文化庁は11月、2024年度の「地域文化功労者」を発表し、秋田を代表する民謡歌手・小野花子さん(78)が選ばれた。人生のほとんどを民謡に捧げ、全国で歌い続けてきた小野さんの民謡にかける思いに迫る。
2018年には日本民謡協会の最高章も
11月20日、京都市で行われた「地域文化功労者」の表彰式。文化庁が芸術文化の振興や文化財の保護に尽力した個人や団体に贈るもので、2024年度は秋田県内から2人の女性が選ばれた。
この記事の画像(14枚)受賞者の1人は、秋田を代表する民謡歌手・秋田市の小野花子さんだ。小野さんは、受賞の一報に「頑張らなきゃなと思いましたね。民謡を歌ってこんな賞をもらえるなんて、全然思ってもいなかったです」と笑顔を見せた。
「花ちゃん」の愛称で親しまれている小野花子さんは、秋田市生まれの78歳。第1回日本民謡大賞で頂点に輝き、2018年には日本民謡協会の最高章「民謡名人位」となった。
“民謡日本一”へ…思いを実現
輝かしい実績を重ねてきた小野さんが民謡を始めたきっかけは、小学5年生の時だった。
小野さんは「民謡を歌う人たちが村の公民館に来る話があって、近所の人たちと見に行った。民謡を歌ってくれて『上手だな』と思った。童謡と違って、こぶしの深さやうまさを感じた。『こういうふうに歌うんだな』と、それから民謡に興味を持った」と当時を振り返る。
中学を卒業後、小野さんは公民館に来ていた秋田民謡の大家・成田与治郎の内弟子となり、17歳で秋田市にあった民謡酒場のステージに立つようになった。
「民謡酒場の客はいつも満員だった。なかなかうまく歌えなくて『なんだそんな歌を歌って』と笑われた。それが修行なんです」と語る小野さん。ステージに立って、社会の厳しさを知った。
悔しさと民謡日本一への強い思いを秘めてステージに立ち続け、歌声に磨きをかけた。そして、23歳の時に日本民謡協会の全国大会で優勝。31歳の時に、第1回日本民謡大賞で日本一の座を手にした。
「地元の歌を大事に歌っていきたい」
いずれの大会でも、歌ったのは大好きな「秋田船方節」だった。「ハァ~の出だしで変わります。出だしがブァーっと出た時は、自分で歌っていて気持ちがいいです」と話す小野さん。一生のうちで一等を取るのは魅力で、民謡日本一を取ったおかげで全国を歩けるようになったという。
北は北海道から南は沖縄まで、全国各地で秋田民謡を歌い続けてきた小野さん。現在はラジオで民謡の魅力を伝えたり、2023年からはコンクールを開いたりして秋田民謡の普及に尽力している。
「自分の力で歩いて舞台に行けるまでは歌いたい。いつまでも民謡が好きだからこそ歌う。地元の歌を大事にして、これからも歌っていきたい」と語る小野さんの民謡人生はまだまだ続く。
(秋田テレビ)