2024年12月、韓国の空港で旅客機事故が発生、179人が死亡した。事故の原因について、航空機と鳥が衝突する「バードストライク」の可能性が指摘されている。
「バードストライク」は国内でもしばしば発生しているが、島根県の出雲空港は国内の空港では最も発生率が最も高い。
重大な事故やトラブルにつながる恐れもある「バードストライク」。
その対策に、各地の空港では知恵を絞っている。
179人死亡…韓国旅客機事故の原因は「バードストライク」か
2024年12月29日に韓国で起きた旅客機の事故。乗客・乗員181人が乗った韓国・チェジュ航空の旅客機が胴体着陸し、炎上。179人が死亡した。
この原因の1つとして指摘されているのが「バードストライク」。鳥が航空機と衝突したり、エンジンに吸い込まれたりすることで生じるトラブルだ。
国内の空港でも年間1500件 発生率ワーストは「出雲」
国交省によると、2023年、国内の空港で年間約1500件の「バードストライク」が発生。

このうち、出雲空港は離着陸1万回あたり18件と、全国の空港の中で最も高い発生率となっている。

その理由について、島根県出雲空港管理事務所の真弓浩史管理係長は、「宍道(しんじ)湖近くの2つの川に挟まれた、鳥が生息しやすい環境に空港があるのが原因の1つではないか」と指摘する。
空港が接する宍道湖は、ラムサール条約湿地にも登録されている野鳥の楽園だ。マガンやコハクチョウなど、冬場には多くの渡り鳥が飛来する。特に2023年は、シベリア東部を生息地にする「トモエガモ」が大量に飛来。

宍道湖では以前から確認されていたが、島根県の調査によると、2023年に確認された個体数は5万8000羽と前年の14.5倍に急増した。2024年の調査でも約4万5000羽が確認され、「バードストライク」の発生と無縁ではなさそうだ。
対策はパトロールと音で威嚇
この対策として、空港管理事務所が2013年から実施しているのが、「バートパトロール」と「バードスイープ」だ。

離発着のない時間帯に滑走路を車でパトロールするほか、煙火や空砲を使って威嚇し、鳥を追い払っている。
今のところ、「バードストライク」が急増した原因は特定できていないが、空港管理事務所は現状の対策を続けながら、今後、関係機関と情報共有を進め、季節や鳥の種類に応じた新たな対策も検討するということだ。
鳥取空港では鳥を「寄せ付けない」新対策
一方、同じように「鳥対策」で頭を悩ませている鳥取空港では、2024年5月、最新のテクノロジーを導入した。
高周波を使って鳥などの動物を寄せ付けない「バードソニック」という装置だ。

開発に協力している岡山理科大学の辻維周特担教授が「音のバリアを作って、鳥を寄せ付けないという形」と説明するように、鳥が嫌う高い周波数の音をスピーカーから出して、滑走路周辺に音のバリアを張り、鳥の侵入を防ぐ。
パトロールとバードソニックを併用
鳥取空港周辺には、鳥類の生息に適した池や森などが点在するほか、日本海に面し、渡り鳥の飛来ルートにもあたり、長年、「バードストライク」に悩まされてきた。

そこで、国内の空港に導入され効果が認められていた「バードソニック」に着目し、約100万円をかけ、空港周辺に3台設置した。

鳥の種類ごとに効果が高い周波数を割り出し、調整することで、鳥の種類に関わらず滑走路への侵入を防ぐことが可能で、鳥取空港では、パトロールや空砲など従来の対策とあわせて使っている。
徐々に効果「限りなく100%」目指し改良へ
鳥取空港ビルの吹野英明空港管理部長は、「効果が徐々に見えてきているので、今後も安全面に配慮した空港として管理運営していきたい」と話し、多い時には年間20件以上発生していたバードストライクが、導入後は年間10件程度のペースに抑えられていると説明した。

岡山理科大学の辻特担教授は「限りなく100%、忌避できるようにしていかなければいけない。アップデートを繰り返していかなければいけない」と、これまでの成果を検証しながら、さらに効果を高めるよう改良を加えたいとしている。

「バードソニック」は、これまでに全国8か所の空港に導入され、山陰では島根・益田市の石見空港にも設置されている。
航空機の運航予定に影響が出るだけでなく、重大事故にもつながりかねない「バードストライク」。「空の安全」を守るため、各地の空港で知恵を絞っている。
(TSKさんいん中央テレビ)