2025年度、経済の需要と供給の差を示すGDPギャップが7年ぶりに0.4%のプラスとなり、需要不足から供給制約の局面への移行が見込まれている。専門家は、賃金上昇率が物価上昇率を上回る中、個人消費の拡大が期待されるものの、富の偏在が課題と指摘。不満や不安を感じる人を減らす政策の立案と実行が求められるとした。
GDPギャップ7年ぶりプラス…供給制約へ
日本経済の需要と供給の差を示すGDPギャップが、7年ぶりにプラスとなる試算だ。

政府は26日午前、経済財政諮問会議を開き、経済の需要と供給の差を示すGDPギャップが2025年度に0.4%となり、2018年度以来7年ぶりにプラスとなる試算を公表した。

人手不足により労働需給がひっ迫しているためで、日本経済は需要不足の局面から供給制約の局面に入る見込みとみている。

また2025年度の名目賃金は、2024年度と同じ2.8%の上昇とする一方、消費者物価は2.0%の上昇に留まるとの見通しを示した。
政府は賃金上昇率が物価上昇率を上回り、2025年度はそれが定着するとみて、個人消費も徐々に増加するとしている。
個人消費の後ろ盾となる政策が必須
「Live News α」では、経済アナリストの馬渕磨理子さんに話を聞いた。
堤礼実キャスター:
景気を見通すGDPギャップがプラスになると示されました。馬渕さんは、どうご覧になりますか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
需要と供給の差である「GDPギャップ」が少々プラスになったとしても、賃金は上がらないし、物価高も続くかもしれない…という不安から節約志向は根強いですよね。
凍り付いた個人消費を温め、お金が動き出すには相当のエネルギーが必要です。
堤キャスター:
個人消費を動かすには、どういったアプローチがあるのでしょうか。
経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
そもそも、日本全体でお金がない訳ではありません。企業の経常利益は全体で100兆円を超え、アベノミクス以降3倍に拡大しています。
国に入る税収も過去最高を更新していて、2024年度は76~77兆円ほどになる見通しです。問題なのは富が偏在しているため、個人が恩恵を感じづらい状況にあることです。
富が広く行き渡る政策の一つが103万円の壁の引き上げです。これが進むと個人消費の後押しになると思います。
2025年は不安・不満が解消される政策の実行を
堤キャスター:
景気の回復では、国が果たす役割は大きいですよね。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
そうですね。重要なのはパイの取り合いではなく、パイを拡大させる経済成長です。ここではやはり国のアシストが欠かせません。
資本主義は成熟して人口も減少していく日本で、経済成長を描くことは容易なことではありません。ですが、それを考えるのが「政策」であり、それを実行するのが「政治」だと思います。
企業がより稼げるようになれば、国に入る法人税は増えますし、働く人の給与にも還元されます。
堤キャスター:
具体的には、どんな政策の実行が求められるのでしょうか。
経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
日本の軸である自動車と半導体については、政府の手厚いサポートが必要だと思います。さらに、ビジネスで目詰まりの原因となる規制の緩和も進めていくべきだと思います。
満員電車の中で何のために我慢して、何のために生きているのか分からないと、一度は思うこともあると思います。
そうした現状への不満や将来への不安を感じる人が一人でも少なくなること。2025年は、そんな政策の立案と実行を期待したいと思います。
堤キャスター:
景気の回復のためにどんな政策を取るべきなのか、私たちの暮らしの中に答えがあるのかもしれません。
(「Live News α」12月26日放送分より)