1月16日からガソリンなどに対する燃油高対策の国の補助金が縮小される。15日に発表された長崎のレギュラーガソリンの小売価格は、1リットルあたり185.3円。国の補助が縮小すると、長崎では今後190円を超えることが予想される。農業用ハウスの暖房に重油などを使っている農家は燃油高騰が経営を圧迫していて、栽培が続けられないと訴えている。 

ガソリン代で長崎は全国8番目の高値

石油情報センターによると、15日に発表された長崎県内のレギュラーガソリンの小売価格は1リットルあたり185.3円で、前の週に比べて0.9円値下がりした。

長崎は全国8番目の高値
長崎は全国8番目の高値
この記事の画像(8枚)

全国平均の180.7円を4.6円上回り、長野、高知、鹿児島などに続き全国8番目の高値。政府はガソリンの補助を段階的に縮小していて、16日以降は1リットル当たり5円ほど上がる見込み。長崎も例外ではなく、今後は190円を超えることが予想されていて、家計への影響は避けられない見通しだ。

イチゴ農家の悲鳴「燃料代は2倍」

燃油高騰は農家にも大打撃だ。長崎市内でイチゴを栽培している山川哲治さんは「普段、燃料を多く使ってハウス内の環境を整えているが、経費がかさむ部分につながっている」と話す。

徹底した温度管理で栽培されるイチゴ
徹底した温度管理で栽培されるイチゴ

イチゴ栽培には農業用ハウスで暖房を使った徹底した温度管理が必要だが、重油や灯油などの燃料価格は上がり続けている。イチゴの生育には重油を使った加温機を使用している。イチゴは3度以下になると花が死んだり、株の成長が止まるといわれていて、日中は4~5度くらいを保ち、夜はそれ以下にならないように設定されている。

暖房を使った徹底した温度管理が欠かせない
暖房を使った徹底した温度管理が欠かせない

燃料代は数年前から大きく変化していて、だいたい年間で30~40万円だったのが、今では倍近くの70~80万円だ。イチゴ農家では燃料費を抑える対策として、重油を使う加温機だけでなく、電気を使う農業用エアコンをうまく使っている。重油より電気のほうが価格が安定していて、コストを抑えることができるという。ただ、エアコンだけでは細かな調節がきかず、加温機はどうしても必要なのだ。

「コストと生育管理のバランスが難しい」と話す山川さん
「コストと生育管理のバランスが難しい」と話す山川さん

山川さんは「燃料の価格が上振れてしまうと、どうしても燃料の使用を制限したり、それで株の生育が若干弱くなる懸念もある。バランスをとるのはすごく難しい」 と頭を悩ませている。

キク1本の値段<重油1リットルの値段

イチゴ農家以上に深刻なのが、キク農家だ。長崎市内でキクを栽培している若杉信一さんは「キク1本の値段よりも重油1リットルの値段が高い状況になってきていて、かなりきつい状況だ」と話し、深刻さは増している。

キクは他の花より温度を高く保つ必要がある
キクは他の花より温度を高く保つ必要がある

キクは農業用ハウスの気温を他の花や農作物より高い16度以上に保たなければいけない。燃料費の高騰は経営を大きく圧迫しているのだ。重油の価格は市場で決まるため、生産者が自由に設定できない。キクの単価は昔と比べて上がっていない。

燃料費が高騰すれば利益が出ない
燃料費が高騰すれば利益が出ない

キク1本を100円とすると、そのうち燃料費は50~60円ほどかかっている計算になるという。燃料費が高騰すれば利益が減り「このままだと冬のキクの栽培ができなくなるのではないか」と不安は募る。実際、キク農家は全国的に減ってきていて、若杉さんは「今ある助成や補助は継続してもらいたいし、それでも限界はあるので、キクの単価を上げてほしい」と訴える。「高齢化も相まって、このままだと10年後にはキク農家はいなくなるのではないか」と業界の将来を危惧している。

農家の懸案事項が増える一方

ハウス栽培に欠かせないビニールも「石油」を使用しているため価格が高騰していて、ハウス農家の打撃をさらに大きくしている。夏の高気温にダメージを受ける作物もあれば、イノシシなど獣害にあう作物もあり、農家が対策を講じないといけないことが増えすぎていると嘆く。

補助金が縮小される一方、燃料費の高止まりが続いていることに不安を覚える人は多く、生産者はさらなる対策を求めている。

(テレビ長崎)

テレビ長崎
テレビ長崎

長崎の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。