4年にわたる大工事を経てようやく完成形が見えてきた広島電鉄の新ルート。大きく変貌を遂げるJR広島駅の駅ビル2階へ路面電車が乗り入れる国内でも珍しい試みが注目されている。その工事の核心部とも言える「乗り入れホーム」の撮影が特別に許された。

地上から2階へ高度を上げる新ルート

「ええ~!すごい!上り下り各1線で来た路面電車の線路が4本に…。広々としています。唯一無二の空間ですね。ここを電車がグワ〜っと進んでいく。素晴らしいですね」

地上から2階へ徐々に高度を上げる「駅前大橋ルート」
地上から2階へ徐々に高度を上げる「駅前大橋ルート」
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工事中のホーム構内を見て大感激の野川諭生キャスター。路面電車がホームに入る姿を想像し、全貌が見えてきた新ルートに胸を躍らせる。
2025年夏に開業予定の広島電鉄「駅前大橋ルート」は地上から徐々に高度を上げていき、駅前大橋を渡り、大州通りをまたぐようにして広島駅ビルの2階へとつながった。ここに至るまでの道のりは“広電史上最も難しい”とされる難関工事の連続だった。

2023年12月、路面電車が駅ビル2階へ乗り入れるために通る高架の橋脚8本すべてが完成。

2024年2月、広島電鉄では初となるドイツ製の特殊な「溝形レール」を設置し、溶接も普段と違った工法で行われた。

地域住民から贈られた「無事故1000日達成記念」
地域住民から贈られた「無事故1000日達成記念」

4月には着工から1000日無事故を達成し、地域住民らが表彰。
「この通り自体に地域の夢を託していますので」
住民の期待は、いつしか大きな希望へと変わっていった。

ついに「巨大橋桁」と駅ビルが接続

駅前の景色が一変したのは6月。多くのファンが駆けつけた目の前で、長さ約43メートル、重さ約250トンある「巨大な橋桁」が大州通り上にかかったのだ。

広島駅前の大洲通りをまたぐようにかかった巨大な橋桁
広島駅前の大洲通りをまたぐようにかかった巨大な橋桁

8月、交通への影響を抑えるため限られたスペースで進めた駅前大橋の橋桁設置が完了。
「発展が楽しみです」
現場を見学した子どもたちも胸を熱くした。

秋には、巨大な橋桁と駅ビル2階をつなぐ新たな橋の工事が本格化。現在の路面電車乗降場の真上に橋をかけるため、西側で半分組んだものを東側にスライドさせるなど大きく2分割して架設作業が進められた。

12月2日、駅ビル2階と橋が完全につながった
12月2日、駅ビル2階と橋が完全につながった

そして12月2日の深夜、体を曲げて狭いエリアで奮闘する作業員たち。ジャッキで支えながら仮で受けていた支柱を一つ一つ外し、ゆっくりと橋を下ろしていく。90センチ降下して、ついに駅ビルと橋が完全につながった。現在の乗降場とのすき間はごくわずか。非常に難易度の高い作業だったことがわかる。

線路の地下に重量をかけない工夫

さらに注目したのは、大州通りと駅前大橋の間にそびえ立つ高い擁壁だ。

車道のすぐ横にそびえ立つ高い擁壁
車道のすぐ横にそびえ立つ高い擁壁

擁壁の中に、クレーンが白い長方形のブロックをひとまとめに吊り上げて運び入れていく。それを男性の作業員が一人で軽々と抱え上げた。

大きな発泡スチロールブロックを運ぶ作業員
大きな発泡スチロールブロックを運ぶ作業員

実はこの白いブロックは発泡スチロール。土砂やコンクリートの約100分の1程度の重さなのに、圧力に耐える力(耐圧縮)や耐水性にも優れているという。この軽くて強い発泡スチロールブロックが隙間なくビッシリと敷き詰められていく。

これまで道路工事で使われてきたが、営業する線路での使用は日本初。地下広場や駅ビルに不要な重量をかけないために採用された。

乗り入れホームの工事現場に潜入!

ホーム部の本格的な工事もスタート。路面電車の営業終了後、様々な資材がクレーンで吊り上げられ慎重に運び込まれる。

電気の線を収容する箱をホーム部に設置
電気の線を収容する箱をホーム部に設置

路面電車に電力供給する架線を支える柱、電車から流れ落ちた雨水などを排水する側溝、電気の線を収容するための箱の設置など次々と工事が進められていった。

一方、施工図の情報を記した位置にズレがないか確認するのは社会人2年目の広電広島駅JV・桐山遥奈さん。広島大学工学部を卒業後、東京に配属され、2年目で広島駅の工事に携わるようになったという。ホーム部の施工管理を担当する桐山さんに野川キャスターが話を聞いた。

ーーどんな思いで仕事に取り組んでいますか?
「地域の方からすごく注目されていて、長く残っていくものだと思います。このような大きな現場に関わることができて大変うれしいです」

ーー2024年の工事を振り返り、何を感じますか?
「私自身はこちらの事務所に来てまだ3カ月ほどですが、現場としてはすでに着工から4年が経っており、2024年は3カ所の高架橋の架設やコンクリート擁壁の打設、各停留所の整備などを行ない、新ルートの完成形が見えてきたのかなと思います」

ーー開通までラストスパートの時期に入りますが最大の山場は?
「今後は橋梁部でのレールの敷設や架線柱の建て方などを順次行っていく予定です。そのための基礎工事がまだ手つかずの箇所もありますが、2025年の夏に無事開業できるように、一つ一つの作業を確実に進めていきたいと思います」

工事が本格化する広島駅ビル2階の乗り入れホーム
工事が本格化する広島駅ビル2階の乗り入れホーム

路面電車が乗り入れる広いホーム部はまだ鉄筋がむき出しの状態。今後、コンクリートが入り、その上にレールが敷かれていく。JR・広島市・広島電鉄の3者が連携し、工事関係者と地域が一丸となった新たな時代が切り開かれようとしている。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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