政治団体の解散

パーティー収入の不記載事件で、都議会自民党は17日、政治団体を解散すると発表した。会派としては存続するという。

これは、自民党都議が党本部に対する影響力がなくなり、他の都道府県と同様に普通の地方議員の立場になるということを意味する。

都議会自民党といえば、「都議会のドン」内田茂氏(故人)を思い出す人が多いだろう。筆者も1999年、石原慎太郎氏(故人)の都知事就任と同時に都庁担当記者となり、都議会自民党に挨拶へ行った際に、内田茂氏と初めて会った時のことをよく覚えている。パーマをかけたヘアスタイルにたばこを吸う、気さくなおじさんのように見えたが、都庁担当記者だと名刺を差し出すと、少し間をおいてから、「石原都政をしっかり取材するように」と、厳しい面持ちで注文をつけられた。

内田氏の盟友といえば、当時都議だった山崎孝明氏(故人)。山崎氏を初めて見た時、パンチパーマに白のエナメル靴。いかにも怖そうな外見に驚いた。打ち解けてくるとやさしいところもあり、懇親会などに誘われることもあった。とにかく内田氏と山崎氏は仲が良く、議会棟の控室などで2人でたばこを吸っている姿を目撃したものだ。

都議会のドンと呼ばれた内田氏は、強い仲間を作り、その結束力を上手く活用し、都議会にとどまらず、自民党の都連幹事長にも就任するほど、その政治力は、国会議員を越える存在となった。

石原都政においても腹心である浜渦氏を百条委員会で攻撃し、最後は更迭されるまで追い込んだ。

”ドン”の時代の終焉

東京五輪開催においても、大きな影響力を水面下で発揮したとされている。

内田氏の悲劇は、女帝ともいわれる小池百合子現都知事とのいさかいに敗れたところから始まるのだが、この記事では詳細は割愛する。

ここで言いたいのは、なぜ地方議員である都議が、党本部への影響力を国会議員以上に持つことができたのか?それは、東京には国会議員が多く、権力が1人に集まりにくいという特性もあるが、もう1つの理由が、政治団体として集金力があったからだったのではないだろうか。

国会議員の政治活動の原資となるパーティー券を、ノルマ以上にさばける都議会自民党は、影響力をどんどん増していき、他の都道府県では当たり前の、国会議員、地方議員、区市町村議員、という序列を東京都だけ、地方議員(都議)、国会議員、区市町村議員という、序列にさせていたのだ。

今回、都議会自民党は、この影響力の根源であった、政治団体を解散すると発表した。これは、自民党の都議が、いわゆる一般的な地方議員に戻るという宣言であり、今後、内田茂氏のような突出した影響力を持つ議員が輩出されることはなくなるのではないだろうか。

大塚隆広
大塚隆広

フジテレビ報道局社会部
1995年フジテレビ入社。カメラマン、社会部記者として都庁を2年、国土交通省を計8年間担当。ベルリン支局長、国際取材部デスクなどを歴任。
ドキュメントシリーズ『環境クライシス』を企画・プロデュースも継続。第1弾の2017年「環境クライシス〜沈みゆく大陸の環境難民〜」は同年のCOP23(ドイツ・ボン)で上映。2022年には「第64次 南極地域観測隊」に同行し南極大陸に132日間滞在し取材を行う。