2025年1月13日午後9時19分。宮崎県で発生した最大震度5弱の地震。福岡の久留米でも震度4を観測した。専門家によると大地震が起きた場合、福岡は特にリスクが高い状況にあると指摘する。そのワケとは?
懸念される南海トラフ巨大地震
今回、発生した地震は、宮崎県日向灘が震源。マグニチュードは6.6だった。宮崎市などで最大震度5弱の揺れを観測し、駅の窓口のガラスが割れたほか、水道管が破裂し道路に水があふれる被害も出た。さらに落石が道路をふさぎ、通行止めとなった所もあった。

福岡県内では、久留米市で最大震度4を観測。九州新幹線では、大きな混乱は見られなかったものの上下線で一時、遅れが出るなどした。

今回の地震で懸念されたのが、西日本一帯で約32万人の死者が想定されている『南海トラフ巨大地震』だ。気象庁は、関連を調査した結果「巨大地震が起きる可能性が高まっていると考えられない」としているが、発生後1週間は同程度の地震が発生する恐れもあるとしている。

「自分の命、大切な家族の方の命を守るためにも、この機会に日頃の備えについて改めてご確認いただきたい」。地震から一夜明け、福岡県の服部誠太郎知事も「地震はいつ起きてもおかしくない」と呼びかけた。

大きな地震が起きるリスクは福岡にもある。
都市直下を走る「警固断層」
2005年3月に発生した「福岡県西方沖地震」。最大震度6弱を観測し133棟の家屋が全壊。死者1人、負傷者1087人。福岡市を中心に大きな被害が出た。この西方沖地震の震源域となったのが「警固断層帯」だ。

20年前に揺れたのは玄界灘に位置する「北西部」。165万人が暮らす福岡市中心部の真下を走っている「南東部」では、まだ地震は起きていない。2023年に福岡県がまとめた防災計画によると、今後、警固断層による地震が発生した場合、福岡市内の多くで震度6強の揺れを観測し、死者が1千人以上にのぼると想定されている。

政府の特別機関は、今後30年以内に地震が起きる確率について警固断層を最も高い「Sランク」と位置づけているのだ。

福岡大学工学部の高山峯夫教授は「多くの人が『今後30年に震度6強の地震が起こる可能性が数パーセント』と言われてもピンと来ないと思うが…、ゼロではない、いつかは起こる地震なので、それがいつ来るかは分からないが、そういったものに対する備えが必要」と指摘する。
福岡の建物の耐震性「リスク高い」
「大きな地震」への備えとして懸念されるのが、建物の耐震性。その耐震性について「福岡は特にリスクが高い状況にある」と高山教授は話す。「耐震基準のなかで、例えば東京を『1』とすると熊本は『0.9』という基準が設けられていて、福岡は実は『0.8』なんです」。
高山教授が指摘するのは『地震地域係数』と呼ばれる数値だ。

地震地域係数とは、国が地震の発生頻度や被害の程度などを基に耐震基準を0.7~1.0までの間で地域ごとに定めている数値で、東京や大阪などが『1』に対して福岡は『0.8』と低く設定されている。この『0.8』という数字について、高山教授は「同じ建物を東京と福岡で建てた場合には、建築基準に従って建てて下さいと言えば、東京よりは少し弱い、耐震性が弱い建物が建てられるのが福岡ということになる」と話す。

1980年以来1度も改定されていないという地震地域係数。2016年の熊本地震や記憶に新しい能登半島地震も、いずれも係数が『0.9』の地域で地震が発生していることなどから、国は2024年にようやく見直しの検討を始めた。こうした背景から、この機会に住宅の耐震基準などを改めて確認してほしいと高山教授は呼びかけている。

「耐震性の低い、古い住宅にお住まいの方は、耐震化の検討が必要。建物だけではなく、家具とかあるいは天井とか、それが地震の時どうなるか、あるいは対策はちゃんとできているかを確認していく必要があると思う」。

街に溢れる多くの帰宅困難者
そして警固断層で、震度6強以上の地震が起きた場合に大混乱となりそうなのが帰宅困難者だ。福岡市によると市内では約19万人の帰宅困難者が出る恐れがあるとしている。このうち天神地区と博多駅の周辺では最大3万8千人が職場にも滞在できず、行き場がなくなる恐れがあるのだ。
地震が起きるたびに「福岡での大地震に備える意識」を持つ必要がある。
(テレビ西日本)