熊本地震発生から10年。被災地では、家や家族を失ったイヌやネコなど、ペットを巡る課題が浮き彫りになった。特に避難所に連れていけないペットの扱いに困った飼い主は多く、こうした課題を解決しようと新たな『防災用ペットシェルター』の製作・導入に取り組む人達を取材した。
飼い主の元に戻れたペット411匹
2026年4月に発生した熊本地震では、国内の観測史上初めてとなる2度の『震度7』を記録し、断水や停電が発生。被災者の長い避難生活が始まった。

日常が奪われ、不安な日々を過ごしたのは、人間だけでなくペット達も同じだ。

環境省によると、地震発生後、熊本県と熊本市が保護・収容したイヌやネコは合わせて2499匹。そのうち飼い主の元に戻れたのは、わずか411匹に留まった。

地震発生後の熊本市動物愛護センターでは、職員達が街で迷子になっている犬や警察に届けられた犬、更には、『ウロウロしているので早く捕まえて』という市民からの苦情に応えるため、土・日返上で対応したという。

当時は、避難所でのペットの受け入れ方針が定まっていない自治体も多く、動物病院への避難のほか、車中泊やテント生活を選ぶ人も多く見られた。

大事な家族の一員であるペットを災害からどう守るか。震災から10年、福岡県内で新たな取り組みが進んでいる。

北九州市のNPO法人『ALL OK』代表の佐藤直美さん。動物愛護や子育て支援に取り組む中で、熊本地震の被災者の声を聞いたことをきっかけに、ペット防災の啓発を始めた。

これまでに、同行避難訓練やセミナーの開催、地元企業と連携したペット用防災リュックの開発など活動を広げてきた。

そんな佐藤さんが今、力を入れているのが避難所に設置するペットシェルターの開発だ。

「難所の中に人とペットが一緒に入れる所が少なくて。ペットだけを置いて、人間は別の場所にと、どうしてもせざるを得なくなった時にケージを並べて…中でペットが安全に避難できるように」と佐藤さんは語る。

現在、北九州市の避難所502カ所のうちペットと避難できるのは448カ所と9割にのぼる。しかし、ペット用のスペースは、屋外に設けられるなど、十分とはいえないケースもある。

「いざという時に鳴いちゃったりとか、中に入らないとか、ぐずられると飼い主にもペットにもストレスが掛かるので…」と飼い主は愛犬と一緒に避難する難しさを実感している。

平常時も使える『ペット防災拠点』
様々な人が集まる避難所。ペットや飼い主はもちろん、全ての被災者が安心して過ごせるようにと開発されたのが、『防災用ペットシェルター』だ。
骨組みを製作したのは、地元、北九州市の老舗メーカー、『九州鉄道機器製造』。

鉄道用レールの加工やトンネル部材の製造で培った技術を使い、究極の強度と耐久性を実現している。

「掘削した地盤を支えるトンネル用の『支保工』という部材の鉄を曲げる技術を使っています」と話す『九州鉄道機器製造』の鎌田厚志さん。余震にも耐えられる強度を確保しているとう。

これに加えて、宮崎の『南榮工業』が、遮熱性の高い専用のビニールシートを開発していて、現在、進められている実証実験の中で、耐久力や室内温度の変化、風対策のほか、小型犬と大型犬の棲み分けなどを確認し、2026年中には、商品化したいとしている。

更に、この『防災用ペットシェルター』は、災害時だけでなく、平常時には駐輪場として利用できるのが特徴だ。NPO法人『ALL OK』代表の佐藤直美さんは、「ペット防災の象徴として、日頃から使えるもので、『いざという時は』という風に啓発の拠点になるように広がっていけば」と期待を寄せている。

地震や大規模災害で避難生活を余儀なくされる際、他人に迷惑をかけることなく家族の一員であるペットと一緒に生活を続けていく。開発された『ペットシェルター』は、今後、避難訓練などで活用しながら、実証が進められる予定だ。
(テレビ西日本)
