「いつか自分の店を開きたい」という秘めた思いを71歳にしてかなえた女性が秋田・北秋田市にいる。食で人を元気に、そして町ににぎわいを取り戻したいと、家族とともに念願の喫茶店を開業した女性の思いに迫る。
夢をかなえた71歳 健康に配慮した薬膳喫茶
北秋田市のふれあいプラザコムコムに2024年12月にオープンした「薬膳喫茶YOYOJOJO(ようようじょうじょう)」。笑顔で出迎えてくれるのは、店主の武田美知子さん(71)だ。

武田さんは元々、小中学校の養護教諭だったが、昔から喫茶店が好きで、「いつか自分の店を開きたい」とひそかに思いを募らせていた。

「喫茶店の中でいろんな人と出会って、いろんなこととつながる。そういう文化の中で私たちの年代は育っている。『学校の先生を辞めたら喫茶店やりたいな』というのが夢だった」と語る武田さん。

教諭時代は子どもたちの健康を人一倍気遣い、食の大切さを実感した。その経験から退職後は薬膳を学び、指導員の資格を取得。現在は市内で料理教室も開いている。
念願かなってオープンした店は、材料や調味料にこだわり、健康に配慮したメニューがずらりと並ぶ。

看板メニューは「薬膳カレー」。ご飯は体に優しい十六穀米。カレールーには肉を使わず、ごまやエビなどが入っている。エビはプリプリで味はまろやか。一口食べただけで体がほわっと暖かくなるような、冬に食べたら元気が湧いてきそうな一品だ。

提供するメニューについて、武田さんは「季節も体も変わるから、変わる季節に合わせて自分に必要なものを食べてほしいとメニューを作っている。薬膳って敷居が高いからって言われるけど、“食べると元気になるもの”だと思っている。奥が深いのでまだまだ勉強しないといけないなと思っている」と話す。
家族の反対を乗り越えて
開業までにはいろいろあったようで、家族から「趣味でやるならやらなくていい」と言われていたことを明かしてくれた。

実はちょうど1年前、武田さんはコムコムでテナント募集の知らせを見たことをきっかけに、「喫茶店をやりたい」という夢を初めて家族に伝えた。すると、夫・富雄さんには難色を示され、長男の昌大さんからは猛反対されたという。

昌大さんは「まず反射的に『いや、無理でしょ』と。『絶対にできるわけない』ってとっさに思った」と当時を振り返る。
都内で飲食店を経営している昌大さん。苦労を知るからこその反対だった。しかし、これまで自身の活動に一切反対せずに応援してくれた母の姿を思い返し、気持ちが変わったという。

「何てことをしたんだと、『やりたい』とせっかく思いを言ってくれたのに反対してしまったなと。自分は何ができるのか。たぶん全力で手伝えばできるんじゃないか、と思いが変わった」と話す昌大さん。

家族で思いを一つにしたことで武田さんの夢は大きく前進。富夫さんは趣味でよく入れていたというコーヒー作りを、昌大さんは経営経験を生かして価格設定やSNS発信など裏方業務を担っている。
「気分も体もアゲアゲに」
思いがけず家族で運営することになった喫茶店。71歳の挑戦を、武田さんは「慣れないことばかり」とこぼすが、その表情は充実感にあふれている。

みんなが集ってわいわいがやがやして、おいしいものを食べて元気になってくれればいいなと、意気揚々・気分上々をもじって「YOYOJOJO」と名付けた店。
武田さんは「気分も体もアゲアゲになるよう、その人の体調に合わせて料理が出せるようにゆとりができればいいなと思っているが、なかなかね。料理を出して終わりじゃなくて、食べてもらった後のケアみたいなものもできる店になればと思っている」と意気込む。

クラウドファンディングで資金を募り、2月には店内の改装を予定している「薬膳喫茶YOYOJOJO」。
食の力で身も心も健康に!
薬膳の道を究めた母の味で、人々に、そして地域に元気を届ける。
(秋田テレビ)