2024年、中国で相次いだ凄惨な事件。2025年に入り、次々と司法の裁きが下されています。

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1月20日には、2024年11月広東省で起きた車暴走により35人が死亡した事件と、江蘇省で起きた専門学校で学生らが切りつけられ8人が死亡した事件で、死刑判決が出ていた男2人の刑が執行されました。

事件発生から2カ月あまりで下された死刑執行。早すぎる判決と執行に若狭勝弁護士は…。

若狭勝弁護士
若狭勝弁護士

若狭勝弁護士:
これは日本ではあり得ないのですが、そもそも刑事裁判というのをてんびんにかけると、片方に「治安維持」がドンとある、もう片方には「人権保障しながら刑罰を科する」という考え方がある。そのどちらに重きを置くかで、中国は「治安維持」に最大の重点を置いているから、このようなことが可能だと。
日本は悪いことをしたとしても、適正手続きを踏んで判決を言い渡すという価値観が重視されているので、日本ではあり得ないと。

約10分の判決公判…日本人狙ったかは明かされず

1月9日には、2024年6月に江蘇省蘇州市で起きた、日本人学校のスクールバスが刃物を持った男に襲われ、日本人親子が負傷。親子を助けようとした中国人女性が死亡した事件の初公判が開かれました。
しかし、この裁判は日本メディアに非公開で行われ、その内容は明かされませんでした。

日本人が襲われる事件が相次ぐ中で起きた犯行に、被告の男の犯行動機に注目が集まっていましたが、23日に開かれた判決公判では…。

「今回の犯行は借金苦から生きているのが嫌になり、子どもを含む3人を殺傷したものであり、その犯行は極めて悪辣であり、社会的影響が重大であって極刑が相当である」

裁判所は、犯行動機を「借金苦」とし、故意殺人罪を適用。死刑を言い渡しました。
しかし、その時間わずか10分あまり。日本人を狙った犯行だったかについての言及はありませんでした。

動機について深く言及されず、10分で下された死刑判決。キヤノングローバル戦略研究所の峯村健司主任研究員は、「日本では考えられない」と話します。

峯村健司氏:
これは日本では考えにくいですね、日本なら相当判決理由を説明してからの死刑という重大な判決をするのですが、今回まず“最初に死刑ありき”というところですね。
やはりこれは、同じような事件が中国で多く起きていますので、ある意味見せしめ的に、抑止力のためにやっているというところですね。

若狭勝弁護士:
(控訴のようなものがあったとして)おそらく結論的には変わらない可能性の方が高く、見せしめ的なところというか、治安維持ということに重点があるとすると結論は変わらない可能性の方がはるかに高いと思います。

カズレーザー氏:
中国政府のやり方としては、借金苦から生きているのが嫌になるとか、社会に不満を持っている人物がいて犯行を行っているということをまず鎮火させたいのだと思います。
社会に不満があるということをまず何よりもなくしたい。「そういう人はいない」という報道したいので、どんな形であれ、早くけりをつけたいということだと思います。
それ以外のことはあまり重要ではないのかなと。

衝撃的な事件の判決にもかかわらず、中国大手メディア5社は今回の判決について報道はありませんでした。一方、ネットメディアでは、「日本の通信社によると」と、中国での出来事にもかかわらず、日本の報道を引用して伝えている記事もあった。

――なぜ日本のメディアの引用を?
峯村健司氏:

中国メディアの人間に聞いたんですけども、独自の報道はするなという厳しい指令が政府からが出ているそうなんです。だからこれは、皆さん知っているんです、この事件が起きたことは。でも、どうなったかを報道できないと。だから苦肉の策として、「日本のなんとか新聞によると…」という訳の分からない記事がなぜか中国で出ていると。
この苦肉の策で、なんとか報道はしていると。だけどこれ以上日本がとなってくると、類似の犯行に及ぶ可能性があるということで、徹底的なメディア規制をしているという状況です。

中国が裁判や刑の執行を急ぐ理由

1月24日にも、2024年9月に深セン市で、日本人の男児が登校中に44歳の男に刃物で腹部を刺され亡くなった事件の初公判が行われます。

この事件についても、中国当局から詳しい状況は明かされておらず、裁判を通じて犯行の動機や背景がどこまで明らかにされるかが焦点になっています。

――日本人が被害にあった事件の裁判を立て続けに行っている理由は?
峯村健司氏:

この深センの件で言うと、地元の当局の人に聞いたら、やはり日本が関係していると。
つまり、容疑者の供述として日本人を狙えばある意味“支持”、ネットの人たちの支持を得られやすいと。今、中国では反日感情というのが結構高まっているので、「よく日本人を狙ったと称賛されるから、日本人学校の児童を狙った」とどうも供述しているらしいです。
そう考えると、やはり日本を標的にしていると。だけども、習近平の指導部としては、日本との関係は少し良くなってきている、石破さんと習近平さんが会って以降。だから、水を差したくないなということで報道規制をバンバンやっていると。

(迅速な死刑執行など)これはもう完全に政府の意向、習近平指導部の意向。特に裁判所は共産党の指導の下にあるわけですから、その意向をくむというのが最大・大事なことなですね。ですから、抑止のために死刑を出すことによって、もう起こしてはダメだというメッセージを出すのが1つと、もう一個で言うと、来週ちょうど中国の春節、中国の大晦日・新年になるので、年を越す前に全部処理をするという、事務的な要素もあって。年を持ち越したくないというのもあると。
(めざまし8 1月24日放送)