今、高齢者の生活を支える「訪問介護サービス」に危機が忍び寄っている。
2023年に倒産や休廃業した介護事業者は784件と調査開始以降最多となり、そのうち約7割が「訪問介護」だった。背景には車移動に欠かせないガソリンの価格高騰などの「物価高」や「基本報酬引き下げ」がある。現場を取材すると「訪問介護事業がなくなってしまう」といった声も聞かれた。

2024年に“廃業”した事業者は784件と“過去最多”

高齢者の生活を支える「介護サービス」の現場に危機が忍び寄っている。

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東京商工リサーチによると2024年、倒産や休廃業した介護事業者は784件と調査開始以降、最多になった。そのうち、ホームヘルパーが高齢者の自宅を訪れる訪問介護は全体の7割近くを占めた。

「イット!」が取材したのは埼玉・鴻巣市を中心に定期巡回・随時対応型訪問介護看護を行っている事業者「なでしこ」。

女性介護スタッフ:
血圧測りますね。深呼吸ね。

女性介護スタッフ:
何かたべたいものありますか?お昼ご飯に。
高齢者:
おまかせ。

1軒1軒、車で移動し利用者の代わりに買い物に出かけることもある訪問介護に迫る危機。

1つは物価高だ。
ガソリン代の高騰でコストが増大している。

さらに、2024年4月の介護報酬改定で訪問介護だけ基本報酬が引き下げられた。

女性介護スタッフ:
(パートで働いて)(月)15万から17万くらい。目に見えてお給料増えたな、もらってるっていう感覚はない。まだまだ厳しい。

撫でし子株式会社・加藤英樹代表取締役:
訪問介護事業がなくなってしまう。言葉を換えると崩壊。

人手不足と他事業者の廃業で仕事量が増加の一途

一方、周囲の訪問介護業者が閉鎖していく中、他の業種との賃金格差で人手不足も加速しているために仕事量は増加しているという。

男性介護スタッフ:
加須でやっていたところ(仕事)がなくなって(廃業して)鴻巣のうちのところに(仕事の)お願いがくる。

団塊の世代全てが75歳以上の後期高齢者になる「2025年問題」は待ったなし。

外国人介護人材の導入も進んでいるが、東洋大学・高野龍昭教授は「日本の高齢者固有の生活習慣とか、理解できていないといけない。そのため(外国人の)導入が遅れている側面がある。“介護崩壊”が起きてしまうと、ニーズが全て医療機関の方に高齢者介護が吸収される。医療機関の方でも手が負えなくなってしまう」と指摘する。

危機に瀕(ひん)している介護業界に、支援の強化など寄り添った施策が求められている。
(「イット!」 1月21日放送)

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