚や繁殖に適した2歳魚がほとんど取れなかったというのだ。
山本さんは「当然ながら、来年以降はさらに量が少なくなるのは間違いないと思う。接岸するハタハタがいない状況なので、来年、再来年にはハタハタ漁自体がなくなるのでは」と危機感を募らせる。
ハタハタが秋田の県魚ではなくなる…
山本さんは「収入的な面もそうだが、この町の文化。ハタハタの接岸によって町民が作業に加わったり、鍋にしたり、すしを作ったりということが毎年行われていたのが、もうなくなるんだなという実感しかない。秋田の漁業のシンボルの魚がいなくなるという、寂しい世の中になるなと思っている」と話す。

長年、漁の傍ら水温を計測するなどしてハタハタの動きを分析している山本さんは、“海水温の上昇”がハタハタが秋田沖に接岸しない最大の理由とみており、「海水温がなかなか下がらないことが影響し、初漁日が年々遅くなっている。ハタハタが取れたとしても漁の時期が後ろ倒しに、そして短くなるのでは」という懸念も口にしていた。
さらに、海水温の上昇でしけが多くなり、そもそも漁に出られるチャンスが減っているといい、今シーズンはわずか1日しか沖合でハタハタを取れなかった。
「ハタハタ」という秋田の食文化を消さないために、資源の管理方法などを根本から考え直す時期が来ているのではないだろうか。
(秋田テレビ)