1月19日、新潟県上越市で釣りをしていたプレジャーボートが浸水する海難事故があった。この事故で、新たな映像通報システム『Live118』が活用され、乗船していた5人全員が救助された。全国で初めて実用されたLive118。第九管区海上保安本部の運用司令センター所長がその有効性について語った。
沖合でプレジャーボートが浸水する海難事故
1月19日午前9時前、第九管区海上保安本部の運用司令センターに1本の通報が入った。

「プレジャーボートの機関室に浸水が発生したので、救助してほしい」
上越市有間川漁港の沖合で釣りをしていたプレジャーボートからの通報だ。プレジャーボートには30代~50代の男女5人が乗船していた。
天気は晴れているものの、真冬の日本海…気温は3℃で海水温は約12℃。海保によると、冬の海の最低海水温度は10℃以下となる場合もあり、この時期に海中転落した場合、低体温症となるリスクが大幅に上昇するという。
海水温5℃~10℃では、意識不明に至る時間は30~60分、予想生存時間は1~3時間。10℃~15℃の場合、意識不明に至る時間は1~2時間、予想生存時間は1~6時間と推定されている。
スマホで撮影した景色から位置を把握!
救助に向けて一刻の猶予も許されない中、ここで活用されたのが映像通報システム『Live118』だ。

第九管区海上保安本部警備救難部救難課の江口英雄運用司令センター所長は、「今までであれば『あなたはどこにいますか』『何か見えますか』と聞いたり、緯度経度を聞いたりして位置を特定していた」と話す。
Live118は、通報者のスマートフォンで海上保安庁とビデオ通話できる通報システムで、事故発生前日の1月18日から運用が始まったばかりだった。
江口運用司令センター所長は「有間川を出たと、電話ではそこまでしか分からなかったが、景色を映してもらい、海上保安官の感覚で『これは有間川の北側約2~3マイルの所にいる』と把握できた」と話す。
浸水量や波の様子…現場の状況判断にも効果的
映像で確認できることの効果は場所の把握以外にもあった。

「浸水の度合いはどうなのか、排水できるのか、そういうふうな危険度もはかれて有益だった」
素人では判断が分かれる浸水量や波の様子なども、海上保安官の目で確認ができるため、現場の状況判断に効果的だったという。
5人は通報から約1時間後には上越海上保安署の巡視艇によって救助され、全員ケガはなかった。
Live118が実用されたのは、この事案が全国で初めてのことだった。

江口運用司令センター所長は「指示通りボタンを押していただければ簡単に使用できる。難しいものではないので、落ち着いて係員の指示に従って操作してもらえれば」と話し、今後もLive118の周知や活用に努めていく考えだ。
(NST新潟総合テレビ)