独自に民間PCR検査を行う歯科医院

高知市にある「ほそかわ歯科医院」。
新型コロナウイルスのPCR検査を8月から行っている。

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ほそかわ歯科医院・細川雅史院長:
これが滅菌済みの容器。唾液を5cc入れていただく

熱や味覚障害などの症状があり病院を受診すると、医師の判断でPCR検査を受けることになる。これは「行政検査」と呼ばれ、費用の自己負担はない。

一方、ほそかわ歯科で行っているのは「民間検査」
自由診療のため保険が適用されず、3万3,000円かかる。

歯科医院でのPCR検査は、どのように行われているのか。

防護服に着替えた細川院長が外に出てきた。
検体の採取はドライブスルー方式。
診療時間外に行うため、1日2件が限界。

ほそかわ歯科・細川雅史院長:
一番下の線まで唾液をお願いします

必要な唾液の量は5cc。
採取するのに1分ほどかかった。

唾液が出にくい人のために、酸っぱいものの写真も用意されている。

採取した唾液を検査会社に送るための箱。
行政検査は県の衛生環境研究所などで行われるが、ほそかわ歯科の検査は、東京の民間検査会社で行う。
航空便で東京に送られ、早ければ2日後に結果がわかる。

ところで、なぜ歯科医がPCR検査を行うことになったのか?

ほそかわ歯科・細川雅史院長:
ことの始まりというのが、子どもが今 東京と福岡におるんです

2020年4月、息子が福岡の大学に入学。
初めての一人暮らしがいきなりの休校となり、家に閉じこもる毎日に。
心配を募らせた細川院長は、高知に帰したいと思う一方、息子が帰ってくることで感染を拡大させてはいけないという責任感もあった。

ほそかわ歯科・細川雅史院長:
自分の子どもが感染拡大地域にいて、そこから帰ってくるにあたって、何か安心を担保するものがないと帰せないと。同じように考えてる方も多分、いらっしゃるんだろうなと

歯科医として扱い慣れている唾液が検体ということもあり、保健所の指導のもと、PCR検査を開始。
仕事先から陰性証明を求められたイベント関係者など、希望者が相次いでいる。

「故郷の母が施設に…」検査希望者の“切実な思い”

高知を離れて東京に暮らす男性からは、こんな相談の電話があったという。

相談の電話:
高齢の母を高知に残して東京で働いています。
感染を防ぐために帰省を控えてきたが、母が施設に入ることになりました。
どうしても高知に戻って世話をしないといけないんです。

ほそかわ歯科・細川雅史院長:
とにかく(高知に)帰って検査を受けて、3日間くらいはおとなしくしてよう。具体的には聞いてないですけど、おそらく電話の内容では、車の中で寝泊まりするんじゃないかなという、すごく責任感の強い方でした

ほそかわ歯科では8月、14件の問い合わせがあったが、そのうち8件は検査を断った。
検査は治療目的ではないため、熱などの症状があった場合、検査できない。
事前に電話やメールで症状がないことを確認し、検査を受ける前には「体調の異変はありません」という承諾書を書いてもらう。

ほそかわ歯科・細川雅史院長:
症状があった方は、全てお断りしています。(治療目的ではない)私たちのPCR検査をすると、混乱してしまう

数日前に送った高知市の男性の検査結果が、FAXで届いた。
早速、本人に知らせる。

ほそかわ歯科・細川雅史院長:
結果が出ました、陰性ということです

結果を伝えられたのは、高知市内の飲食店で働く男性。
店に来た客が「味覚に異常がある」と話したため、不安を感じたという。
店でクラスターが発生したら大変なことになる…そんな思いが男性を検査に駆り立てた。

ーー結果を聞いた瞬間どう思った?

男性:
いやぁ、正直すごく心配だったので、ほっとしましたね

検査の結果は、検査会社からほそかわ歯科に届き、細川院長から本人に伝えられる。

ほそかわ歯科・細川雅史院長:
病気に対しての怖さというよりは、社会的な目に対する怖さっていうのがあって。誰かに迷惑をかけてはいけないっていうことの裏返しの安心感を求めて(検査を受けているのでは)

ほそかわ歯科では、これまで6件の検査を行い、5件が陰性、1件が検査待ちとなっている。

(高知さんさんテレビ)